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キネマの神様

昨日、映画「キネマの神様」を見に行きました。

沢田研二さんと菅田将暉さんが主演。公開前からあらゆるニュースになっていた話題作だけに説明不要かとも思いますが、同じ人物の老年期と若い頃をそれぞれが演じてらっしゃいます。

これも言わずもがなでしょうが、本来、沢田研二さんが演じる役は志村けんさんが演じる予定でした。志村さんの映画初主演作。それも非常に大きな話題になっていましたが、昨年3月、思いもよらぬ形で志村さんが旅立たれてしまいました。

志村さんを想定して作られた台本だともうかがっていたので、沢田研二さんに役者が変わり、そこがどんな味になるのか。

産地、サイズ、加工とも至高の品と呼ぶにふさわしい干しアワビ。それをメイン食材にした「佛跳牆」。干しアワビの旨味、風合いを最大限引き立たせ、最高の形でスープに溶け込ませる。そのためのスペシャルチームとして他の具材も厳選し、味の組み立てを考え抜いた。

しかし、そこで干しアワビが入荷できないとなってしまった。佛跳牆を作ることはもう決まっている。そこで、長期間熟成させた最高の金華ハムを持ってきた。この食材も至高であることは間違いない。

しかし、用意されていたのは干しアワビを最高の佛跳牆に仕立てるための設え。突如入荷された金華ハムをどう融合させるのか。

溶け込ませるのか、別の味わいを目指すのか。そんな興味に導かれ、梅田ブルク7に向かいました。

結論から綴ります。

とても美味しくいただきました。

干しアワビ用の設えが見えたような気がする箇所もあり、干しアワビが入っていたらどんんな味になっていたのだろう。そう思わせる部分も含め、幅広く心が動かされました。

そして、最終的には医食同源の極みのような佛跳牆だけに、食べる前よりも胃は軽やかになり、体は内側から温まる。そんな感覚を得ました。

干しアワビであろうが、金華ハムであろうが、結果、良い味が出ていた。

これは一見、誉め言葉のように見えて、実はいろいろな冒涜を内包した表現だとも思うのですが、でも、今回ばかりは誉め言葉として扱ってみるかとも思いました。

そして、改めて菅田将暉さんという俳優に、他に替えのない魅力を感じました。

繊細でありながら剛直。流麗でありながら泥臭い。あらゆる二律背反のアソートを具現化し、それが盛り付けられている皿が絶えることのない温もりを発している。

「そら、売れるわ」

当たり前のことをもう一回噛みしめる2時間でもありました。

食材自体の力、取り合わせの妙、そして、調理。その重要性を今一度認識しました。

ときに、先週のABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」。

芸能コーナー「中西正男の業界しょーみの話」で、近い身内の裏切りという話になった時に、予想通りというか、「そら、そうなるわ」というか、浦川泰幸アナウンサーがありったけの感情を込めて自論を展開されました。

身内に敵がいるのではない。

身内と思っているのは自分だけ。

あらゆる恐ろしさをスムージーのように混ぜ合わせ言葉に練り込んでいく。恐らく、その瞬間にラジオから聞こえていた声は「ウルトラQ」のオープニングのようにねじ曲がりながら混ざっていくものだったと思います。

そんな磁場、僕は大好きでもっと聞いていたかったのですが、妙なイタズラ心もむくっと起き上がり「ゲストの稲川淳二さんです」と中和剤を放り込んだりしてみました。

そこからまた話が芸能に戻りつつ、また浦川アナウンサーが「身内と思っているところにこそ…」と先ほどのモードに突入しました。

そこですかさず、パートナーの塩田えみさんがその前のやり取りを活用して切り込みました。

塩田「も~、怖い!稲川さ~ん!」

浦川「稲川さんじゃないよ。浦川さんですから、私は」

こちらの流れを使ってくれた塩田さん。それを受けてくれた浦川さん。でも、ここで止まっては普通の愉快なラジオ止まり。もう一つ行かないとと思い、踏み出しました。

中西「新倉イワオさんではないですか?」

浦川「私、心霊現象研究家ではございませんから。人間関係は研究してまいりましたが」

もう一つ行かないとと僕が考えた時間が恐らく0.2秒くらい。発射された新倉イワオを、まさに間髪入れず正確に迎撃する浦川アナウンサー。自らのやりとりながら、そこは実に痛快でradikoで何回も何回も聞き直していました。

食材自体の力。取り合わせの妙。そして、調理。我田引水ではないですが、映画を見て、今一度、その味を反芻しています。

いろいろなエラそうさが含まれている表現になるかもしれませんが、素人ながら、ラジオに出してもらってもいる人間として、僕に得意技があるならば、今綴ったような時空のズレや歪みを見出し、そこをいやらしく指摘するということだとも思っています。

ただ、ここでもお知らせしている8月27日の僕の有料配信イベント「ナカのナカまでふか〜く愛して」は、出演者が僕一人です。会話のひずみも生まれにくいし、何かのアラも探しにくい。

モハメド・アリと戦った時のアントニオ猪木ではないですが、主武器を封じられてどう出るのか。

自分が選手でありながら、観客の自分もいる。どんな試合になるものなのか。新たな自分が顔を出すのか。

そして、何より1000円も払っていただいたお客さまが見てくださっている場です。それ以上の値打ちだけはお渡ししなければと改めて思ってもいます。

モハメド・アリばりに思考がチョウのように舞い、最後はハチのように普通の巣に戻る46歳。

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