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ファクトリセット

山に登る者は
そこに山があるからだと言う
山が無かったらどうするんだ
という者もあるが
それならば彼らは
山を一から作るのだろう
自分の足で登ったこともない人間が
他人の手で作られた高層階から
街の灯りを見下ろして
言うことでもないだろう


あの雑草を見なさい
踏まれても踏まれても
強く生きている
ああいう風になりなさい
と教えてくれる人がいる
踏まれていることに
気付いているあなたは
踏まれないように
知恵出しをしようとは思わないのだろうか
ほとんどは踏まれるがままに踏まれ
踏まれ強い草だけが目立っているだけだ
誰だってできればレンガに囲まれて
肥沃な土で生きていたいし
それは決して一部の特権階級の話では
ないと思うのだが


あの人は天狗になってるのよ
とヒソヒソ話が聞こえる
天狗の気持ちを
考えたことがあるのだろうか
鼻が長いことの恥じらいで
赤くなっているのだとか
たとえ真実がそうでなかったとしても
そうではないと言い切れるほど
相手のことを思いやったことが
あるのだろうか
花粉症の季節は特に
花粉が付着する面積が多い鼻腔だと
同情したっていい
鼻が高いからといって
それが本心かどうかは
じっくり話してみなければ
分からなかったりするものだ


下ばっかり見ていないで
胸を張りなさいという
待て待て
今は強制猫背状態
たくさんのことが重なって
前面の重力が後方よりきついのだ
それに
下を歩く虫達が力強く
地面を押し返しているのを見続ければ
そのうち背筋は伸びてくる
あなたに言われる筋合いは
これっぽっちもないのだ


遠くの親戚より
近くの他人の方が
何かと助けになるという
そりゃそうだ
物理的な距離もそうだし
そもそも親戚だからといって
助けになる存在かどうかは
各々のファミリーにおいて
甚だ均一性があるとは思えない
でも近くの他人が私を助ける理由が
果たしてあるのだろうか
世間はギブとテイク
その損益分岐点は分かりづらい
あと遠くの親戚を思いやれない
近くの他人とは
なんとなく親しくなれない気がする


一日中あれこれ考えるのは
体に毒だという
できれば私だってデトックスしたい
水平器は部屋のどこに置いたって
右か左が傾くし
いつ付いたのは分からない
カーテンの汚れからは
目を背けたい
オーブントースターのパン屑は堆積するし
今朝きれいに整えなかった掛け布団
あるいは毛布はいつになっても自立しない
飲んでいる以上に
ペットボトルの空がある気がするし
洗ったはずの茶碗には
一粒だけ無念の米がカピカピだ
あと
どのタイミングで
ヒートテックをルーティンから外すか
いいかげん誰か方針を決めてくれ



気にしないで
機嫌が悪いようで
通常運転
季節が変われば
ファクトも変わる
あなたには関係のないことだから
でも無関心はムカつくから
せめて気持ちばかりケーキでも買って
機嫌を取るようにしてくださいな
速攻で
今すぐに

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、