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アメリカを食べる 4 アップルクリスプApple Crisp

今はリンゴがおいしい季節。酸味の強いもの、甘味の強いもの、サックとした食感のもの、パリっとした食感のもの、一口にリンゴといってもいろいろあって好みも人によって違います。丸ごとガブッといってもよし、皮をむいて縦にスライス、芯を取って小さなフォークで食べるのもまたよし。
 生で食べてもとてもおいしいリンゴですが、スイーツにしてもこれまた最高においしいのがリンゴの魅力です。焼きリンゴなら簡単で失敗も少ないですかね。ジャムもいいかもしれません。でもケーキとかパイとかとなるとちょっと二の足を踏んでしまいます。スポンジやパイの生地を作るのも面倒だし、うまく焼けるかどうかも不安です。でも心配なく。ケーキやパイほど面倒くさくなく、おいしさはケーキやパイに負けないスイーツがあるんです。
 

 アップルクリスプと呼ばれるアメリカのデザートがそのひとつです。いろいろあるリンゴを使ったデザートの中でもアップルクリスプは比較的新しく、1924年に出版されたEverybody's cook book; a comprehensive manual of home cookery, Isabel Ely Lord [Harcout Brace and Company: New York]に初めて登場します。レシピを見るとスライスしたリンゴ:2カップ、小麦粉:4分の3カップ、シナモン:小さじ1、ショートニング:2分の1カップ、水:2分の1カップ、砂糖:1カップと書いてあります。いまでもたくさんの砂糖を使うレシピをよく見かけますが、リンゴの半量というのは相当多いといえます。バターではなくショートニングが使われている点も違います。アップルクリスプはとてもシンプルなデザートですが、このレシピはさらにシンプルといえます。現在のレシピではロールドオーツ(押麦)が加わるのが普通ですが、このレシピには使われていません。アップルクリスプというよりもアップルクランブルに近い感じです。
 

アップルクリスプがページの中央にあります。
Everybody's cook book; a comprehensive manual of home cookery, Isabel Ely Lord [Harcout Brace and Company: New York]より。
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=coo.31924003586777&view=1up&seq=263&q1=apple%20crispからダウンロードしました。
このアップルケーキの上を覆っているのがシュトロイゼルです。

 アップルクランブル?はい、実はアップルクリスプにそっくりなデザートがいくつかあるんです。代表的なのがこのアップルクランブル、もうひとつがアップルコブラ―でしょうか。ほかにもアップルベティ、アップルバックル、アップルグランツ、アップルスランプス、アップルパンダウディなどあまり聞いたことがないデザートがいくつもあります。私にもその違いがよく分からないというか、違いを調べたこともないし、名前すら知らなかったものがほとんどです。でもクリスプ、クランブル、コブラ―の違いくらいは知っておいて損はないですね。
 まずは共通点。この3つデザートは食べやすい大きさに切ったリンゴとその上にかける、上を覆うシュトロイゼル/ストルスル(英語)という小麦粉、バター、砂糖などでできたトッピングで構成されています。シュトロイゼルはケーキやマフィンの上にのったぽろぽろしたトッピングのことです。また温かいままホイップクリームやアイスクリームといっしょに出されることも共通しています。
 この3つのデザートの違いはトッピングにあります。クリスプは共通の小麦粉、バター、砂糖のほかにロールドオーツが加わります。ナッツが入ることもよくあります。ロールドオーツのおかげでトッピングにはパリパリ感、カリカリ感があります。クランブルにはロールドオーツは入りません。ナッツもなしです。つまりベーシックな3つの材料だけで普通出来ています。どちらかというとサクッとした感じになります。コブラ―は他の2つとちょっと違います。コブラ―のトッピングはビスケットみたいな生地でできています。ビスケットといってもクッキーみたいなビスケットではなく、アメリカのスコーンのようなビスケットです。ちょっとゆるめのビスケットの生地をスプーンなどですくってリンゴの上にポンポンとのせていく感じです。リンゴを隙間なく生地で覆うことよりも隙間を開けてリンゴが見えるようにするのが一般的なようです。クランブルはイギリスが起源、コブラ―はイギリスから新大陸にやってきて植民地を開いた人たちが作ったのが起源のようです。ちなみにイギリスではクリスプもクランブルも同じで区別がないみたいなので紛らわしいですね。
 


前置きが長くなってしまいましたが、いよいよレシピです。
 
材料
4人分
フィリング
リンゴ:3個(1~1.5㎝のサイコロ)/レモン汁:大さじ1/砂糖:大さじ1~4/中力粉:小さじ2/シナモンパウダー:小さじ1/2/ナツメグ:一摘み
※リンゴは酸味のあるもの、甘いものなど何種類かを混ぜるといいと思います。今回はグラニースミス、フジ、ハニークリスプの3種類を使いました。
トッピング
ロールドオーツ:50g/中力粉:60g/砂糖:大さじ2/シナモンパウダー:小さじ1/2/ベーキングパウダー:小さじ1/8/ベーキングソーダ:小さじ1/8/無塩バター:大さじ4(小さなサイコロ)
 
作り方
1.オーブンを摂氏180度/華氏350度に設定する。
2.ボウルにリンゴを入れ、レモン汁をかけて混ぜる。
3.別の器に他のフィリング材料を入れてよく混ぜたら、リンゴに振りかけてよく混ぜる。
4.リンゴをオーブンセーフの器に均等に敷く。
5.別のボウルにトッピングのベーキングソーダまでの材料を入れてよく混ぜたらバターを加え、小豆大のかたまりになるまで手で混ぜる。
6.トッピングの材料をリンゴの上に均等にのせて、オーブンで40~50分、リンゴが柔らかくなり、ジュースが沸騰して泡立ってくるまで焼く。
7.オーブンから出して15くらい冷ましたら、温かいまま器に盛る。アイスクリームやホイップクリームを添えてもよし。

参考レシピ
https://www.pbs.org/food/recipes/classic-apple-crisp/
参考資料
https://en.wikipedia.org/wiki/Apple_crisp
https://en.wikipedia.org/wiki/Cobbler_(food)
https://en.wikipedia.org/wiki/Apple_crumble
https://www.thekitchn.com/whats-the-difference-between-a-cobbler-crumble-and-crisp-90877
https://www.allrecipes.com/article/difference-between-cobbler-crisp-and-crumble/
https://www.tasteofhome.com/article/the-difference-between-cobblers-crumbles-crisps-and-buckles/
https://www.canadianliving.com/food/baking-and-desserts/article/what-s-the-difference-between-a-cobbler-and-a-crisp
https://www.thespruceeats.com/berry-dessert-differences-305508
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=coo.31924003586777&view=1up&seq=263&q1=apple%20crisp

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