LIFE IS NOVEL #25

イグチカナエは僕のバイト先の同僚だった。同じ学校に通っているが、違う学部で一年先輩だったこともあり、構内で顔を合わせることはなかった。それでもバイト先では親しくさえてもらっているし、なにより僕にとっては特別な女性だった。
つまりは彼女に惚れていたのだ。

「…いや、僕じゃありません。送信元、わからないんですか? 」
「うん、知らないIDから。そうだよね、ウラベくんからだったら自分のIDから送るよね。」

イグチカナエに対する感情は、もちろん誰にも伝えてはいない。
そういうことを、簡単に口にできるような性格ではないから、まだワタナベにも相談していないくらいだ。

「でも、元気そうでよかった。事故にあったって聞いたから、心配してたよ。」
「心配かけてすみません。でも、大丈夫です。それに事故にあったの僕じゃありませんし。店長には連絡したんですけど、うまく伝わってませんね。」
「そうなんだ。あのひと大げさなところあるしね。」
「まあ仕方ないです。今週からは復帰しますよ。」
「うん、待ってるよ。あ、ちょっと待って。またメッセージ来たみたい。」

このタイミングを見計らってメッセージを送るということは、どこかから見ているのだろうか?それともどこかに隠しカメラや盗聴器でもあるのか、周りに気を配るが今立っている場所からはなにもわからなかった。
しかし、スマホに目をやった彼女の顔は驚きに変わっていた。
慌てた自分を隠すように、彼女は行った。
「ねえ、ウラベくん、ごめん。もう私行くね。」

その動揺ぶりに僕は不安を感じた。

「どうしたんですか?何か変なメッセージだったんですか?」
「大丈夫、ただのいたずらだよ。きっと。ウラベくんも気をつけてね。」
「待ってください。…僕にもそのメッセージ見せてもらえませんか?」

彼女は帰ろうとする足を止めて説得をした。しばらく悩み、彼女は言った。
「えっと、うん。わかった見せるよ。これなんだけど…」

彼女が持つ画面を見て、僕は心底嫌な気分になった。
そこには、いくつかの写真とメッセージが送られていた。

写真は僕とカノウが一緒にいるところだった。2回会っただけではあるが、
その全てといっていい場面。あの交差点、ファストフード店、レストラン、
合計、十数枚。

そしてその後にメッセージが続いていた。
《その男にだまされるな》《君が知っているウラベタケヤスはもういない》と。


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