LIFE IS NOVEL #13

「ただいま。」大きすぎず、小さすぎず、いつもどおりでダイニングいる母と姉に声をかけた。
「おかえりなさい。帰り遅いから心配したわよ。どう、大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫。ちょっと欠席中の課題があって時間をとられただけ。」
「そうなの?病み上がりなんだから、大目に見てくれても、ねえ。」
母は姉に賛同を求めた。姉はといえば、ソファーでくつろいでいた。
「えー?病院からは特に何も言われてないんでしょ。大丈夫よ。こいつ頑丈だから。」
「たしかに、病院なんて何年ぶりにいったのかわからないわね。」
「そうでもないだろ。高校のころ部活のケガとかでお世話になったことあっただろ。」
「それ打撲とか捻挫でしょ。それは骨の一本でも折った人のセリフ。」
僕をサイボーグか何かだとでも言うような言い回しだ。そんな会話を切り上げ、僕はダイニングを抜けて2階の自分の部屋へと向かった。

「タケヤス、ご飯食べるでしょ?」と母が言った。
「ああ、お願い。」と返事をする。簡単な相槌ひとつひとつに気を付けながら、部屋に入った。とりあえずベッドの上に、カバンと上着を投げ捨てて、息を整えた。

母も姉も普段と変わらない。父の帰りが遅いのも珍しいことではない。まだ大丈夫そうだ。僕はダイニングに戻り夕食にありつくことにした。

大盛りの夕食が前に並び、男子大学生の普段の食事量に改めて感心させらせた。が、少し食べたところで、食事が喉を通らないことに気がついた。どうやら自分が思っていたより、プレッシャーを感じてたようだ。あれしきの脅しに怯えるほどヤワではないはずだが、自覚がなくても、体が拒否反応を示しているかのようだった。
無理矢理、用意された分を胃に押し込んだ。
「ごちそうさま」と、食器を流しに持っていき、食洗機に入れた。そして、僕はトイレに駆け込んだ。全て吐き出してしまいたかった。

胃を空っぽにした後、自室に戻る。一息をついて蛍光灯をオンにしようとしたとき、スマホが震えた。
見知らぬ番号からショートメッセージが届いていた。

『ご自宅に無事到着されましたか?
明日のお昼にお伺いしますので、お時間空けておいてください』

『敵』は僕に気を休める時間を与えてはくれなかった。

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