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DWDU(ディック・ウルフ・ドラマティック・ユニバース)入門編

 アメリカのドラマ界のヒットメーカーのひとりがディック・ウルフだ。脚本家として映画『マスカレード 甘い罠』や『ノーマンズ・ランド』、『青春の輝き』などを担当した彼が数々のテレビシリーズを手がけ、それが同じ時空に存在していて、各ドラマのキャストがゲストで出たり、ドラマ間(テレビ局の枠を超える場合もあり)でクロスオーバーエピソードが展開するなど、同じプロデューサーだからこそできるファン垂涎のスゴ技で海外ドラマファンを楽しませている。僕はこれをあえて“DWDU(ディック・ウルフ・ドラマティック・ユニバース)と命名したい。
 まず、彼が1990年に手がけたのがテレビシリーズ『LAW&ORDER』だ。事件が起こり、前半が刑事の捜査、後半が検察の裁判という1話完結の刑事ドラマで、2010年まで20シーズン続いた(2022年にはシーズン21が放送されるという復活を遂げている)。そして、1999年からは初のスピンオフとなる『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』がスタート(現在、アメリカドラマ史上最長記録を更新中)し、2001年から『LAW&ORDER:クリミナル・インテント』(2011年まで全10シーズン)、2021年には『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』のスピンオフ『LAW&ORDER:組織犯罪特捜班』が放送された。だが、スピンオフとしてスタートしても、2005年の『LAW&ORDER:陪審評決』、2010年の『LAW&ORDER:LA』のように1シーズンのみという短命でキャンセルされた作品もあったりして、すべての作品が成功しているわけではない。
 そして、次にウルフ御大が生み出したのが“シカゴ”シリーズだ。2012年に消防署を舞台にした『シカゴ・ファイア』、2014年には警察を舞台にした『シカゴP. D.』、2015年には病院を舞台にした『シカゴ・メッド』がスタートし、現在も継続している。だが、“シカゴ”シリーズの中でも2017年の『シカゴ・ジャスティス』は残念ながら1シーズンという短命に終わってしまった。
 その後、2018年に『FBI:特別捜査班』を始めとして、2020年に『FBI:Most Wanted~指名手配特捜班』、2021年には『FBI:インターナショナル』が誕生し、“FBI”シリーズという新たなフランチャイズが形成された。これでウルフ御大が手がけるドラマは『LAW&ORDER』シリーズ、『“シカゴ”』シリーズ、『“FBI”』シリーズと、3種類のテレビシリーズが同時に放送されているという、日本ではまず考えられない編成がされていて、どのシリーズも人気があるのは本当にスゴいことだと思う。
 日本ではスーパー!ドラマTVやFOX、AXN、WOWOWといった放送局でディック・ウルフドラマが放送されていて、クロスオーバーエピソードは局の関係もあって全部が通しで観られるという状況にはなっていない。その点はアメリカでの放送形態がうらやましい限りだが。1年遅れとはいえ、彼の手がけるドラマが日本で観られるというのはファンにとってはありがたい。これまでまったく観たことがないという方は今からでも遅くはない。テレビ放送のほかにも配信、レンタルでも観る機会はあるので、少しずつで構わない。ディック・ウルフドラマを観始めてみてはいかがだろうか。

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