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『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』雑感

 1972年、マリオ・プーゾのベストセラー小説をフランシス・フォード・コッポラ監督が映画化し大ヒット、同年のオスカーでは作品賞、主演男優賞、脚色賞を受賞した『ゴッドファーザー』。2年後の1974年、続編となる『ゴッドファーザーPARTⅡ』は興行的にも成功した上、前作をしのぐ傑作を称され、同年のオスカーでは作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、作曲賞、美術賞を受賞した。その16年後の1990年には『ゴッドファーザーPARTⅢ』が作られるが、前2作ほどの評判は得られず、失敗作と称された。だが、公開30周年となる2020年、コッポラ監督がフィルムと音声を修復し、新たに再構成、再編集された『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』が作られるなど、『ゴッドファーザー』シリーズは長い間、観客を魅了し、多くのファンを作り出し、長く語り継がれる作品となった。
 その『ゴッドファーザー』第1作の製作舞台裏を描く全10話のミニシリーズ『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』が作られた。アメリカではパラマウント+で4月から配信され、日本ではパラマウント+がないことから観られないのかと思っていたら、U-NEXTで7月から配信されることが発表され、配信開始日をワクワクしながら待った。そして、配信開始日に5話分、翌日に1話分、翌々日に2話分、その次の日に2話分と分けてじっくりと観た。『ゴッドファーザー』の本編、DVDなどに収録されていたメイキングやドキュメンタリーで語られていたことが実際にドラマとして再現されると、これがもう、抜群に面白い。第1話冒頭から最終話(第10話)のラストまでニヤニヤするやら、ワクワクするやら、もう楽しかった。
 物語はマイルズ・テラー(製作総指揮も担当)演じる映画プロデューサーのアルバート・S・ラディがパラマウントに入社し、マリオ・プーゾ原作の『ゴッドファーザー』を映画化する過程が、プロデューサー側から描かれている。テラーのほか、マシュー・グード演じるプロデューサーのロバート・エヴァンスがメインになって、彼らの周辺のほか、『ゴッドファーザー』の製作、土地のギャングたちとの関わりなども絡めながらテンポよく進んで行く。テラーもグードも良いのだが、彼らを囲む脇役たちが光っていた。個人的にはラディの秘書で、後に敏腕エージェントとなるベティ・マッカートを演じたジュノー・テンプルが本当に素晴らしかった。ラディを立て、彼を陰から支え、出る時には出るという強い女性を実に魅力的に演じていて、彼女のキャリアの中でも最高の演技だと言ってもいい。そして、親会社ガルフ・アンド・ウェスタン側の人物を演じたバーン・ゴーマンとコリン・ハンクス、ギャング側を演じたジョヴァンニ・リビシ、そして、フランシス・フォード・コッポラ役のダン・フォーグラ―、マリオ・プーゾ役のパトリック・ギャロなど、彼らの名演はアメリカのテレビに関する賞に絡んできそうなぐらい価値のあるものだった。さらに、出演場面は少なかったが、ジャスティン・チェンバース演じるマーロン・ブランド、アンソニー・イッポリト演じるアル・パチーノのそっくりぶりと、ここまで似せられるのかと思うほどの徹底した役作りにも驚かされた。
 このドラマ、あくまでもプロデューサー側から観た物語なので、映画の撮影シーンが少ないかなぁ、と、不満に思う人もいるかもしれない。でも、その撮影シーンだけでも別のドラマとして成立すると思う。だから、これはこれでいいのだ。この他にも魅力はたくさんあるのだが、それは全10話を観て発見していただきたい。これはあくまでも雑感なので、参考にしていただければ幸いだ。『ゴッドファーザー』ファンならずとも、映画ファンだったら必見の快作であることは確かだ。

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