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新規事業のアイデアを生み出し、部下のアイデアを評価し、社内を説得するための方法を徹底的に解説~これであなたも部下から頼られる一人前の新規事業担当者になれる!!

本メディア/noteは下記の悩みを抱えている新規事業担当者向け

① 新規事業のアイデアの出し方が分からない
② 部下からアイデアが出てくるけど、どう評価してよい分からない
③ アイデアを思いつくかどうかはセンスじゃないの?アイデア発想法に定石なんてあるの?
④ アイデアはあるけど社内を説得できない
⑤ 新規事業責任者を任されたけど正直右も左も分からない。拠りどころにする指針がほしい

上記の新規事業に関するお悩みを抱えている方、必見です!

はじめに

昨今、新型コロナウイルスの影響により、既存ビジネスの在り方が根底から覆され、今までは存在しなかった新規ビジネスが次々と生まれている。

「ディスラプト(破壊)」から「リプレイス(代替)」という流れは、新規事業を行う上でとても重要な考え方であり、今回のコロナによるディスラプトが起こっている今こそ、新しくビジネスを始める絶好のチャンスなのだ。

そのような背景から、新規事業に注力する企業は多く、
新しく部署を作り新規事業アイデアについて検討する企業も出てきており、

今までは営業しかやってこなかったが、急遽、新規事業アイデアを考えてほしいと言われ、途方に暮れている方も少なくないだろう

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この記事は、そんな右も左も分からない新規事業担当者の方に是非読んでいただきたい。

1. センスは不要?新規事業のアイデアを思いつく方法とは?

Go-to-market-planを作る

これだけだ。

Go-to-market-planを作成することで、
貴社の新規事業のセンターピン、すなわち、貴社が最初に勝負すべきエントリー市場が明確になるため、競合他社と全面戦争することなく局地戦に持ち込むことで、小さな市場で勝負することができる。

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また、センスやその時の気分、持っている知識などに影響を受けることなく、再現性高く新規事業のアイデアを生み出すことが可能となる

言わずと知れた世界的なリーディングカンパニーであるAmazonの場合、彼らにとってのセンターピンは、マニアックな専門書を取り扱うオンライン書店サービスだ。

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彼らはオンライン書籍サービスを最初に勝負すべき市場と捉え、その小さな市場でPMF(プロフィット・マーケット・フィット)に達した後、横展開することで現在に至っている。

新規事業のアイデアを思いつくためにはセンスが必要だと思っている人もいるかもしれないが、センスは不要だ。

なぜなら、Go-to-market-planを作ることで、市場全体を俯瞰した上で、細かな市場一つ一つに対し虱潰しに事業可能性を検討することができるためだ。

つまり、新規事業のアイデアを生み出すというのは、「思いつくか、思いつかないか」という再現性の低い話ではなく、正しい方法で時間をかけて取り組めば、必ず見つかるものなのだ

この点を良く理解してもらいたい。

以上より、新規事業のアイデアを再現性高く創出するためには、Go-to-market-planの作成が必須となる。

【用語解説】
エントリー市場
・自社の新規事事業・サービスが、最初にターゲットとすべき市場
・ボーリングのピンに例え、「センターピン」ともいう
Product-market-fit
・自社製品が市場のニーズと合致し、熱狂的な顧客を生み出す状態を指す
・ただし、現在の市場ではなく、将来の市場ニーズに合致させることが重要
Go-to-market plan
・エントリー市場を設定するためのフレームワーク


2. Go-to-market-planの作成方法

Go-to-market-planの作成手順は下記の通りだ。

① セグメントの要素分解
② バリューチェーンの要素分解
③ ペインの評価
④ 市場サイズの把握
⑤ 既存代替案の欠点の洗い出し

Go-to-market-plan(完成イメージ)

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具体的な方法についてはこれから解説していくが、なぜGo-to-market-planを作るだけで、新規事業のアイデアが見つかるのだろうか

それは、上記の①②で、「セグメント×バリューチェーン」で市場を細かく分解し、③で細かく分解した各市場でのペインの深さを調査し、④で市場サイズを把握、そして⑤で既存代替案の欠点の洗い出しを行うことで、市場の空き、すなわち、最初に攻めるべき市場が浮き彫りになるからである。

今回、Go-to-market-planの作成方法について理解を深めてもらうために、具体的に「治療院向けのCRM(顧客管理ツール)の販売事業」を考えてみたい。

1) セグメントの要素分解

セグメントの要素分解とは、
対象となるユーザーをMECE(ミーシー)になるよう分解していくこと

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例えば、今回のユーザーである治療院を、「関西にある治療院」と「関東にある治療院」の2つに分けてしまうと、北海道や沖縄にある治療院が漏れてしまうので、MECEに分解できたとは言えない。

