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『48時間』に関する個人的な話

『サタデー・ナイト・ライブ』出身で、『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズや『星の王子ニューヨークへ行く』、『ナッティ・プロフェッサー』シリーズ、『ドクター・ドリトル』シリーズなどのコメディーほか、『ドリーム・ガールズ』では第79回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、第64回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞するなど、演技派としての顔も見せたエディ・マーフィ。そんな彼の映画デビューとなったのが、ニック・ノルティと共演し、ウォルター・ヒルが監督した『48時間』だ。1990年には続編となる『48時間PART2/帰ってきたふたり』が製作されるが(このときはマーフィの方が前面に出ていた)、第1作には遠く及ばない出来にがっがりしたものだった。
 筆者は劇場公開時には観ることができず、初めて観たのは日本テレビ『水曜ロードショー』でのテレビ初放送だった。最近だと6月2日(木)にテレビ東京の『午後のロードショー』でも放送されたが、使われた吹替版は、ニック・ノルティ=石田太郎、マーフィ=下條アトムという初放送版だった。石田と下條のかけ合いが絶妙で楽しく、ジェームズ・レマーの声を演じた樋浦勉の悪役ぶりも出色で、数ある洋画の吹替版の中でも上位に入るほどの出来だと個人的には思っている。このバージョンのほかにもノルティ=大塚明夫、マーフィ=山寺宏一の日本テレビ『金曜ロードショー』新版&VOD版、ノルティ=玄田哲章、マーフィ=山寺宏一というテレビ朝日『日曜洋画劇場』版があるが、やはり石田&下條コンビの吹替版を越えることはできなかったのではないかというのが正直なところだ。
 物語は野外作業中の囚人ガンツ(ジェームズ・レマー)が仲間のビリー・ベア(ソニー・ランダム)の手を借りて脱走する。刑事のジャック(ノルティ)はガンツたちとつながりがあり、刑務所に服役しているレジー(マーフィ)を48時間の期限で仮釈放させ、ガンツたちの行方を追うというもの。ヒル監督作品独特のキレのある、テンポのいいカットつなぎで、ジャックとレジーの対立を丁々発止のかけ合いで見せ、拳銃、車を使ったアクションなど、サンフランシスコの風景を織り交ぜて、起承転結を巧みに使ったシンプルな物語を展開させるのが実に見事だ。ノルティの無骨さとマーフィのノリの良さがいい塩梅に混じり合い、映画をさらに魅力的なものにしている。当時はまだまだ有名ではなかったジェームズ・ホーナーの音楽も素晴らしいし、ジャックとレジーの会話で終わらせるラストも粋で、96分という短めの上映時間も丁度良く、映画として本当によくできている。
 劇場公開以来、スクリーンで上映される機会も少なく、テレビやソフト、配信でしか観られないのが寂しい限りだ。午前十時の映画祭でもいいし、4Kデジタルリマスター版でもいいので、どこかの配給会社さん、映画館のスクリーンで観られる機会をぜひ作ってもらえないだろうか。この映画はバディムービーの楽しさが満喫できる傑作の1本なのだから。

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