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福島第一原発で続く、6900ボルトによる高圧線の火災など

2024年6月18日、東京電力福島第一原発で、高圧線が損傷する2度目の事件が起きた。


高圧線で火傷事件 4月24日

所内の電源A系が停電。原因は、所内A系の高圧線を引き直すために、コンクリートを剥がす作業を行なっていた作業員が、高圧線(ケーブル)の管路まで貫いてしまったこと。作業員は右頬右腕に「2度熱傷」を受けたが、東電は「感電ではない」と言い張り続けている。A系を電源とする免震重要棟やALPSで処理した汚染水を希釈・放出する設備が停止した(5月3日5月13日に既報)。

高圧線で火災事件 6月18日

6号機で停電。8時33分、使用済燃料プールの冷却が止まった。2分後、6号機タービン建屋地下1階で火災報知器が作動(第1報)。15時15分に消防署が「火災」と判断。停電から10時間後の18時19分、使用済燃料プールの冷却が再開(第2報)。この間、プールの水温は1.5度上昇。長期間、稼働していないため燃料が22度まで冷えていたからそれで済んだ。稼働中の原発の使用済燃料プールならそうはいかない。

翌日6月20日の特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合(通称「1F技術会合」)で、東電は事件を報告。同日夕方の東電会見でも説明を行った。

聞かないと言わない6900ボルトという単純な事実

6号機の件は、いわゆる「トリップ(過電圧か過電流か漏電を原因として電源盤で遮断が起きること)」の原因は調査中だ。ちなみに、4月の事件も今回の事件もどちらも6900ボルトの高圧線で起きたことだが、この数字は聞かないと東電は情報公開しない。資料に記録されていない。

4月よりマシなのは現場写真の公開

4月の「感電ではない」と言い張っている事件よりマシなのは、現場写真がきちんと公開されたことだ。どんな場所で何が起きたのかが分かる。

場所は、6号機タービン建屋地下1階の天井に近いところ。
下から見上げると、変色している(黒く焦げている)ところが見える。

出典:2024年6月20日  第20回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合
資料4-1:6号機高圧電源盤 6C の電源停止および火災報知器の作動について[東京電力]
(以後すべての写真や図も)

東電の説明によれば、6、7メートルの足場を組んで見に行くと、高圧線を収めたダクトカバーも焦げて溶けて穴が開いていた。以下の通り。

ダクトカバーを開けると3相からなる「導体」(R相、S相、T相)が、それぞれ焦げていた。同じ資料の中で、「導体」と書いたり「相非分割母線」と書いたりしているが、ここに合計6900ボルトの電圧が通る。

問題箇所の全体像は以下の通り。見逃せないのが、ダクトの蓋を開けたときに、40センチかける3センチの金属片がS相とT相の間に見つかったこと。

このような金属片がR相、S相、T相にまたがれば、それが短絡の原因になるが、それを含めて調査は9月以降までかかると東電は1F技術会合や記者会見で説明している。

ダクト内部は、もし、健全なら以下の図解説明のように、3相の導体が赤い塗料によって表面が絶縁処理され、接続部も黒いもので巻いて絶縁している(と記者会見で説明)。上の実際の詳細写真を見ると、導体を支持している「絶縁物」までが一部溶けている。6900ボルトの電圧がショートすると、こうなるのだろう。近くに燃え広がる可燃物がなくて良かったとしか言いようがない。

これから調査するという金属片が、施工時の置き忘れか、老朽化か、それでなければなんなのか。調査に9月過ぎまでかかるというタイミングも含めて、不可解な高圧線火災事件である。

【タイトル写真】
出典:2024年6月20日  第20回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合 資料4-1:6号機高圧電源盤 6C の電源停止および火災報知器の作動について[東京電力] より

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