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コンプレッサーの楽しさ

コンプレッサーはベーシストにとっての沼エフェクターの一つ。どれも同じように感じる人もいるかもしれないが、私個人の楽しみ方を紹介していこうかと思う。特に比較してどれがいいか選ぶ際に気をつけたい点について書いていく。

◇コンプ選びのポイント

設定変更がどこまでできるか

圧縮時にハイとローのロールオフはあるか

トーンマジックがあるか

ノイズの有無

この4点を私は気をつけて確認している。その詳細を順番に話していこうと思う。

○設定変更がどこまでできるか

一般的なコンプレッサーの機能として

レシオ、スレッショルド、ゲイン、アタック、リリース、サイドチェーンのハイパス、ニー、ミックス、メイクアップゲイン等がある。この中のコンプとして私が気をつけているクリティカルなポイントについて話していく。

レシオについてはどれだけスレッショルドを超えた信号を圧縮するかを設定するツマミだが、何をしたいかによってどれだけ幅があるといいかが変わる。信号を軽く整えてコンプのミドルあたりにある癖をもとに音作りを考えてる人には4:1くらいあれば十分だと考えている。そういう癖のあるコンプについては後程紹介していくが、私のいう癖は劣化についてではなく+αについての癖である。そういうコンプレッサーであればコンプ自体の機能より秘密のスパイスとしての味を優先して考えられる。次にコンプとしてピークをしっかり抑えた機能を活用させたい場合は1:16等の高い圧縮値のついたコンプを使用したい。そもそも圧縮できるとなんなのか。単純にいうとアンプやその他機器をオーバーロードして歪ませてしまうピッキングした際の初めのアタックを抑えることができるため全体の音量を上げられる。そのためコンプを使う前に小さく弱かった音を大きくハッキリした音にできる。ただ、圧縮を強くすると色々な副作用が出てくる。

アタック、リリースについてはコンプのかかるタイミングと解除されるタイミングを調整できる。早いパッセージやパーカッシブなプレイをして奥に引っ込まない主張したプレイをしたい場合にはアタックを遅くリリースを早くすることをお勧めする。そうするとピッキング初めのアタック音を生かしたままそれ以降にコンプがかかった状態にしてくれ、次の音が始まる前にコンプを解除し、また次のアタックを生かしたコンプがと一音一音強調した音作りができる。次にアタック早めリリース遅めにすると、全体を満遍なくコンプ処理することになりルート弾きやその他縁の下で支えるプレーに最適になる。ピッキング初めのアタック音も潰し、それ以降の音に関しても設定によっては次の音も含めて長くコンプをかけ続けるため、目立ったアタックを無くしてくれる。基本的にはこの二つの設定組み合わせがコンプの鍵を握ると思う。例えばOriginEffectsのCali76CompactBassに関してはアタック早リリース遅とアタック遅リリース早の設定バランスをツマミで触れるようになっている。ベースではこの二つの組み合わせが特に効果的なのでそうなっているのだろう。アタックが遅くてリリースが極端に長いとコンプが次の音までかかり続けるアタックを遅くする意味がなくなり無駄な設定になってしまったりするので、わかりやすくまとめられたこのペダルは親切設計だなぁと感心する。

サイドチェーンのハイパスとミックスツマミについてはEmpressやOriginEffects Cali76 CompactBassで使用できる機能として有名である。サイドチェーンのハイパスは出音自体には影響を与えず(ハイパスによりローが削れることはない)に、ローへのコンプのかかり具合を調整するつまみとなる。コンプで強い圧縮をかけるとベースではローへの違和感が生じることがある。やってみるとわかるが、コンプによっては強い圧縮で5弦ベース等のローの太さが失われてしまう。これをサイドチェーンで回避する。ミックスに関しては根本的な理屈は違うが失われたローやコンプによる不自然なハイのロールオフ等を緩和するサイドチェーンと近い働きがある。単純にコンプサウンドに原音を混ぜるのでコンプとしては薄く感じるが強くかけても違和感を減らすことができる。それぞれ好みなのでよく吟味してみるといい。むしろ、これらのつまみがなくてもローやハイを殺さずにうまくバランスを取っているコンプもある。

ニーに関して。コレがペダルエフェクターにつまみとしてついていることは比較的少ないと思う。Effectrode LA-1A,PC-2A等にみられる。スレッショルド近辺の信号レベルの圧縮をどう扱うのかを変更するのがかのつまみ。細かいところは他のサイトの説明を読んでもらいたい。圧縮による違和感への微調整といった感じである。