分けた要素がMECEになっていることは大前提として、地域で分けるのか、経営年数で分けるのか、従業員の数で分けるのか等、どの軸で分けていくかについては、ビジネスセンスや業界知見が必要になる。


2) バリューチェーンの要素分解

バリューチェーンの要素分解とは、
対象となるユーザーの事業・業務を機能別に分類すること

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今回の場合、治療院が顧客へサービスを提供するまでにどのような業務フローが存在するのかについて細かく分解していくことになる。

既にお分かりだと思うが、
セグメントの要素分解以上に業界知見が必要になるため、業界関係者や実際のユーザーへのインタビューは必須となる。


3) ペインの評価

ペインの評価とは、
各市場におけるペインの深さを調査し、4段階(◎〇△×)で評価

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最終的なゴールは◎となる市場を見つけることなのだが、◎を見つけて大喜びし、他の市場の調査がおろそかになることだけは避けたい。

なぜなら、この表を活用する一番のメリットは、「要素分解された各市場のペインの深さを一つ一つ考え調査する」という機会を機械的に作ることができる点にある。

そのため、必ず全てのマス目に対し精一杯向き合い、ペインの強さを納得いくまで調査してもらいたい。


4) 市場規模の把握

市場規模の把握とは、
各セグメントの将来の市場規模を予測すること

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今から入っていく市場の成長性を定量的に確認し、新規事業としてリスクをとって参入するに値する市場なのかを見極めるために行う。

「起業家は左利き用のハサミを作ってはならない」とよく言われるが、その理由は単純で、左利き用のハサミユーザーは日本の人口の3%といわれており、事業成長のアッパー(上限)が決まってしまっているためだ。

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仮に、左利きの人にとって「左利き用のハサミがない」というペインが大きいものであっても、市場サイズが小さすぎるため、スタートアップが勝負するべき市場ではないという判断になる。

次に、いつの市場規模を見るのかという点だが、重要なのは、現在の市場ではなく、5年後~10年後の市場がどうなっているかを想定することだ。

変化のスピードが激しい現代社会において、仮に現在の市場に合わせたサービスを提供したところで、すぐに時代遅れのサービスになってしまうだろう。

配車アプリUberが2009年設立時にピッチしたときの資料を見てほしい。「Future(将来)」や「Forecasting(予測)」というワードが並んでいるのがお分かりいただけるだろう。

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つまり、彼らは2009年の市場に最適化するサービスではなく、5~10年先の未来に対し最適化するプロダクト、すなわちProduct Future Market Fitを目指していたことが分かる。

以上から、スタートアップは時代に合わせたプロダクトを作るのではなく、未来を見据えたプロダクトを作り、虎視眈々と時代が追い付いてくるのを待つことが重要なのだ。


5) 既存のソリューションの欠点を探す

既存のソリューションの欠点を探すとは、
現段階で不完全ながらもユーザーの抱えるペインの解決に寄与している
既存のソリューションを探し、その問題点を洗い出すこと

成長性の大きい市場で解決すべき強いペインが見つかり、期待に胸を膨らませている皆さんを落胆させるようなことを言うつもりはないが、

2020年のこのご時世、強いペインであればあるほど、既に何らかの既存代替案がある場合が多い。いや、必ずある。

投資家が投資判断をする際、スタートアップに対し必ずする有名な質問がある。

・あなたが解決したい課題の現状の代替案は何か
・現状の代替案と比べ、あなたのプロダクトはどう優れているのか

この質問に対しては、生半可な調査、分析では回答できないが、裏を返せば、これに回答できるほど考えリサーチすればよいのだ。

最もダメな回答は「今のところ、代替案はなさそうです」という回答で、自分のリサーチ不足を露呈しているようなものだ。

もし本当に代替案がないのであれば、そのユーザーのペインは浅いと考えてよい。繰り返しになるが、強いペインであれば必ず既存の代替ソリューションは存在する。

じゃあ、結局、魅力的なエントリー市場なんてないってことなのかというと、そうではない。

私はただ、「既存の代替案はある」と言っているだけで、「非の打ちどころのない素晴らしい代替案が存在する」といってるわけではない

既存の代替案はあっても、それが非常に不便であったり、非常に不完全なソリューションであるにもかかわらず、それが一種の常識となって放置されているようなケースは多々あるのだ。

なので、私たちがやるべきことはただ一つ。
既存の代替案の欠点(不満、不便、不安、非効率)を探すのだ。
そして、欠点をカバーできるサービス・プロダクトを提供すればよい。

