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『ミッドナイト・ラン』に関する個人的な話

 2017年のモーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン共演の『ジーサンズ はじめての強盗』のオリジナル、1979年の日本未公開映画『お達者コメディ/シルバー・ギャング』、1984年の『ビバリーヒルズ・コップ』、1992年の『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』、1998年の『ジョー・ブラックをよろしく』と、寡作ながら良質な作品を生み出し、2003年の日本未公開の『ジーリ』での失敗以降、監督作が途絶え、ごぶさたなマーティン・ブレスト監督。そんな彼の作品の中でも人気の高いのが、ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディン共演の『ミッドナイト・ラン』だ。1994年にはクリストファー・マクドナルド主演でテレビムービーが3本製作されている。筆者がこの映画を初めて観たのは正月映画として劇場公開された当時、今はなき新宿ミラノ座の大きなスクリーンだった。テレビ初放送はテレビ朝日の『日曜洋画劇場』で、デ・ニーロ=池田勝、グローディン=羽佐間道夫という布陣(2018年には日曜洋画劇場版の吹き替えが存在しない個所に追加録音をした追録版がムービープラスで放送、ちなみにVHS版はデ・ニーロ=樋浦勉、グローディン=玄田哲章)だった。この日曜洋画の吹き替え版はファンの間でも評価が高いという。確かに、このふたりのかけ合いは実に見事だ。
 物語はデ・ニーロ演じる元警官で賞金稼ぎのジャックが、グローディン演じるマフィアの資金を奪って慈善事業に寄付したことで逮捕されるも保釈後に行方をくらました会計士のデュークをニューヨークからロサンゼルスまで護送するというもの。飛行機に乗ればたった一晩で終わり簡単な仕事(ミットナイト・ラン)なのだが、デュークが飛行機嫌いと言い出したことから列車や車を使ってロスを目指す。だが、ふたりをマフィアのボスや部下たち、FBIの捜査官が追うというロードムービー仕立てで、デ・ニーロとグローディンの絶妙な掛け合い、マフィアのボスを演じるデニス・ファリーナ、FBI捜査官モーズリーを演じるヤフェット・コットー、ジャックの好敵手のバウンティーハンターのマーヴィンを演じるジョン・アシュトンなど、脇のキャラクターを巧みに絡ませて、126分という上映時間を感じせない軽快なテンポで描き、ダニー・エルフマンの音楽に乗せて、アクション、コメディー、男同士の友情など、さまざまな要素を散りばめながら、さわやかな感動で終わらせるという後味の良さもいい。お金をかけた超大作ではなく、古き良き時代の正統派な娯楽映画の作りというのが最大の魅力だと言える。
 劇場公開以来、おそらく名画座などで上映され、テレビ放送、ソフトなど、さまざまな形で観られてはいるが、午前十時の映画祭、4Kデジタルリマスター版など、再上映できる機会はあるとは思うが、未だにスクリーン上映されていない。おそらく、今ではスクリーンで観たことのない映画ファンの方が多いだろう。せっかくシネコンや映画館などで旧作の上映が数多くされているのだから、この『ミッドナイト・ラン』をスクリーンで観たいという要望は数多く来ていると思う。映画関係者の皆さん、これだけ観客から支持される『ミッドナイト・ラン』、4Kデジタルリマスター版で上映してみてはいかがだろうか。僕も久しぶりにスクリーンで観てみたいと思っているひとりだ。

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