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「ほとけの国の美術」府中市美術館(2024.3.9 - 5.6)

仏教についてはほぼ何も知識がないので基本的に絵画を観る眼で鑑賞。
以下の2作品を観られたのが大収穫だった。

⚫︎《地獄極楽図》
金沢市・昭円寺
計18幅 江戸時代後期

⚫︎《八相涅槃図》
名古屋市・西来寺

特に前者の一連の作品はすごい。
「地獄に落ちる」という表現のとおり、視線は必然的に画面上から下へ誘導される構図。

まず閻魔庁までの6幅の地獄(天道、人道×2、阿修羅道、畜生道、餓鬼道)はつづらおりの坂を降るように徐々に下っていく。
ただ赤い不穏な色などだが空が見えて、まだ開放性はある。

次に等活、黒縄、衆合地獄になると縦長画面の上から数十発のピンボールと雷を直線的に同時に落とすような狂騒的構図となる。

さらに叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、阿鼻地獄となるとそれらにカーブも加わり天から地への逆火災旋風のように描かれている。
朱、黒、白、差し色に緑の色彩のメリハリもカッコ良い。

一方で浄土を描いた4幅は縦三〜四層構造になっており、明らかに視線が画面下からじわじわ緩やかに上へ昇っていくように誘導される。

人物、植物、建物など個々のサイズが小さく折り重なりも少ないため、絵画空間の奥行きも非常に深く広大に感じることができる。
地獄は「密」なのだ。

写真も存在しなかった時代の市井の人々が山門をくぐり寺院という「装置」内に入り薄暗い照明で地獄極楽絵画群と対面する体験はどのようなものだったか、視覚メディアが天井知らずに更新され続けている現代人には想像ができない。

上記の他にも企画展に良い絵画が多く、余韻を残したくて常設展はスルー(初)。
会期前半を見逃したのが悔やまれる。

《地獄極楽図》
金沢市・昭円寺
(フライヤーより)
土佐行広
《二十五菩薩来迎図》
京都市・二尊院
(フライヤーより)
フライヤー表

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