『ブルース・ブラザース』に関する個人的な話
1982年3月5日に33歳の若さで逝去したジョン・ベルーシが亡くなってから、もう40年という歳月が流れた。本当に早いものだ。1975年からアメリカのNBCで始まった『サタデー・ナイト・ライブ』で人気を獲得し、1978年公開の『アニマル・ハウス』で映画スターとしての人気も出た。その後、ダン・エイクロイドと組んで結成したバンド“ブルース・ブラザース・バンド”では兄ジェイク役でボーカルを披露し、その人気に乗って1980年に公開され、ジョン・ランディス監督、ベルーシとエイクロイド(ランディスと共同脚本を担当)が主演したのが『ブルース・ブラザース』だ。筆者は劇場公開当時、秋田県秋田市にあった秋田東宝(東映パラスだったかも)でハル・ニーダム監督、バート・レイノルズ主演のシリーズ第2作『トランザム7000
VS激突パトカー軍団』と2本立てで観た。当初は『トランザム~』目当てだったのだが、『ブルース~』のあまりの面白さにぶっ飛んでしまった。その後、1983年5月14日にフジテレビの『ゴールデン洋画劇場』でテレビ初放送されたときは2時間枠で、あまりにカットされすぎてガッカリした覚えがある。このときはベルーシ=せんだみつお、エイクロイド=小野ヤスシという、いわゆるタレント吹き替えだった。その後、1986年2月22日に同じく『ゴールデン洋画劇場』で放送されたときも同じで、ベルーシ=ブラザー・トム、エイクロイド=ブラザー・コーンという、これまたタレント吹き替えだった。そして、ブルーレイ発売時に新録された吹き替え版はベルーシ=高木渉、エイクロイド=青山穣というキャスティングで、ようやくノーカットで吹き替え版が観られる環境となった。劇場公開の後、名画座でも上映されたとは思うが、最近では2012年にTOHOシネマズの“バック・トゥ・ザ・シアターVol.1”、2019年に“午前十時の映画祭10-FINAL”でも上映された。
物語はベルーシ演じる兄ジェイクが刑務所から出所し、エイクロイド演じる弟エルウッドが出迎えるシーンから始まる。ふたりはかつて世話になった養護施設を訪れ、5000ドルの固定資産税が払えず、立ち退きを迫られていることを知る。キャブ・キャロウェイ演じるかつて世話をしてくれたカーティスの紹介で教会に行ったジェイクはバンドを組んで施設を救うという神の啓示を受け、エルウッドと共にかつての仲間集めに奔走する。だが、ふたりは行く先々でトラブルを起こした上、キャリー・フィッシャー演じる謎の女性や警官、極右団体、カントリーミュージックバンドなどに追われる中、ようやくホテルでコンサートを開くというのが流れだ。
オープニングからノリノリのロックが流れ、映画全体が音楽に彩られている。ジェイクが神の啓示を受ける教会の神父を演じるのがジェームズ・ブラウン、かつてのバンド仲間の妻を演じるのがアレサ・フランクリン、楽器店の店主を演じるのがレイ・チャールズ、街角のミュージシャンでジョン・リー・フッカー、カーティス役のキャロウェイなど、豪華ミュージシャンが次々に登場して曲を披露するのが見せ場となっている。特に、終盤のホテルのライブシーンで、ブルース・ブラザースが到着するまでの間にキャロウェイが歌う「ミニ・ザ・ムーチャー」のいぶし銀のパフォーマンスは思わずうなってしまうほどの素晴らしさ。もちろん、ブルース・ブラザース・バンドが披露する「Everybody Needs Somebody to Love」ほか、数々の楽曲も聴かせる。そして、この映画の見どころとなっているのはカーアクションシーンの数々。モールを破壊するのを手始めに、パトカーが何台もクラッシュしたり、勢い余ってトラックにのってしまうなど、もう楽しくてしょうがない。さらに、豪華な共演者も見もので、ふたりの命をねらう謎の女性のフィッシャー(後にどんな女性かは判明するが……)、刑務所看守役のフランク・オズ、クック郡の収税課職員役でスティーヴン・スピルバーグなど、よく出演したなぁ、と感心してしまうぐらいのメンツで、彼らの姿を見るのもお楽しみのひとつだと言える。
1998年にはベルーシ不在の中、エイクロイド主演で続編『ブルース・ブラザース2000』が作られ、ジョン・グッドマン、ジョー・モートンほか、前作の出演者も再登場するなど、豪華なメンツがそろったが、どこか一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。ミュージシャン的にはエリカ・バドゥ、B.B.キング、エリック・クラプトンほか、前作以上に超豪華なメンバーが集結し、クラプトンがセリフを言うなど、音楽ファンの心を刺激するような趣向も用意されている。これを書く前に第1作を久々に観直したので、この勢いで『~2000』もかなり久々に観てみようかと思っている。