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柏崎刈羽原発2020年の不正ID事件(1)規制庁による隠蔽事件だったこと

2023年12月6日の原子力規制員会での東京電力柏崎刈羽原発の「追加検査」と「東京電力に対する適格性判断の再確認」の規制庁報告を受けて、12月11日(月)に、山中伸介原子力規制委員長と伴信彦委員が現地調査に行く。保安規定第2条の「原子力事業者としての基本姿勢」遵守の取り組み状況も確認するのだという。

「追加検査」とは何か、「適格性の再確認」とは何か。2017年から始まった6年にわたる経緯や、ことの性質を知る人はわずかだと思う。今後のために何回かに分けて、整理しておきたい。


不正ID事件を原子力規制庁は知っていた

2020年9月20日、柏崎刈羽原発で、東京電力の社員が他人のIDカードで中央制御室まで侵入した事件が起きた。

原子力規制庁は翌月に現地で検査し、この事件を知っていた。11月11日には第2・四半期(2020年7月1日~9月30日)の原子力規制検査の報告が行われたが、そこでも報告をしなかった。

翌年1月23日に読売新聞が報じるまで、4ヶ月もの間、東京電力は公表せず、規制庁も隠蔽した。報道がなければ、闇に葬られたかもしれない事件だった。

報道の3日後に非公開会議で報告

規制庁は、原子力規制委員会には、読売新聞の報道の3日後、非公開で開催された2021年1月26日原子力規制委員会で報告した

非公開だった上に、議題として取り上げておらず、資料もなく、ただ、議事概要に「事務局より、東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカードの不正使用について説明」とあるのみだ。

隠蔽4ヶ月の間に、保安規定の認可と立地自治体選挙

この4ヶ月の空白期間には2つのことが起きていた。

一つは10月30日、柏崎刈羽原発6、7号機の保安規定を、原子力規制委員会が認可したこと。もし9月20日の不正ID事件が明るみに出ていたら、認可をしただろうか。(詳しくは柏崎刈羽原発2020年の不正ID事件(2)2017年から遡るへ)

もう一つは11月15日、柏崎市と刈羽村であった市長選と村長選。柏崎刈羽原発を争点に闘っていた候補者がいた。

この時期がどういう時期だったかといいますと、柏崎刈羽原発の立地自治体である柏崎市長選挙が行われている最中でした。もしかしたら選挙に影響を及ぼすから意図的に隠蔽したのではないかというような声も漏れ聞こえてきます」と2021年2月25日衆議院予算委員会第七分科会で菊田真紀子議員が追及している。

原子力規制長官まで知っていた

これが「原子力規制庁の内部でどこまで情報が共有され、誰の判断で規制委員会に報告しなかったのか」と、2021年2月25日に菊田真紀子議員に問われ、原子力規制庁の山田知穂 核物質・放射線総括審議官が「原子力規制庁幹部では長官まで報告はされてございます。 また、報告時点では、原子力規制委員会に核物質防護上の重要な事案として直ちに報告すべき対象に該当すると担当部門が評価していなかった」と答弁した。

核物質を防護する人材と仕組みが機能不全

深刻なのは、4ヶ月隠蔽された不正ID事件は、単純なものではないことだ。

東電社員(A)が自分のIDをなくしたのにも関わらず、紛失届を出さず、施錠していなかったロッカーにあった他人(B)のIDで中央制御室に入った。周辺防護区域出入口では、委託警備員(C)がID写真とAを見比べて疑念を持ちながらも入域させた。複数回の認証エラーが出たが、社員警備員(D)も扉を開いた。Dは管理業務に関する管理的地位がないのに、管理的地位がある者の指示を仰がずに、Aの識別情報をBのIDに登録するよう指示し、Cが登録を行った。
(参考:原子力規制委員会2021年2月8日資料「柏崎刈羽原子力発電所における原子力規制検査指摘事項概要(社員によるIDカード不正使用)」)

原発の心臓部である中央制御室を守り、核物質を防護するための人材と仕組みが何重にもありながら、何一つ機能していなかった。

この事件の本質

それを原子力規制庁トップの長官が知りながら口をつぐんでいた。1ヶ月後の保安規定の認可、そして、2ヶ月後の2つの自治体選挙を抱えたタイミングで、国民にも原子力規制委員にも知らせなかった。このID不正事件で最も深刻なのは、実はこのことではなかったのかと、思っている。

灯台下暗し。それは来週12月11日(月)に原子力規制委員長らが行う現地調査では、確認することも是正することもできないのだ。続く。

【タイトル写真】

原子力規制委員会から六本木一丁目駅へ向かう広場のイルミネーション。


 


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