『星空のむこうの国(オリジナル版)』に関する個人的な話
現在、DVDやブルーレイにとって代わられる前にあったレーザーディスク。初めてレーザーディスクプレーヤーを買ったとき、映画のソフトを4枚買った。レナード・ニモイ監督、出演の『スター・トレック4 故郷への長い道』、ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の騎兵隊三部作の1本『黄色いリボン』、岩内克己監督、加山雄三主演の『エレキの若大将』(これを買おうとしたとき、新宿・新星堂の店員に笑われたという苦い記憶あり)、ほとんどジャケット買いに近かった小中和哉監督、神田裕司&有森也実共演の『星空のむこうの国』だった。そして、『星空の~』のディスクをジャケットから出して再生して観始めた。観終わって、正直、感動した。このころ、今関あきよし、犬童一心など、現在も活躍する監督たちが手がけた8ミリや16ミリの自主映画を鈴なり壱番館や文芸坐ル・ピリエなどで夢中で追いかけていた。その流れで、初めて『星空の~』を文芸坐ル・ピリエでのリバイバル上映で観ることができた。大きなスクリーン(とはいっても16ミリ作品なので、通常の35ミリよりは小さいが……)で観られたことがとてもよかったし、改めて感動もした。その後、小中監督がよみうりテレビと共同で手がけたテレビドラマ『夢を追いかけて』とカップリングでDVDが2002年に発売された(当然、筆者も持っている)が、現在は廃盤で、観るのが困難なのが何とも残念でならない。
高校生の昭雄(神田)が交通事故に遭ってから、夢の中に出てくる寂しげな表情の少女のことが気になっていた。ある日、電車に乗っていた昭雄は夢の中に出てきた少女・理沙(有森)と新宿駅で遭遇し、何かに導かれるように理沙のいる平行世界(パラレルワールド)に行く。その世界で昭雄は交通事故で亡くなったことになっていて、周囲の人々は戸惑いを見せる。そして、昭雄はその世界での昭雄が病気で入院している理沙と約束したシリウス流星群を見るために、病院を抜け出すというのが大まかな物語の流れだ。当時、現在ほどSFXやCGなどは発達していないので、小中監督ほか、スタッフたちはさまざまなアイデアを駆使して特撮場面を作り出し、かつてNHKで放送されていた『少年ドラマシリーズ』のようなSFファンタジーを描出す。16ミリフィルムの質感、手作りの感覚、映画に対する情熱が作品から伝わってきて、モノクロとカラーの使い分け、鮮やかなラストシーンまで、小中監督は後に開花する才能を十二分に発揮し、商業映画デビュー作ながら、現在も語り継がれる作品を生み出した。現在はジャズピアニストとして活躍する木住野佳子が手がけたテーマ曲は、シンプルなピアノ演奏で、そのメロディアスな旋律が耳に残るほどに印象深い。
そして、オリジナル版から35年後、鈴鹿央士と秋田汐梨共演で、小中監督自身がふたたび手がけたセルフリメーク版も作られた。筆者はコロナ禍真っただ中で劇場公開を逃してしまい、実はまだ観られていない。オリジナル版でヒロインを演じた有森が、今回のヒロイン・秋田の母親役で出演しているという。小中監督がどんなふうにオリジナル版を基にどうアレンジし、リメークしたのかが気になっている。現在、ソフトは発売されておらず、楽天TVやAmazonプライムで観られるようだ。オリジナル版が大好きだからこそ、監督の真意をぜひ作品から読み取ってみたい。その後、今度はセルフリメークの雑感を書いてみたいと思う。
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