見出し画像

LIFE IS NOVEL #16

「…驚かないんですね。シンドウさん。」
「…まあね。場所を指定してこなかった時点で、時間が来たらそちらの方からやって来ることは予想できた。僕の監視は続いているだろうし。
それとも、情報源はあいつなのかな?」
僕は、姉のデート相手を指差して言った。
「…あの男が君に連絡したのかな?」
「ええ、彼からも連絡は受けてます。
もちろん、他にも同僚が周りに待機しています。」
「今日もここにいる全員が、君たちの仲間か?
ずいぶんと手のかかることをする。」
休日のランチタイム、店の中は満席だった。フロアにはオーダーをとる店員が5人。一見しただけでは店内にイレギュラーはなかった。
目の前の女を除いては。

「そのあたりはご想像にお任せします。全部種明かししたら、面白くないですからね。
あ、注文していいですか?私、お昼まだなんですよ。すみませーん。」
そう言うと、店員を捕まえた。
「えーと、じゃあカルボナーラとサラダもセットでお願いします。
シンドウさんも何か召し上がりますか?」
「僕はいい。
何もオーダーしなくても、この店から追い出されるわけじゃなんだろう。」
「まあそうですね。じゃあ、以上でお願いします。」
店員は彼女の分だけ注文を取り、伝票を書いてテーブルに置いていった。

「さて、と、シンドウさん。昨夜ぶりですね。
またお会い出来て良かったです。」
「ああ、しかし今日もそんな格好でくるとは思わなかった。」
女は昨日とほとんど見た目が同じ、レディーススーツ姿だった。いかにも、仕事モードと言った感じだった。

「スーツ姿は、日曜のショピングモールでは目立って浮いて見える。」
「そうですか?気にしないでください。
それとも私の私服に興味があるのですか?」
「まあね。もしも動きにくい服だったら、こっちが反撃できる可能性が高くなるかな、と少し期待した。」
「私の同僚も似たようなことを言ってました。なんだかがっかりです。
しかし、昨日と比べて落ち着いてますね。何か心境に変化ありましたか?」
「大したことじゃない。君たちに対して、少し考えを改めただけだよ。
こっちが焦ってもしかたないだろうとね。
今日は冷静に話をしよう。」
「おお、意外です。あなたのことだから、姿をくらましたとしても、不思議じゃないと考えていたんです。どんな心境の変化なんでしょう?それとも、ウラベさんになったことでの変化でしょうか?」
「さあね。そんなことは僕にはわからないし、どうでもいいだろう。
それよりも、あれについての説明をしてくれないか?」
僕は、姉たちの席の方へ、再び指を指した。

「あれは、僕への脅しのつもりなのか。
あの男。昨日の店の店員だよな。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?