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ブルース・ウィリス主演、ジョン・マクティアナン監督『ダイ・ハード3』

 1988年のジョン・マクティアナン監督の第1作、1990年のレニー・ハーリン監督の第2作と、主演のブルース・ウィリスをスターダムに押し上げた大人気アクションシリーズ『ダイ・ハード』。続いて1995年に作られたのがシリーズ第3作となる『ダイ・ハード3』だ。監督は第1作のマクティアナンが再登板。ジョナサン・ヘンズリーのオリジナル脚本『サイモン・セッズ』を基に映画化し、共演にジェレミー・アイアンズ、サミュエル・L・ジャクソンなど、豪華な共演者がそろった。日本での劇場公開当時、配給収入48億円という大ヒットを記録した。
 筆者が最初に観たのは神谷町にあった時代の、今はなき20世紀フォックスの小さな試写室だった。試写室のスクリーンだけでは物足りず、劇場の大きなスクリーン(多分、日本劇場か日比谷スカラ座だったか)でも観た記憶がある。テレビ初放送されたのは1998年4月4日のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』で、ウィリス=村野武範さん、アイアンズ=羽佐間道夫さん、ジャクソン=屋良有作さん、2回目は1999年4月4日(奇しくも同じ日)のテレビ朝日『日曜洋画劇場』で、ウィリス=野沢那智さん、アイアンズ=小川真司さん、ジャクソン=大塚芳忠さん。ちなみに、ソフト版はウィリス=樋浦勉さん、アイアンズ=小川真司さん、ジャクソン=池田勝さんという吹き替えキャストだった。
 ニューヨークでビルが爆破されるというテロ事件が起こる。その後、ウィリス演じるニューヨーク市警の警部補マクレーンに名指しで、アイアンズ演じるサイモンと名乗る男から電話がかかってくる。サイモンはマクレーンに対して次々に“サイモン・セッズ(曰く)”と呼ばれる問題を出してくる。マクレーンは最初の要求に従い、ハーレムにプラカードを付けて立ち、そこでジャクソン演じる家電量販店を営むゼウスと出会う。ゼウスはマクレーンを助けたことをきっかけに、サイモンVSマクレーンの戦いに巻き込まれることになるというのがあらすじだ。前作まではマクレーンがたったひとりで敵に挑むというものだったが、今回はゼウスという相棒と行動を共にする”バディ”ものという新機軸で、ニューヨークという広大な町を駆け回る。サイモンの正体(これはシリーズを観ていない人もいると思うので内緒。知っている人はああ、あの人かとすぐに分かるはずだ)が分かった時点で、なるほど、そうくるのかと思わずニヤニヤしてしまう。爆弾を仕掛けて警察を翻弄するサイモンの本当の目的が、実はシリーズを通したつながりがあるという点でもなるほどと思わせる。マクレーンの妻ホリー(本作にボニー・べデリアは登場しないが……)の2以降の話も描かれ、シリーズを通したお楽しみもある。音楽面では、これまでに使われてきた「Let it Snow,Let it Snow,Let it Snow」はなしで、第1作でベートーヴェンの「歓喜の歌」、第2作でシベリウスの「フィンランディア」に続いて使われるのが、パトリック・ギルモアの「ジョニーが凱旋するとき」。どこかで一度は聞いたことがあるメロディーが勇壮なマーチ風に使われているのも印象に残る。
 作品を重ねるごとに質が落ちると言われる“シリーズもの”だが、今回は前作までのクリスマスイブの夕方から夜までのという特別な日の限られた時間ではなく、真昼のニューヨークが舞台で、象徴的に使われてきた曲も変わるという、それまでとは違ったアプローチとなったこともあり、同じマクレーンが主人公でありながら前作までとはまた違った別の面白さがある。丁々発止の会話を繰り広げるウィリスとジャクソンの演技も楽しいし、特徴のある英語の発音で話すアイアンズも快演を見せる。シリーズものを続けるための苦心は感じられるが、この『ダイ・ハード3』はそれまでを踏襲しながらも、180度変化させたことが功を奏したと言えるだろう。


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