LIFE IS NOVEL #15

デート中の姉を尾行するなんて悪趣味な話はない。その自覚はあったが、今日ばかりはそんなことは言っていられない。姉の後ろをこっそりとついて行くと最寄駅に到着した。電車に乗るのかと考えていたが、近くのカフェに入っていった。僕は店から離れて、道路の向かい側にあるファストフード店で見守ることにした。姉は入り口近くに席を取って、入ってくる他の客をチラチラと都度目をやっていたので、気づかれないように配慮が必要だった。どうやら、あの店が待ち合わせ場所のようだった。

10分ほど待っていると男性が姉に声をかけ相席に座った。先ほど写真で見た男性なのは、離れた場所からでもわかった。
2人でしばらく会話を続けた後、店を出ていった。僕も急いでそれについて行く。姉の視界に入らない程度、かつ見失わない距離を保っていく。側から見たら、長身同士、スタイルが良いお似合いのカップルに見える。周りの人たちに比べても際立って見えた、おかげで尾行にしては離れてすぎていても、その姿を確認することができた。

電車に乗ること20分、街中を歩いて行き、スポーツ用品店に入っていった。店内を見て回りながら、シューズの試着をし始めた。
一緒にいる男は、一見すると普通の青年のようだった。いかにもスポーツをしている大学生に見える。姉にアドバイスをしているのだろう、話をしながら販売員と共にいくつかのシューズを姉に見せて、履かせていた。
姉はといえば、シューズを履き替えては、鏡の前でポーズをしてみたり、店内を歩いて、時々ジャンプをしたりと、動き回って履いた感触を確認していた。家とは違う姉の浮ついた感じに、見ているこっちが恥ずかしさを覚えた。

30分ほどすると、購入するものが決まったらしく、レジへと向かっていった。その後は同じビル内でいくつか店を回って行き、最後に最上階のレストランフロアへと移動していった。僕はどの店に入っていくか見届けると、次の観察する場所を探した。

姉たちは背もたれに高い仕切りのある席に座っていることを確認すると、場所さえ気を付ければ、同じ店内でも気づかれる危険は低いと考えた。見るとちょうどレジやトイレの動線から離れたところに席が空いていた。そこしかないと思い、僕も店内に入り、姉に悟られないよう席に着いた。

何を話しているかは聞こえないが、何かあればすぐに駆けつけることができる。このまま二人の食事が終わるのを待つことにした。
そう考えたとき、いつの間にか近くにいた女性に声をかけられた。

「こんにちは、シンドウさん。お待たせしてすみません。」

「…ああ、そろそろ来るころじゃないかと思ってたよ。そうぞ、立ってないで、早く座ったらどう?」

時間はちょうど12:00。昼と呼ぶには申し分なかった。

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