公益通報者の保護:国会が政府と議論すべき
2024年6月21日、鹿児島地検が、鹿児島県の前生活安全部長を守秘義務(国家公務員法第100条)違反で起訴した。県警の霧島署員が犯したストーカー事件、そして枕崎署員が犯した盗撮事件に関する情報が、結果的に報道機関に漏れたからだ。(参考:読売新聞記事)
2024年7月9日、兵庫県知事によるパワハラなどを公益通報した元西播磨県民局長が懲戒処分されたのち自死された。(参考:朝日新聞記事)
どちらも公益通報者に対してあってはならない仕打ちだと思う。3つの点から。
守るべき秘密なのか?
第1に、鹿児島県警の前生活安全部長が通報した情報は「秘密」にあたるのか?
消費者庁は「行政機関向けQ&A(内部の職員等からの通報)」をまとめている。
「Q:公務員が公益通報を行うことは、国家公務員法や地方公務員法に定める守秘義務に反しませんか。」という問いも立てている。消費者庁の答えはこうだ。
署員らが犯したストーカー事件や盗撮事件を鹿児島県警が隠蔽するつもりがなかったのであれば、それは「非公知の事実」とみなす必要もなければ、「秘密として保護するに値する」ものでもない。守秘する義務がそもそもなかったのではないか?
「公益通報」の定義が狭くないか?
第2に、「公益通報」の定義が狭くないかという点。消費者庁は、「公益通報者保護法に関するQ&A(基本的事項)」で以下のようにまとめている。
つまり、公益通報者保護法は「公益通報」という勇気を振り絞らなければならない人々を解雇や不当な扱いから守るための法律だが、「公益通報の対象」は、「法令違反行為」と狭く定義されている。
公益通報者保護法が2004年に成立して20年、国会は、公益通報の定義や意義について改めて審議をすべきではないか。
「公益通報者」を守れなかった
第3に、兵庫県の事例は、公益通報者保護法に反して、守られるべき公益通報者が守られなかったということではないのか。消費者庁は「公益通報者保護法に関するQ&A(基本的事項)」で以下のようにまとめている
法律が編まれる場所と、使われる場所
法律が編まれる場所と、それが使われる場所は違う。公益通報者保護法はこれまでにも現場で起きていることをもとに改正は行われてきた。今回もまた、現場で今、どう使われているのか、国会はもう一度、改めて「公益通報者保護法」が適正に使われる方向へ向かうように論議すべきではないのか。そう思った。