【用語解説】
■ MECE(ミーシー)
・Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略
・「漏れなく、ダブりなく」を意味する
■ バリューチェーン
・ユーザーの事業・業務を機能別に分類したもの
・バリューチェーンを考える際には、カスタマージャーニーが参考になる
■ ペイン
・ユーザーの抱えている課題・ニーズ

3. 新規事業のアイデアを評価するポイント

部下から提出された新規事業のアイデアを見て、どう評価してよいのか分からない、どれもよく見えるなどと悩んだ経験はないだろうか。

新規事業のアイデアを評価する際のチェックポイントは下記の通りだ。

① セグメント・バリューチェーンの要素分解は正しいか?ダブり・漏れはないか?
② ペインの評価は正しいのか?ユーザーインタビュー等の一次情報に基づいているか?
③ 市場規模は現在ではなく、将来の市場を考慮しているか?
④ 代替ソリューションの調査は十分か? 等

見てもらうとわかる通り、ちゃんとしたGo-to-market-planを作成できているのかを確認していけばよいということになる。

一方、新規事業の責任者をされている方、すなわち、自分の考えたアイデアを真剣にレビューしてくれる人がいない立場の方は、自分で思いついたアイデアについてもしっかりとGo-to-market-planを作成し評価すべきだ。

失敗する人の多くは、自分のアイデアに対し第三者的な視点を入れて評価することをせず、自分の思いついたアイデアをベースにそのまま突っ走ってしまうのだ。

皆さんにも「今までにない革新的な事業アイデアを思いついてしまった」と鼻息を荒げた経験はないだろうか。

みんな自分のアイデアが可愛くて可愛くて仕方がない。

それ故、自分のアイデアに都合の良い情報ばかり集めてしまい、「ほら、やっぱり俺のアイデアは最高だ」とさらに泥沼にはまっていくのだ。

百歩譲って、あなたの思いついたアイデアが本当に素晴らしい場合もあるかもしれない。だが、それをどうやって周りに説明し納得させ、社内承認までもっていくのか。

「いや、シャワーを浴びている間に思いつきまして・・」が通用するはずがない。なぜそれがベストといえるのかを説明するためにも、俯瞰的な視点で自分のアイデアを評価する必要がある。

多かれ少なかれ、新規事業のアイデアを考える立場の方は、必ず自分のアイデアには一定のバイアスがかかることを頭に入れておくべきであり、そのバイアスを排除するためにも、Go-to-market-planの作成は必須だ。

くれぐれも、自分の思いついたアイデアを過信し、客観的な評価もせずにUI/UXの議論をし始める上司にはならないようにしてほしい。

【用語解説】
■ UI
・ユーザーインターフェースの略
・ユーザーの視覚に触れる全ての情報
■ UX
・ユーザーエクスペリエンスの略
・サービスを利用する一連の行動の中でユーザーが感じた体験
・UIをデザインとした場合、「デザインがきれい」と感じることがUXとなる

4. 新規事業アイデアの社内承認を得るためには

みなさんも一生懸命頭をひねって考えた新規事業のアイデアを上司・役員に反対され、アイデアがボツになった経験はないだろうか。

新しいものを生み出すためには、反対意見がつきものだ。

新規事業のアイデアの社内承認を得るためには、社内に説明し納得してもらうことが必要になるが、何がポイントなのだろうか。

ここまで読み進めていただいた方であれば、もう答えはお分かりだと思うが、方法は簡単だ。

Go-to-market-planの作成手順に沿って順番に説明していけばよい。

どのように市場を要素分解し、ペインの深さ、市場規模、代替ソリューションの欠点を説明することで、

「自社にとって最初に攻めるべき市場は○○で、提供するソリューションは△△です!」と説明すればよい。

裏を返すと、それすら説明できない状態では、あなたの新規事業アイデアが社内で評価されることはないだろう。

ぜひGo-to-market-planを作成し、自分のアイデアを俯瞰的に見る習慣をつけていただきたい。

5. まとめ

①新規事業のアイデア創出、②アイデア評価、③社内承認獲得、の3つにおいて、Go-to-market-planの作成が必須であることがお分かりいただけたかと思う。

ただ、実施に手を動かして作成してみるとわかるが、そう簡単に作成できるものではない。

ユーザーインタビューや業界の専門家に意見を聞く等、デスクトップリサーチに加え、足を使って一次情報を収集する必要があるのだ。

とにもかくにも、この記事でご紹介したフレームワークを実際の新規事業のアイデアを創出・検討する際に活用してみてほしい。

実際に手足を動かしGo To Market Planを作成することで、その後、アイデアを見る視点が変わってくるはずだ。

この記事が新規事業立案に悩む担当者の少しでも役に立てれば幸いである。


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