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LIFE IS NOVEL #19

「あなたもデートならそう言いなさいよ。」
「俺にも黙ってるなんて、水くさいな。」
「いや、違うよ。彼女とはそういうのじゃなくて…」

僕の方にちょっかいを出す二人に対して、どうごまかすべきか。
答えに詰まっていると、ようやく女は食事を中断した。
僕が困っている様子を見かねて、というわけでは、ないだろう。
むしろ僕が十分に困惑したことを確認できた、といった感じだった。

「はじめまして、私、カノウと言います。
お二人はタケヤスくんのお知り合いですか?」
「ええ、タケヤスの姉のアケミといいます。」
「まあ、お姉さまでしたか。
タケヤスくん、すぐに教えてくれればいいのに。」
さっきまでの僕に対しての冷たさはどこにいったのか、彼女は姉に対して人当たりのよさそうな笑みを浮かべながら、しゃべりはじめた。

「姉さん、彼女はね…」僕はなんとかこの場を切り抜けようと、間に割って入った。しかしそれを女の声が上書きしてきた。

「私、タケヤスくんとお付き合いをさせていただいてるんです。」
自称「カノウ」さんは、とんでもないことを言い出して、この状況をかき回し始めた。

「は?」と僕が彼女の言葉に驚いていると、それ以上に驚いたようすだったのが、ワタナベだった。
「なに?ケンコー、彼女いたの?なにも言ってくれなかったじゃん。」

「はい、タケヤスくんからは、伝えづらかったと思います。親しい方には特に。
私の方がかなり年上ですし。
ね、タケヤスくん?」
自称カノウさんは僕の方を見てきた。
「なに言ってるんだ。君とはそんな関係じゃなくて…」

そこへタイミングを見計らったかのように、姉の同伴者がやってきた。弁解の時間をまったく与えられないまま、姉から男を紹介され、5人でおのおの自己紹介をした。
「食事も来たみたいだし。そろそろ席に戻るね。
カノウさん、弟をよろしくおねがいします。」
そう言い残して、姉と男は元のボックス席の方へと帰っていった。
残されたワタナベに対してようやく僕は尋ねることができた。
「お前、ここでバイトしてたんだな…」
「ああ、今日はシフト入っていなかったんだけと、急に人が足りないって連絡来てね。
今来たところだ。」
「そうか…」
「ってわけで、他のスタッフの目もあるから、そろそろ行くよ。
ケンコー、あとで詳しく話聞かせろよ。
カノウさんもごゆっくりお食事召し上がってください。」
なれた接客であいさつすると、他の客のテーブルへに向かっていった。

「これが、次の手ってわけか。」
姉とワタナベが去っていった後、食事を再開した女に向けて僕は尋ねた。
「さあ、なんのことでしょう。たまたまじゃないですか?
世の中狭いですからね。あなたのお姉さんが入った店で、あなたのご友人が働いているなんてこと、よくある偶然ですよ偶然。」

偶然がそう簡単に重なってたまるか、とは思ったが、
もう口に出す気にもならなかった。

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