Justice Day Chapter #3-2

Strategies and Tactics - 2

Joakim「ちょっと待ってくれMOA。まさか…このお嬢さん方が…そう…なのか?」

MOA「そうだよ。ってかなんでこの子らと話ししてんの?」

Joakim「知らなかったとはいえ大変失礼した。日本を救った英雄の皆さんに改めてご挨拶させてもらいたい。私はヨアキム・ブローデン 対魔族同盟EU本部(Anti-Demon Alliance EU Headquarters / ADA-EUHQ)の最高司令官だ。」

Par「同じくADA-EUHQ首席作戦参謀のパー・サンドストロームだ。知的で勇敢な戦士の皆さんとお話できて光栄に思う。」

Joakim「君たちのことはMOAたちからよく聞いている。ヨーロッパにいる我々だけでなく、世界中の対魔族同盟の戦士たちが君たちのことを尊敬しているんだ。そして…MOMOさんにはお悔やみと、GUMIさんのお父さんにはお見舞いを申し上げる。」

MOMO「ご丁寧にありがとうございます。」

GUMI「パパ…じゃない、父も喜びます。…っていうか…海外ではちゃんと組織になってるって事なんですか?」

SOYO「え?知らんかったん?」

KANO「フツーに日本でもあるよね?」

Joakim「そうだよマイヒーロー。ただ、正確には『日本にもあった。』だがね。」

MOMO「私達のことをどう呼んでもらっても構いませんが『ヒーロー』はやめてもらえませんか?マイフレンドで結構ですよマイフレンド。」

Joakim「ハハハ!君は最高だよマイフレンド!ところでMOMO、君に火器の使い方を教えた男がいただろう?彼はADA-JPHQに所属する戦士だった。」

MOMO「そうだったんだ…あの人は…アタシが殺しちゃった…」

Par「それは仕方のない事だよ。我々魔族と戦う戦士は常に奴らに襲われ変異するリスクにさらされているし、そうなった場合になすべき最善の対処については覚悟はできている。そもそも君がしたことは彼から事前に頼まれていた事だろ?だから彼も君には感謝しているはずで、君が自分を責める必要は一切ない。ただ、不幸なことに彼がADA-JPHQの最後の一人だったということさ。」

Joakim「とは言え、ADAはそんなに脆い組織ではない。今まさに日本では組織の再建が進んでいるよ。GUMI、そこには君のお父さんも関わっているんだよ。」

GUMI「知らなかった…でも確かに、パパは魔族のこと昔から知ってたみたいだし…それよりSOYO。あんた聞きたいことがあったんでしょ?」

SOYO「ホンマや。忘れるとこやったわ。さっきパーさんが言わはったみたいに、ウチら相手が圧倒的に多い場合の戦略とか戦術を勉強したいおもてるんですけど。」

Par「なるほど。ただ、この間の東京での戦闘で君たちが取った戦術は実に適切だった。前例がなく目まぐるしく状況が変化する中で取りうる最善の対処だったと思う。長年対魔族戦闘の作戦立案に関わってきた私が言うんだから間違いないよ。」

Joakim「パーの言うとおりだよマイフレンド。我々は君たちの戦い振りから実に多くのことを学ばせてもらった。言い換えれば今我々は君たちが作った『歴史』に学んでいるんだよ。」

SOYO「評価してもらえるのは嬉しいねんけど、仮にこないだの渋谷みたいに狭いところから大量に湧いてくるのを排除しながら一番奥を叩くとなると二つ問題があって……ひとつは余りにも死者が出過ぎてしもたこと、もひとつは相手の初動を止めるのに効果があったウチとKANOの遠隔攻撃能力が無くなったことねん。」

MOMO「SOYOとKANOの能力の替わりになりそうな武器とか、GUMIとアタシの武装強化については別に検討を始めたトコなんだけど、それとは別に戦術の見直しもいるかなって。」

