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アーヴィン・カーシュナー監督『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(劇場初公開版)

 1977年5月にアメリカで公開され、約1年遅れの1978年6月の先行上映を皮切りに日本でも公開されて大ヒットしたジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』。この大ヒットを受けて、ルーカス監督は当初から構想していた、いわゆる旧3部作の制作に乗り出す。このことを受けて、第1作の『スター・ウォーズ』には『エピソード4/新たなる希望』というサブタイトルが付けられ、続編となるのが1980年5月21日にアメリカで、6月28日に日本で公開された第2作『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(後に『~ エピソード5/帝国の逆襲』と改題)だ。前作の監督だったルーカスはストーリーと製作総指揮に回り、今回、監督に抜擢されたのはルーカスの南カリフォルニア大学時代の講師だったベテランで、『特攻サンダーボルト作戦』や『アイズ』のアーヴィン・カーシュナー。ルーカスが絶大な信頼を置くカーシュナー監督だったからこそ、『~帝国の逆襲』は単なるシリーズものの続編ではなく、その後の『スター・ウォーズ』シリーズの快進撃のきっかけとなったことは間違いない。
 筆者がこの『~帝国の逆襲』を映画館で観たのは、まだ実家にいたころ、秋田県秋田市にあった洋画専門封切館・読売ホールだった。その後、大学進学を機に東京に出てきてから、まだ70ミリ上映ができた時代の新宿武蔵野館で『~ジェダイの復讐』とのリバイバル2本立てを観た。テレビ初放送は1986年10月10日の日本テレビ『金曜ロードショー』で、マーク・ハミル=水島裕さん、ハリソン・フォード=村井國夫さん、キャリー・フィッシャー=島本須美さんという前作同様の顔ぶれだった。そして、1992年10月25日放送のテレビ朝日『日曜洋画劇場』では、ハミル=塩沢兼人さん、フォード=山寺宏一さん、フィッシャー=小山茉美さんというレアなキャスティングだった。ちなみに、劇場公開版の吹き替え(奥田瑛二さん、森本レオさん、森田理恵さん)、ソフト版の吹き替え(島田敏さん、磯部勉さん、高島雅羅さん)は前作同様だ。
 前作『スター・ウォーズ』のときもそうだったが、DVDの”リミテッド・エディション”に収録されている1980年の劇場初公開版を観た上で話を展開していきたい。キャラクターは前作で紹介済みなので、今回はよりドラマ性が重視されている。オープニングでは氷の惑星ホスでの帝国軍と抵抗軍の戦いが描かれ、ハミル演じるルークはアレック・ギネス演じるオビ=ワンの助言に従い、フランク・オズ演じるジェダイマスターのヨーダ(人気キャラになっていくとはこのときは思いもしなかったが……)の元で修業するため、惑星ダゴバに向かう。一方、ホスから脱出したフォード演じるソロとフィッシャー演じるレイアは帝国軍の追跡を逃れながら、ビリー・ディー・ウィリアムズ演じるソロの旧友ランド・カルシリアンがいるクラウド・シティに向かうという二つの流れが並行して描かれる。ルークとソロたちがそろうのはクラウド・シティで、そこではデヴィッド・プラウズ演じる(声はジェームズ・アール・ジョーンズ)ダース・ベイダーとルークが対峙し、アメリカでの劇場公開時までルーカスたちが極秘にしていたという映画史に残るあの場面、あの名ゼリフが登場する(未見の方もいると思うのでここでは内緒)。ジョン・ウィリアムズの音楽も、勇壮な「テーマ曲」よりも「帝国のマーチ」の方が流れる比率が高く、前作でデス・スターを破壊された帝国軍の反撃と攻勢を象徴するような使われ方をしていることにも気づかされる。その後の『~ジェダイの復讐(帰還)』に向けた地ならし、もしくはつながるブリッジ的な『~帝国の逆襲』だが、ルークのジェダイの騎士としての成長、ソロとレイアの恋、ダース・ベイダーとルークのとある関係など、ドラマチックな要素を散りばめ、非常にバランスよく描かれているという点でも、『~帝国の逆襲』は今までにあった続編映画とは一線を画す、よく出来た映画だと言っても過言ではない。途中で降板したリー・ブラケットの第一稿を基に仕上げたローレンス・カスダンの脚本家としての力量、ルーカスからバトンを受けたカーシュナー監督の手腕なくしては、『~帝国の逆襲』はこれほどのまでの作品にはならなかっただろう。
 1997年の特別篇、DVD版、ブルーレイ版と、その都度、一部修正が加えられているようだが、やはり、この劇場初公開版があってこそだと思う。スティーヴン・スピルバーグ監督が『E.T.』の中でE.T.を自転車に乗せた子どもたちが空に飛び立つ場面で警察官が持っていた拳銃やショットガンをCGでトランシーバーに変えてしまったことを後悔しているという記事を読んだ。現在の技術に合わせて変更したいというルーカス監督の気持ちはわからないでもないが、前作のときにも言及したが、やはり、『~帝国の逆襲』は1980年当時の技術を結集して作られた結果なので、劇場初公開版は劇場初公開版として観られる環境にしておくのが本当はいいと思う。

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