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ぽんぽんぺいんぺいん

pom-pon pain[名] <pάm pɑn péɪn>
1.腹痛 痛すぎて語彙がなくなっている場合に用いられる。

NEW WORLD Marcy Dictionaryより

休みを満喫するのが下手すぎる。
毎日仕事に忙殺されているから、ぽんと時間が空いた時に何をしたら良いか分からない。時間が空いているのを見越して何か予定を立てるということができない。それに、何にしてもその日暮らしをしまくっているから、先を見通した行動をするというのが本当に下手くそなのだ。かと言ってその場で思いついて行動するというのも上手くいくときとそうでないときがある。何なん。

というわけで今回のゴールデンウィーク前半は割と無意に過ごしてしまった。しかしそこには致し方ない事情もあった。

①4月26日夕方 予定が飛ぶ
友人の家族と友人の実家である砂川に遊びに行こうと言われていたのだが、家族が次の連休のときだと勘違いしていたことが金曜日になって分かった。車を出すのは自分だったのでかなり拍子抜けした。友人は僕の分まで怒っていた。話し合いをしなおし、次の連休の間に行くことに落ち着く。友人がすごく怒っていたので、自分は腹を立てるような隙がなかったが悶々とはしていた。

②4月26日夜 人生最大級の腹痛に見舞われる
友人とそんなことを話しつつ、夕飯を一緒に家で食べた。友人が料理上手で、給料日明けはいつもデカい肉を買ってきて調理してもらって食べている。そして酒を飲みながら、地上波かサブスクで何かを観るというのが通例だ。

今回も例に漏れず同じように過ごしていたところ、1/4ほど食べ進めたところで腹が痛くなり始める。少し室内が肌寒かったのと、冷えたアルコールを一気に飲みすぎたためであろうと考えたが、我慢できなくなる。用も足したが、それでも収まらず立ち上がれなくなり、声を出さずにはいられなくなった。痛みと吐き気に見舞われ、仕舞いには戻してしまった。今まで大病も大怪我もしたことはないので比較対象も少ないが、人生で一番の痛みだった。盲腸か、それとも肉に当たったか、胃に穴でも空いたか思いをめぐらせてみたが、痛みが思考の九割超を締め、何も思いつかなかった。ただ声を出して息を深く吸い痛みを紛らわせる他なかった。

痛い痛いと連呼しのたうち回る俺を見て、友人が相談ダイヤルに電話し、開いている夜間救急を聞き、一緒に受診してくれる運びとなった。なお、人生初の夜間救急である。お金あったかな、と過ぎるがそれどころではなかった。

でもこうして助けてくれる人がいて、一人じゃなくてよかったと心から思ったし、めっちゃ言葉にして伝えた。こういうときに一緒になって慌てふためかない友人は流石である。本人が大怪我して母親の方が慌てて「どうするの!?」と聞かれただけある。肝が据わっている。

迎えに来たタクシー運転手は(後から分かったことだが)、救急病院の名前がオシャレだったためマンションだと思っていたようだった。後部座席で土気色になっている俺のことなど気にせず運転手はガンガン飛ばすもんだから、車体が揺れるたびにはらわたをかき混ぜられているような気分になった。色んなところに掴まったり体勢を変えたりして何とか辛くない状態を探し、おかしなことにならずに何とか病院へ辿り着く。

運転手が静かに明かりを灯す夜間救急病院のビルを見て驚き、「救急病院だったんですか。大丈夫ですか。」と友人に尋ねる。「いえ、彼の方です。」「はい、僕が。ありがとうございました。」そう答えてよぼよぼと降りていく俺を見て運転手は少しは不憫に思ってくれただろうか。ドアが閉められる前にお大事に〜と聞こえた。

病院に着く頃には少し腹痛は治まっていたが、友人が問診票を書いてくれている間にまた痛みの波が押し寄せ、記入台の横で立てなくなっているとおじいさんのスタッフが「奥さん、こっちおいで、座ってていいですから。」と待合の椅子を案内してくれた。俺は自分の身体性は女性ではないと否定する暇がなかった。友人も大柄なので隣にいるとそう見えたのかもしれない。俺の返事の声が低くておじいさんは焦ったかもしれない。俺はさっきから色んな人を驚かせている。椅子の上でうずくまりながら隣の友人に感謝した。

少し待っていると背丈の小さいころころとした看護師がやって来て、コロナに罹っている人が近くにいないか、数日以内に発熱していないかなど聞いてきた。手首に巻く小さな血圧計やら体温計やらを俺に付けながら、他にも生ものを食べてないかなど質問された。どうしたもんだかね、みたいな雰囲気を醸し出されたが、あなた方が分からないなら俺にだって分からないよ、分からなくてもよいから何とかしてください、という雰囲気を負けじと醸し出した。