Joakim「…これは驚いたな。本来なら君たちはファッションだとかスイーツだとか、友達と遊ぶことだけ考えているべき年頃なのに。それと恋愛もだな。」

Par「いや、恋愛はいけない。特に見た目は良くても軽い奴はな。」

Joakim「おいおいPar。父親気取りじゃ嫌われちまうぞ。…話を戻すとだな、本来同世代の女の子たち同様に楽しむべきところ、頼もしいというよりむしろ申し訳ない気持ちだよ…済まない。少し席を外すよ。Par、続けておいてくれよ。」

Par「ああ…ともあれ専門家としての観点から君たちが抱える課題についてなにかアドバイスができるとすれば…君たちはおよそ80年前の『ミッドウェー海戦』を知っているかな?」

GUMI「爆弾か魚雷かで混乱してる間にやられちゃったってやつ…だったっけ?」

Par「長い話を短く言えばまぁそういうことだね。君たち日本人にとっては思い出したくない出来事だろうが、この戦いは実に多くの教訓を遺してくれているんだ。そしてここでハイライトすべきは判断の遅れだよ。釈迦に説法かもしれないが、判断をするためには『判断基準』と『判断材料』が必要だ。前者は上位ランクの軍人であれば当然持っているべきものだが、質・量ともに然るべき判断材料がなければいくら優れた軍人でもお手上げ、というわけさ。」

MOMO「要するに…情報? 確か、当時の日本のレーダー技術はアメリカに比べてかなりダメダメだったんだったっけ?」

SOYO「暗号もバレとったんよな。」

GUMI「情報…かぁ。確かに、MOTHERの存在は実際に見つけるまではSOYOの感じた違和感と、あとは仮説の積み重ねでしかなかったもんね。」

KANO「見つけられたのは…何ていうんだろ、『運が良かった』…じゃないか。ヤバい方に突っ込んでいった結果だし。」

Par「そうだね。これは後知恵なんだが、敵の位置や規模、装備を正しく、そして素早く把握できれば対処に関する判断もしやすいだろ。君たちが戦った渋谷の地下の図面を見せてもらったが、あれは攻める方にとってはまさに地獄だな。あそこに攻め入った君たちの勇気には脱帽するよ。」

MOA「まぁあの時はそうするしかなかったよね?」

MOMO「ですね。…ただ犠牲も大きかったですけど…」

Joakim「…失礼した。そうだね。こちらでも同じようにクローン魔族の大量発生が起こっているんだが、君たちから学んだ戦術を実践しながら、君たちがMOTHERと呼んでいた特異な個体を識別する方法を今こちらでも探している最中なんだ。分かり次第シェアするよ。」

SOYO「あの…勘違いかも知れへんのですけど、あの時地下に入ってMOTHERに近付けば近づく程ウチだけ耳鳴りと頭痛がヒドなったんです。知ってはると思うけどウチは魔族やから人間とは違う感覚があるんかなと思って…」

Par「ありがとうSOYO。それは重要なヒントだよ!早速前線で人間の可聴域を超えた周波数の音波や振動を調べてみよう。なにか分かるかもしれない。」

Joakim「仮にその仮説が正しかったとしてだが、その周波数を特定できれば、或いはMOTHERとそれ以外の魔族との識別も出来るかもしれないな。それはきっと、君にとっても有益なんじゃないかいマイフレンド?」

SOYO「それは…そうやけど…」

Joakim「我々ADAは何も魔族の殲滅を目的にしているわけじゃない。ということだけは言っておこう。」

SOYO「その事は…ちょっと別に時間取ってもらえますか?」

Joakim「勿論だよマイフレンド。いつでも都合の良い時間に連絡してくれ。」

SOYO「また連絡します…今日は色々とありがとうございます。」

Par「お礼を言うのはこちらの方だよ。この短時間で大勢の生命を守ることに繋がるかもしれない有益な情報を得ることが出来た。そして何より君たちと出会えたことにも感謝だね。」

MOMO「私達も大変勉強になりました。」

Joakim「君たちの役に少しでも立てるのならこんな光栄なことはないよマイフレンド。あと、差し支えなければなんだが、君たちが武器について検討した記録もシェアしてくれないか?こちらで何か出来ることがあるかも知れないからね。」

