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ブルース・ウィリス主演、レン・ワイズマン監督『ダイ・ハード4.0』

 ブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』シリーズは、1988年にジョン・マクティアナン監督の第1作、1990年にレニー・ハーリン監督の第2作、1995年に再びマクティアナン監督の手で第3作が作られた。そして、12年の時を経て、2007年にウィリスを主演にしたシリーズ第4作が『ダイ・ハード4.0』だ。監督は『アンダーワールド』やリメーク版『トータル・リコール』、テレビシリーズ『HAWAII FIVE-O』のパイロット版などを手掛けたレン・ワイズマン。音楽は第3作まで担当し、2003年11月に亡くなったマイケル・ケイメンに代わり、『スクリーム』シリーズや『ターミネーター3』などのマルコ・ベルトラミ。
 筆者がこの映画を観たのは劇場公開時のTOHOシネマズ府中で、確か、一番大きなスクリーン2だったと記憶している。その時に日本語吹き替え版も同時に制作され、ウィリス=野沢那智さん、ティモシー・オリファント=東地宏樹さん、ジャスティン・ロング=川中子雅人さん、メアリー・エリザベス・ウィンステッド=園崎未恵さん、マギー・Q=坪井木の実さん、クリフ・カーティス=内田直哉さんというボイスキャストだった。DVD発売時にはウィリスの声をソフト版で担当してきた樋浦勉さんのバージョンも同時に制作され、DVDやブルーレイで観ることができる。テレビ初放送は2010年1月3日のテレビ朝日『日曜洋画劇場』で劇場公開版、2回目は同年10月30日のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』でソフト版が放送され、その後は放送局によって劇場公開版やソフト版のどちらかが放送されるという形態が取られた。テレビ放送でおなじみの野沢さんバージョンとソフト版でおなじみの樋浦さんバージョンのふたつが存在することは素晴らしいことで、どちらか観たい方が選択できる。吹き替えファンにとっては本当にたまらない。
 アメリカ独立記念日の前日、ワシントンD.C.のFBI本部にある全米のインフラ監視システムが何者かにハッキングされる。カーティス演じるFBI副局長ボウマンの「犯人の特定のため、全米にいるハッカーを保護せよ」という指令が下る。ウィリス演じるニューヨーク市警の刑事マクレーンは、ロング演じるカムデン在住のハッカー・マシューを護送することになるが、何者かに命をねらわれる。その後、全米を震撼させるサイバーテロが発生し、マクレーンはマシューと共にオリファント演じるガブリエル率いるテロ集団と戦いを繰り広げるというのが物語の流れだ。12年ぶりの新作ということもあり、サイバーテロやジェネレーションギャップ(CCR《クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル》をめぐる会話など)という、現代らしいテーマが取り上げられているが、根っこの部分は変わらない。マクレーンとマシューの相棒(バディ)ものというのは前作からの流れで、時代が変われば描き方も変わるということで、パトカーでヘリコプターを落としたり、マクレーンがトラックから戦闘機、さらに道路に乗り移りながら落ちるなど、アクションシーンもCGやデジタル合成を駆使したド派手なものとなっている。シリーズの流れとしてはウィンステッド演じる第1作で子どもだったマクレーンの娘ルーシーが成長した姿で登場したり、FBI の捜査官のひとりの名前がジョンソン(?)だったりと、『ダイ・ハード』大好きなワイズマン監督は前3作をオマージュするシーンをそこかしこに入れ込んできて、ずっと『ダイ・ハード』シリーズを観ている人にとってはそうくるかと思わずニヤリとしてしまう。そして、テレビシリーズ『NIKITA/ニキータ』で主演することになるマギー・Qが悪役側で出演し、ウィリスと格闘シーンを繰り広げるなど、後のブレイクを予感させるようなキャスティングがされているのも興味深い。さらに、映画監督としても俳優としても活躍するケヴィン・スミスがマシューの師匠格にあたるハッカー役で出演していたりと、映画ファンなら、おっ、と思うような遊びもあったりするのも楽しい。
 最初に作られた1980年代、続編2本の1990年代、そして、第4作の2000年代と、時代が変われば表現の仕方も変わるし、監督が違えば作品の色も変わってくる。そういう意味では、『ダイ・ハード』シリーズはその時代の文化を反映しているし、ジョン・マクレーンが生きてきた歴史でもある。第1作から観直してみると、また意外な発見があるかもしれない。それが映画を観る楽しみでもあるからだ。

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