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『ゴッドファーザーPARTⅡ』に関する個人的な話

 大ヒットした(もしくは後に傑作と呼ばれる)映画の続編は前作よりも落ちる、面白くないというのはよく言われることだが、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザーPARTⅡ』にその言葉はまったく当てはまらず、前作に引き続いてオスカー作品賞を獲得、若き日のヴィトーを演じたロバート・デ・ニーロが助演男優賞を獲得(前作ではマーロン・ブランドが主演男優賞を獲得)という、同じキャラクターを演じた別の俳優がオスカーを受賞するという、普段ではまずありえない事態が起こった。このことからしても、今では名作の誉れ高い『ゴッドファーザー』の続編『~PARTⅡ』はまさに奇跡の映画と言っても過言ではない。
 筆者が最初にこの作品を観たのは、日本テレビ系の『水曜ロードショー』で“ゴッドファーザー”シリーズ4週連続放送という、今では考えられないような編成がされたときで、2時間枠の前編・後編(本編約177分)で放送された。劇場公開時に映画館で観ていないので、後に、今はなき新宿東映パラス2で『ゴッドファーザー』シリーズのニュープリント版が上映されたときが初のスクリーン鑑賞で、『~PARTⅡ』がまさか3時間20分もあったなんてことは、そのとき初めて知って驚いた。その後、テレビ放送、ビデオ、レーザーディスク、DVD、ブルーレイ、デジタル・リマスター版上映、午前十時の映画祭と、事あるごとにスクリーンで観てきた。そして、現在開催中の午前十時の映画祭12では4Kリマスター版の上映が開始されたので、早速、立川シネマシティの4K上映に駆け付けた。観終わって改めて思ったのは、3時間20分の長尺ながら、前作に匹敵する、もしくはそれ以上の出来で、実に巧みで練り込まれたストーリー展開に改めて驚かされた。
 まず、冒頭で描かれるのはヴィトーがシシリア島からアメリカ・ニューヨークに渡ってくる少年時代、そして、ファミリーのドンとなり、権力を拡大しようとするマイケルがリー・ストラスバーグ演じるハイマン・ロスとの抗争に巻き込まれていく様、それと同時に、デ・ニーロ演じる若き日のヴィトーが次第にのし上がっていく様がオーバーラップで切り替わる同時進行という形で展開していく。権力欲に取りつかれたマイケルがさまざまな裏切りに遭い、家族にまで手をかけて次第に孤立していく姿、人心を掌握しながら次第に勢力を拡大していく若きヴィトーの姿を合わせ鏡のように対比させていく作劇が実に見事で、デ・ニーロの神がかった演技は本当に素晴らしいし、アル・パチーノの迫力も前作以上に増していて、このふたりの演技を観ているだけでも圧巻だ。映画の中盤でヴィトーが祭りに紛れて地元のボス・ファヌッチを暗殺する場面は何度観てもしびれるし、この映画屈指の名シーンと言っても過言ではない。ゴードン・ウィリスの撮影、ニーノ・ロータの音楽も素晴らしく、こんな凄い続編を作ってしまったコッポラ監督の才能の凄さを改めて実感させられる。
 この後、1990年のシリーズ第3作『ゴッドファーザーPARTⅢ』をコッポラ自身が再構成、再編集した『ゴッドファーザー最終章 マイケル・コルレオーネの最期』も午前十時の映画祭12で上映される。すでにブルーレイで観ていて、改めて観直すと『~PARTⅢ』を観た当時と比べてもそんなに悪くないかもと思ったので、大きなスクリーンで観るのが楽しみになっている。

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