個人のプレーにマッチさせるために必要な機能がそのコンプに備わっているかを考える必要がある。設定が簡単だからとワンノブやツーノブのものを選ぶと後ほど後悔することもあるので気をつけたい。

○圧縮時のハイとローのロールオフ

コレは1番気をつけたいポイント。コンプで圧縮していい音を作りたいはずなのに、このロールオフがひどいとダサいショボイ音になる。比較的古いペダルや安価なものに多い。最近ではこのロールオフ対策にミックスやサイドチェーン、トレブルブーストが追加されているコンプが出ている。またこのロールオフは圧縮が強いほど生じやすいので耳やメーターで出音を確認しながら慎重に設定したい。

○トーンマジックはあるか

コレがめちゃくちゃ面白い。コンプ沼の醍醐味である。一部のコンプが持つ、音に面白さを加えてくれる癖のことである。有名どころでいうとOrigineffects Cali76シリーズ、MARKBASS のチューブコンプ、Effectrode, EBSマルコン、Diamond BCP-1あたりである。例えば世界で多くのベーシストに賞賛を受けているKeeley のコンプレッサーは実際かなり優秀だか、このトーンマジックを感じることはできないといっても良いだろう。このトーンマジックはもう少し詳しく話すと根本的なサウンドはもちろんよく、そこにミドルの豊かさが加わったり、ローミッドあたりが分厚くなったり、ハイミッドあたりに艶が生まれたりと微妙ながらスパイスが加えられ一部のマニアに賞賛されている音質変化のことである。それが回路によるもの、チューブによるもの、トランスによるもの様々である。この音質変化を嫌う人もいれば好きな人もいる。唐揚げにレモンをかけるか否か、納豆にカラシを入れるか否かと同じで自由である。このトーンマジックはコンプについてかなり掘り下げて音の聞き分けをしたりするとわかる本当に微妙な変化である。で、この変化は時に他のペダルとの組み合わせでも面白みを発揮してくれることがある。歪みペダルにこのトーンマジックのあるコンプの癖を入力すると歪み具合や音圧感へ変化が生まれる。リバーブに入力するとより広がりのある温かな空間が再現される等効果は様々である。また、あえてこのトーンマジックを生むために少量の歪みを混ぜるコンプや独特なトーンコントロールを追加しているコンプもある。そこまで拘るなんて馬鹿みたい。音色変化させたければプリアンプでも使えば良いという声もあると思います。ごもっともです。ただ、そこに魅力を感じる人が沢山いるのも事実で、芸術の一環としてそういったポイントを楽しむのもまた乙なのである。

○ノイズの有無

最近のペダルはかなりローノイズであるが、未だにペダル自体からのノイズが聞こえるコンプはある。このノイズにより稀にコンプをオンした際にハイが伸びているように感じることがある。コレも手段としてありなのかも知らないが、度合いによる。ラインでの録音を考えているのであれば、このタイプのノイズは異常に目立つ。購入前にしっかり確認しておきたいポイントである。私の所持しているコンプの中で最も騒がしいのがCollaboration Devices のコンプレッサーで、オンにするとメイクアップゲインのブースト量に比例してノイズが大きくなる。コレは入力がなくてもこのペダルから出てきてしまうノイズである。このペダルは希少価値は高いが、私からはこのノイズの点で実用性に欠けるためあまりお勧めしない。逆に1番静かなのがEffectrode のLA-1Aというコンプリミッターで、真空管をエフェクター史上初と言われる独特の回路を使用している。コレが本当に静かでびっくりする。他の低ノイズと言われてるペダルコンプとは比較にならないレベルで低ノイズである。やはり、うるさいより静かなペダルの方がよく、外来ノイズをより拡大してしまいやすいコンプに関してはペダルからのオリジナルのノイズにも気をつけたいですね。

◇後書き

ハリケーンで電車が止まって駅で電車待ってる最中に書いてたんですが、好きなことを書いてるとあっという間ですね。3時間電車待ちましたが、凄まじい尿意以外全く苦痛を感じませんでした。笑

コンプレッサーって1番地味なんですが、地味の中に少しでも他と差異があるとそこにハマってしまうんですよね。時計を集める人と同じ心理なのかと思います。全て機能としては時間を表示させるのみですが、時間を確認する時に好きなデザインだったり、ゼンマイで動く歯車の音だったりがその所有者に幸福感を与えてくれます。コンプのトーンマジックもその分類の微々たる差ですが、そのマジックは他の人にも幸福感を共有できる可能性を持ったより崇高なものだと信じています。アーメン。

以上。









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