待ち時間がかなりかかるが良いか聞かれて仕方なく了承する。顔を少し上げると中待合の前に小さな小さな待ち時間の書かれたプレートがあり、無常にも「1時間待ち」と告げていた。ここまで来たらもうどうにでもなれ、俺は考えるのをやめた。ただただ、友人に申し訳なかった。

俺の前の方に、青いアウターを着た女性が後から座っていた。先ほどと同じ看護師がほぼ同じように問診をしている。彼女は焼肉を食べた後から下腹部が痛くナンダカンダと言っていた。看護師はまたどうしたもんだかね、という雰囲気を出していた。大丈夫なのかここは。そういう仕事がAIに奪われていくんじゃないのかなど人にあんまり言ってはいけない思考が頭をよぎった。

友人は、何ともないそうだった。違う肉切れだったが同じフライパンで焼いているし同じ賞味期限のものを食べているのに大丈夫なのだ。ということは食あたりではないだろうね。味だって美味しかった。特段腹を元々下していたとか体調がおかしかったというのもない。となるとストレスか。ストレスに関しては思い当たる節しかない。この4月は、今までで一番忙しく、気苦労が絶えない。同じ部署の他の職員も体調を崩しているし休んだ人もいた。俺だけが何とか勤務に穴を開けずにここまで来ていた。胃に穴が空いていたって不思議はない。空いたことないから分からないけれど。

どれくらい経ったか分からないなぁと思い始めた頃やっと診察に呼ばれた。触診や問診をされ、何だろねえ、胃腸炎かな、注射打とうか!と言われ何だかよく分からないがとにかくヨシ!と思い承諾した。誰も確かなことは分からないんだここでは。医者すらも。

診察室から戻り、注射打たれるらしい、と友人に告げたら訝しげな顔をしていた。こちらの意識も割と朦朧としていたが注射と言ったことは確かだったのでそこは自信をもって伝えさせてもらった。絶対注射じゃない、点滴だろうと俺たちは互いに思っていた。思っただけで口にはしなかった。

また呼ばれて今度は処置室に向かうとやはり点滴だった。先ほどとは別の看護師に名前の確認をされ、ルート取って(なんか少し手こずっていた)15分くらいですねーと言われ点滴を始められる。この時にはすでに腹が痛いのもだいぶ治まっていたが痛みに耐えていた身体は疲れ、かなり眠くなっていた。気が付くと少し寝ていた。

処置が終わり戻ると友人に40分くらいかかっていたね、と言われてプチ浦島太郎になる。点滴の前後の色々なところに時間がかかっていたのだろうか。寝ていた俺には知る由はない。

会計の時にカードを使えるかを職員に聞いたら目を合わせず「現金のみでお願いしております。」と言われた。急病人が集まる場所においてはいささか冷たい気はしたが、腹痛はもうかなり治っていたので許した。腹を立てても仕方ない。腹には今、別の用事がある。

帰りはその辺にいた野生のタクシーを捕まえて帰宅した。痛みは治まり、軽く寝たため目も覚めていて、こんなこと絶対言っちゃダメだと思って言わなかったが出すもん出したのでお腹が空いていた。でも途中で夕飯をストップされた元気な彼の方がお腹空いてるし眠いかもしれない。病院を出る頃には三時前になっていた。

翌日、空腹で目が覚めた。寝床を貸した友人が起きてきて、カップヌードルを食べている俺を見て目を白黒させていた。何かあったらと思って酒も飲まずに更に一日待ってくれていたが、結局その後ずっと元気であった。気苦労をかけて本当にすまなかった。友人が呼んでくれたタクシー代はちゃんと払った。

結局そういう事情もあり、元々の予定もない、あってもダメだったかもしれない、新たに予定も入れられない、ということでGW前半はあえなく終了していった。納得いかなくて最終日にマックと書店と100均を回って何かを成し遂げたことにした。100均では、お薬手帳や診察券を入れるためのジッパー付きのケースを買った。この前薬局の前で診察券をばら撒いて拾い集めたつもりが1枚薬局の人に拾われていたからだ。恥ずかしすぎ。

えー、現在GWの中間の平日深夜。次の連休は一応後輩のライブに行くのと、延期になった砂川訪問がある。謝罪の意を込めて温泉宿を取ってくれたらしい。ちゃんと遊んでちゃんと休みたい。仕事激忙しなので、心身ともにちゃんと休まねば。生活のために仕事をしているつもりなのに、仕事のために生活を整えている。でも自分の部署は誰も休めないような状況なので、致し方ない。同部署の人たちはいい人たちなので、休んで迷惑をかけたくないというのもある。

みなさんも楽しく過ごしてください。来る5月病、乗り切ろうね一緒に。

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