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GX推進法案が「グリーンウォッシュ法」と批判されるわけ

3月24日、GX推進法案の廃案を求める市民団体の合同オンライン会見が行われ、GXは脱炭素効果の乏しい「グリーンウォッシュ法」だとの批判が相次いだ。

この10年が重要だが、GXでは減らせない

その一人、気候変動問題に取り組む「気候ネットワーク」の桃井貴子・東京事務所長は、脱炭素対策はこの10年が重要だと述べた。日本の温室効果ガス排出量の3割超は火力発電所が占める。これに鉄鋼、化学、セメント、紙パルプが続き、7割が大規模事業所からの排出だが、桃井さんは「GXではこれらの排出量を減らせるならまだしも減らせない」というのだ。

GX実現に向けた基本方針参考資料によれば、火力発電で化石燃料に混ぜて燃やす水素・アンモニアのサプライチェーン構築等に10年間で7兆円(P.3)、二酸化炭素の分離回収・貯蔵(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)の事業環境整備に10年間で4兆円(P.22)を投資することになっている。

GX実現に向けた基本方針参考資料 P3より抜粋
GX実現に向けた基本方針参考資料P22より抜粋

20%アンモニア混焼で削減効果はわずか4%

しかし、桃井さんは、「アンモニアは、燃焼時に炭素(CO2)を排出しないと言いますが、製造時には、最初に水素を作り、窒素と高温高圧化で合成させる。化石燃料を使って製造するので大量のCO2が排出されます。政府は、2030年までに石炭に20%のアンモニアを混焼させることを目指していますが、CO2の削減効果は、石炭100%の火力発電と比べて、わずか4%。水素・アンモニアに7兆円を使っていくのはおかしい」という。確かに、示されたグラフを見れば、アンモニア100%で火力発電をおこなったとしても、削減効果はわずかなものだ。

出典:会見資料及び「Japan Beyond Coal|ファクトシート
水素・アンモニア燃料 ─解決策にならない選択肢
」より。
もとの資料は「水素・アンモニア発電の課題」(NPO法人気候ネットワーク、2021年10月)

CO2分離回収・貯蔵は石炭火力の延命策

桃井さんはさらに、CCSは高コストで実用化も程遠いと説明した。「政府はまたCCSに長い間取り組んでいますが、化石燃料を燃やして、CO2だけを回収することにエネルギーを使う。ましてやそれを集めて運搬して地中に埋め戻すところでそれぞれお金もかかる。民間だけではコストに見合わず、できないからという理由で国が投資しようとしている。今ある火力発電所を残す形で、CCSで何とかしようという考えがG推進法です。」

3月24日オンライン会見を筆者スクリーンショット

「再生可能エネルギーを主力電源化するというのであれば、今やるべきことは水素・アンモニア・CCSに大量のお金をかけることではない。150兆円のうち、20兆円を国で債権を発行して石炭火力発電を延命させるGX推進法は、『大規模排出者保護法』であり、『グリーンウォッシュ法』です。今の産業構造の基盤になっている電力、鉄鋼を守ることを確約し、気候変動対策で産業構造を変えていくという方向性は見えない」、「この10年は、本来なら省エネと再エネに特化すべきであり、GXで従来の産業を固定化する状況は危機的です」と批判する。

3月24日に開催された衆議院経済産業委員会(衆議院ビデオライブラリ)でも、GX推進法で推進する温暖化対策は「遅すぎる」との批判が相次いだが、遅いだけではなく、効果も実現性も極めて低いことが、この会見で明らかになった。

当ノートは、GX推進法が「原発アリ地獄」であることやGX経済移行債が「原発経済逆行債」であり不透明だと批判してきたが、問題はそれだけではなかったのだ。

【タイトル写真】

桃井貴子氏(気候ネットワーク東京事務所長)会見資料より

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