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『ポセイドン・アドベンチャー』に関する個人的な話

 1960年代にはテレビシリーズ『原子力潜水艦シービュー号』や『宇宙家族ロビンソン』、『タイム・トンネル』などを手がけ、1970年代には『タワーリング・インフェルノ』という豪華スター共演の大ヒット作を生み出した名プロデューサー、アーウィン・アレン。彼が1972年に製作し、『クリスマス・キャロル』や『オデッサ・ファイル』、『メテオ』のロナルド・ニームが監督したのが、ポール・ギャリコの原作を映画化した『ポセイドン・アドベンチャー』だ。筆者は劇場公開時には観ることができず、初めて観たのは荻昌弘さん解説のTBS『月曜ロードショー』のテレビ初放送時(枠大で放送)で、実家のある秋田県ではTBS系の放送局がなく、遅れて放送されたとき(確か秋田テレビで放送)だったと記憶している。そのときの吹き替えは、ジーン・ハックマン=小林昭二、アーネスト・ボーグナイン=富田耕生という布陣で、テレビという小さな画面ながらも感動した覚えがある。その後、日本テレビ『水曜ロードショー』ではハックマン=小林勝彦、ボーグナイン=藤岡重慶(いい味出してたなぁ)、テレビ朝日の『日曜洋画劇場』ではハックマン=磯辺勉、ボーグナイン=坂口芳貞(後にWOWOWで吹替補完版が製作された)、レーザーディスク版ではハックマン=内海賢二、ボーグナイン=富田耕生、最近のBS-TBSではハックマン=石塚運昇、ボーグナイン=辻親八(テレビドラマ『CSI:マイアミ』のデヴィッド・カルーソとレックス・リンコンビ)だった。その後、ビデオ、LD、DVD、ブルーレイと、何度も観てきたが、ようやくスクリーンで観られたのは2016年8月の『午前十時の映画祭7』での上映だった。立川シネマシティの大きなスクリーンで観た『ポセイドン~』は本当に素晴らしくて、改めて大好きな1本だと感じさせてくれた。2006年にはウォルフガング・ペーターゼン監督、カート・ラッセルとジョシュ・ルーカス主演でリメーク版も作られたが、まあ、これが散々な出来で、オリジナル版の偉大さを改めて感じたものだった。
 物語はご存じの方も多いと思うが、大晦日に出航した豪華客船ポセイドン号が海底地震で発生した大津波で転覆し、乗客たちが船内からの脱出に挑むというもの。映画前半ではハックマン演じる牧師のスコットやボーグナイン演じる刑事のロコなど、主要な人物のバックグラウンドが丹念に描かれ、転覆してからはスコットほか上になった船底を目指す者、パーティーが行われていた海上で救助隊の助けを待つ者と運命が分かれるという展開。ハックマン、ボーグナインのほか、レット・バトンズ、キャロル・リンレー、ロディ・マクドウォール、シェリー・ウィンタース、パメラ・スー・マーティン、ステラ・スティーヴンスといった豪華キャストが見せる人間ドラマが見応え十分で、ウィンタースの演技、クライマックスのハックマンの熱演は何度観ても感動してしまう。オスカーで特撮部門を受賞した船体のセットは見事だし、歌曲賞を受賞した「モーニング・アフター」は改めて聞いても本当に名曲だと思う。
 その後もアーウィン・アレン自身が監督した続編『ポセイドン・アドベンチャー2』やアダム・ボールドウィン主演のテレビムービー、正直、見るも無残なリメーク版なども製作されたが、やはりオリジナル版にはかなわない。オールスターキャストの共演、秀逸な人間ドラマ、迫力の特撮など、すべてが揃ったからこその傑作だと思う。この先、4Kデジタル・リマスター版で、劇場の大きなスクリーンで観てみたいものだ。

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