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ゴッドファーザー<最終章> マイケル・コルレオーネの最期

 オスカーで第1作と続編が作品賞を受賞し、今では語り継がれる名作となった『ゴッドファーザー』シリーズ。『~PARTⅡ』から16年の時を経て、『ゴッドファーザーPARTⅢ』が製作された。だが、前2作があまりにも偉大な上、当初はメアリー役だったウィノナ・ライダーの降板、シリーズには欠かせないトム・ヘイゲン役のロバート・デュヴァルに出演を断られるなど、受難続きだった。筆者も劇場公開時に今はなき有楽町マリオンの日本劇場で観た。確かに、前作までの重厚さに欠け、ウィノナ・ライダーの代わりに出演したソフィア・コッポラにも魅力は感じられず、正直、がっかりしたというのが本音だ。その後、発売されたビデオ版は劇場公開版162分に未公開シーンを8分追加した170分バージョンになっていた。
 最近は過去の作品(『コットンクラブ』や『アウトサイダー』など)をよく再編集しているフランシス・フォード・コッポラ監督が、当初予定していた形に近づけるべく、『~PARTⅢ』を再編集し、タイトルを変更した『ゴッドファーザー<最終章> マイケル・コルレオーネの最期』として日本でブルーレイが発売された。上映時間は劇場公開時より4分短くなっている。そして、2月に東京・日比谷のTOHOシネマズ日比谷で『ゴッドファーザー』製作50周年記念で第1作、第2作、新たなる“最終章”の4Kリマスター版が上映され、4月からは“午前十時の映画祭12”のオープニング作品として3本が連続上映されている。第1作と第2作は1週間、最終章は2週間上映だが、せっかくの機会なので、第1作~最終章まで1週間ごとに一気に観ることができた。
 新たなる第3作“最終章”は前バージョンとは異なり、第1作と第2作を彷彿とさせる導入部からしてまったく印象が違って見える。バチカンから叙勲されたことを記念したパーティーのシーンは第1作のオープニングの結婚式のシーンを彷彿とさせる。アンディ・ガルシア演じるヴィンセントは第1作でジェームズ・カーンが演じたソニーの息子(愛人の子)で、激しい性格のソニーの気質を受けついだキャラクターで、後半ではアル・パチーノ演じるマイケルからコルレオーネファミリーを受け継ぐという、第1作を思わせる展開になっている。最初に観たときはあまりいい印象ではなかったメアリー役のソフィア・コッポラも、今、観直してみると、そんなに悪くないと思った。そして、シリーズではおなじみの音楽に乗せた粛清シーンも第1作が踏襲され、今回はマイケルの息子アンソニーがオペラ歌手としてデビューする作品の進行と同時に、ヴィンセントが指示を出し、裏切者が粛清されていくという展開になっている。第1作ほどのインパクトはないが、コッポラ監督、見せるところは見せてくれる。オープニングと同様に最大の変更と言えるのがラストシーン。『~PARTⅢ』とはまったく違い、賛否両論があるかもしれないが、マイケル史上、最大の出来事が起き、老いたマイケルが椅子に座っている姿は『~PARTⅡ』のラストと重なっていて、これはこれでありなのだと思う。詳細は避けるが、どちらのラストが相応しいかどうかは、ぜひ、ご自分の目で確かめていただきたい。
 『ゴッドファーザー』シリーズは第1作でファミリーを継ぐ気がなかったマイケルが父と兄の死で継がざるを得なくなり、第2作では勢力を拡大しようとして代償を払うこととなり、最終章では老いたマイケルが次の世代に座を譲り足を洗おうとするが、過去に自分がしてきたことの最大の報いを受けるという、ひとりの男の数奇な運命を描いた壮大な大河ドラマだった。コッポラ監督が再編集した『~最終章』は、第1作、第2作と続けて観ることで、もっと再評価されてもいいように思う。それほどに、『~PARTⅢ』と『~最終章』は似て非なる作品になっているのだから。

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