「社会学の名著30」 竹内洋 を読んで

多岐にわたるテーマを包含する社会学から、特徴的な著作が紹介されているが、しかし、入門書として適している書籍群ではない。解説も専門用語を解説してから入ってはくれるが、それからの文章は決して理解しやすくはない。その中でも興味を引いたものを引用する。

 多くの人にとっては、いきなり原書は障害物が多すぎる。だとしたら、解説書や入門書で軽いトレーニングをつんでから、原書にすすむというのが順当であるとおもう。
竹内洋. 社会学の名著30 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.97-99). Kindle 版.

ユーモアとエスプリが効いた社会学の入門書として

ピーター・バーガー『社会学への招待』(原著刊行年一九六三)
竹内洋. 社会学の名著30 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.116-117). Kindle 版.

社会学者が多くの時間を活動して過ごすのは、自分にとっても社会の大部分の人々にとっても見なれたものであるような経験の世界である。(中略)それはまったく見知らぬものに出会う時の興奮ではなく、見慣れたものの意味が変容するのを知る時の興奮である。社会学の魅力は、今までの人生を通じて生き続けてきた世界を、社会学の視界によって新しい光の下で見直すことを可能にしてくれることにある。これが同時に意識を変容させるのである。この変容は、他の多くの学問分野で経験するものよりも、人間の存在にとって持つ意義が大きい。というのは、社会学による意識の変容がそれをこうむった個人の精神全体に及ばない、という事はほとんどありえないからである。

犯罪処罰は犯罪を抑止することよりも、怒りなどの感情共同体を構築することで社会的連帯感情を喚起させる儀礼として大きな意味がある。
竹内洋. 社会学の名著30 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.266-267). Kindle 版.

まさに以前読んだ「ミシェル・フーコー――近代を裏から読む 重田園江」の冒頭、つまり「監獄の誕生」の冒頭にある「ダミアンの刑」における観衆の心理と重なる。

 オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(原著刊行年一九三〇)
竹内洋. 社会学の名著30 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.862). Kindle 版.
人間社会は、貴族的である程度に応じて社会でありえ、貴族性を失えば、社会ではなくなってしまう、というオルテガの貴族主義的言明に抵抗がある者も、大衆は「喫茶店の会話から得られた結論を実社会に強制する」という一節などには、大いにリアリティを感じるであろう。ワイドショーのコメンテーターの紋切り型発言をなぞって社会問題や政治問題に一家言をもち、しゃしゃりでる大衆を想起させるに十分だからである。

竹内洋. 社会学の名著30 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.920-924). Kindle 版.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?