GUMI「わかりました。英訳してすぐに送りますね。」

Joakim「ありがとう。では次に話しできる時までお互い元気で…」

KANO「すみません!最後に一つだけ質問いいですか?」

Joakim「勿論だよマイフレンド。」

KANO「ヨアキムさんは最高司令官なんですよね?その割には…何ていうんだろ、ガタイがいいというか鍛えているというか…どうしてですか?」

Joakim「いい質問だねマイフレンド。最高司令官たるもの安全なところでふんぞり返るのではなく、常に前線で真っ先に攻め込むべきだというのが私の信条なんだ。それに、いくら便利な兵器があったとしてもギリギリの局面で有利に戦いを進めるには物理的な強さが物を言うのさ。だから肉体的な鍛錬を欠かすことはないよ。」

KANO「ですよね~。最近KANOも鍛え始めたからわかる!何ていうんだろ、『筋肉は裏切らない』?」

Joakim「Par聞いたか?最高じゃないかマイフレンド!完全に同意するよ!"Your muscle wouldn't betray you." と大書きしてトレーニングルームに貼っておこうじゃないか!」

Par「ああ。最高だな。むしろKANOさんに日本の伝統的なカリグラフィのマナーで直筆で書いてもらうっていうのは…どうかな?お願いしていいかい?」

KANO「カリフラワー?」

MOMO「カリグラフィ。多分書道のことじゃない?」

KANO「なるほど…KANO、しきたりみたいなのはあんまり分かんないからもっと自由な『書』でいいですか?それなら前にやったことあるんで。」

Par「もちろんだよ。柔軟な発想で戦局を打開する君らしいやり方だね。後からこっちのDHLアカウントをメールするから着払いで送ってもらえるかな?…それにしても、戦いは過酷だがこんな出会いがあるならそれも悪くないもんだよ。じゃあみんな元気で!そしてこれからも連絡を取り合おうじゃないか。」

MOMO「ヨアキムさんもパーさんも、そしてMOAさんもどうかご無事で。あとSUさんにもよろしくお伝えください。」

MOA「わかった。じゃあね!」

***

SOYO「なんか…すごい出会いよな。」

KANO「だね。ビックリだよ。」

GUMI「でもさぁ、あの人、何回マイフレンドって言ったっけ?」

SOYO「知らんがな。」

KANO「9回。あとMOMOが2回。それから今GUMIが1回。」

SOYO「何数えてんねんな。」

MOMO「まぁお陰でアタシたちが考えてたことが色々動き出しそうじゃん。」

〜♪〜

MOMO「はーい。え? いや、注文してませんけど?…え?代済み?…はぁ…じゃあ、すぐ開けます…」

GUMI「どしたの?」

MOMO「UーバーEーツみたい…ファッ?…ちょっと誰か取りに来て!」

SOYO「はーい。…ファーーーーーーーーッ!」

KANO「なになに?…ウグ…行きたいけど…脚…が…」

GUMI「だからオーバーワークはやめなってば。ん、なんか語感が似てるなぁ。」

MOMO「見て見て〜スゴイの来たよ!」

KANOGUMI「ファーーーーーーーーッ」

KANO「ドーナツじゃん!しかもクリスピーでクリーミーでめちゃ甘いやつ!ダメだ。筋肉が欲しがってる…」

SOYO「しかもこの量…まぁ余裕で食べるけど。」

GUMI「でもなんで?…あ、カードがついてる。」

MOMO「ホントだ…『今日は楽しかったよマイフレンド!これはささやかだけど素敵な出会いの記念だ。ひとときでも年頃の女の子らしい時間を楽しんでくれ。ユアフレンドより』…だって。」

SOYO「あの、一瞬席外した時に注文してくれはったんかな。」

KANO「ヤバっ。」

GUMI「男前すぎるわモヒカンさん。らぶだね。」

SOYO「せやから揉めるもとやってば!ってか簡単に餌付けされすぎやろ。嬉しいけど。」

MOMO「じゃあ、ヨアキムさんのお言葉に甘えてドーナツパーティーしちゃおう!」

一同「いっただっきまーす!」

***

Chapter #4に続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?