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中長期的な展望が見える予算を!

<子供の減少はコロナで加速>
 
厚労省が発表した2022年1月から6月の出生数は、前年同期比5%減の38.4万人で初めて40万人を割り込みました。少子化が進んでいることに加えコロナの感染拡大に伴い、婚姻数の減少や妊娠控えが響いています。 
 
国立社会保障・人口問題研究所が2022/9/9に公表した2021年の出生動向基本調査によると、18歳から34歳の未婚女性が希望する子供の人数は平均1.79人と初めて2人を下回りました。未婚女性の希望子供人数は6年前の前回調査では2.02人、減少幅は0.23人で過去最大、男性は1.82人で前回比で0.09人減りました。夫婦が理想とする子供の人数は0.07人減の2.25人で2002年調査から減少が続きます。夫婦が実際に予定している子供の数は2.01人で横ばいでした。夫婦の最終的な子ども数を示す完結出生子供数は1.90人と過去最低を更新しました。 
子供を持たない理由は『子育てや教育にお金がかかりすぎる』が52%、『高齢で産むのが嫌』が40%となります。18歳から34歳の未婚者のうち『いずれ結婚するつもり』の人の割合は男性が81%で前回調査比4.3ポイント減、女性は84.3%で5ポイント減でした。男女とも8割を超えましたが、恋人がいるのは男性で21%、女性で27%です。
妻が大卒以上の夫婦の子供の数が1.74人(前回調査比1.66人)と19年ぶりに上昇しました。
 
<家事、育児は未だに女性偏重> 
 
総務省が2022/8/31に発表した2021年の社会生活基本調査によると、6歳未満の子供がいる世帯で夫の家事や育児などの時間が、前回の2016年調査に比べて31分増えて1時間54分となり、1976年の調査開始以来最も長くなりました。妻は6分減り7時間28分でした。夫の家事や育児の時間は未だ妻の1/4です。
 
総務省の調査によると、女性の労働力人口は2021年で2679万人、労働参加率は73%と10年で約10ポイント上がりました。ただし女性の平均月間就業時間は、男性より40時間ほど短い状況です。男性と同じく月120時間から180時間働く人が全体の4割強を占める一方、月120時間以下の人が3割以上で、パートや派遣など非正規雇用で働く人の割合が約5割と高い状況です。国際労働機関によると日本の労働時間の男女差はG7で最も大きく、週平均の差は10時間を超えており、アメリカの2倍、スウェーデンの3倍です。 
 
2022年5月時点で子育て女性でテレワークを使う人の労働時間は、一週あたり平均33時間、2020年3月から約9時間伸び、使わない人より4時間長くなりました。NIRA総研によると、女性のテレワーク利用率は1割程度と男性の約半分です。非正規雇用でテレワークを認められなかったり飲食や福祉の現場で働いていたりと、女性は男性よりテレワークを利用できない環境にいる人が多いためです。 
パーソルキャリアの『doda』の総登録者数を見ると、特に子育て世代が多い30代女性で伸びが目立ちます。 
 
<高齢化を支える医療、介護人材は不足>
 
厚労省は2022/9/16、2022年の厚生労働白書を公表しました。医療や介護など福祉関連の人材は2040年に1070万人必要に対して確保が974万人で差額96万人不足すると推計し、人材確保が社会保障の最重要課題と強調しました。必要者数は全就業者数の2割近くにのぼります。
医師業務の一部を看護師等に委託するタスクシフトや、職種を超え仕事を分担するタスクシェア、ITの活用を提起しました。タスクシフト可能な業務内容として、検査手順や入院の説明、服薬指導、一部の採血診断書の代行入力を上げました。オンライン診療による遠隔診療の推進も提起しました 
医療・福祉従事者の地域偏在解消も課題に掲げました。医師数は毎年約4000人弱増加し、2032年には医師数が約36万人で受給の均衡がとれると予想します。一方、女性の就業率は30代後半で最低となる『M字カーブ』が未だ残っている状況です。 
 
<第2次補正予算案は落第点>
 
政府が2022年10月末に決定した2022年度第2次補正予算案は29兆円規模となりますが、電気・都市ガス料金の補助に3.1兆円、ガソリン価格の抑制に3兆円等ととなり、上記の少子高齢化、医療・介護に関する対策はほとんど入っておりません。
石油、LNG価格上昇によるガソリン価格、電気、ガス料金の上昇が家計に与えるダメージを緩和させるための措置というのは分かるのですが、あくまで目先のことにこだわっており、根本的な原因にはまったく対処できていません。しかもこの29兆円のうち約23兆円が国債という借金に頼ったものであり、財源なしの大盤振る舞いです。先日イギリスでトラス政権が総辞職に追い込まれたのを見ていないのでしょうか。今回の第2次補正予算は、将来に不安を残すだけの落第点の予算となってしまいました。 
 
<中長期的な展望が必要>
 
私見ですが今の日本に必要なのは、目先の対処ではなく『将来日本は希望が持てる』と思わせる中長期的展望だと考えます。そのためには根本原因が何であるのかを明らかにした上で、その原因に対して『このような対処をしていくから、このぐらいにはよくなるよ』というのを見せるべきだと思います。
 
女性が出産をためらうのは『育児に極端に時間が取られてしまう』『自分のキャリアが閉ざされる可能性がある』のが原因の1つだと思います。将来の収入が不安定なことも一つの原因だと思います。また将来、年を取った時に医療・介護に多額の費用がかかる可能性を考えて、子供に投資できないのも一因だと思います。様々な事象が発生していますが、それらはつながっていると考えます。要は『将来に対する不安』なのです。将来は確実なものではありませんが、そこに対して希望があるかないかで人々の行動は大きく変わります。
 
今回の第2次補正予算は金額ありきでスタートしています。しかし人々が求めているのは金額ではなく、将来に対する中長期的な展望です。岸田首相が黄金の3年間でリーダーシップをとり、2023年度予算こそ希望を持てるような項目を追加してくれることを期待します。 


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