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5年間続けた野菜市は今日で最後です

 何かを手放すとき、大なり小なり苦しみをともなう。5年間続けてきた野菜市は今日で最後。続けられなくてやめるんだから言い換えれば新しい次へのステップではあるんだけど、やはり寂しいものは寂しい。楽しいことだけ周りに伝わるようにと自分なりに一所懸命やってきて、いざ今になるといろんな思いが心の中でこだまするけど、みんなに伝えたいのはただただ感謝。

今までありがとうございました

 私自身が野菜を作っているわけではないので、野菜市をやるためには生産者の全面的な協力が必要になってくる。売りたいので野菜くださいと急にお願いしても、野菜は生き物なのですぐに卸してくれるようにはいかない。どれだけていねいにお願いしたとしても、こればっかりはすぐにぽんと無から生産されるわけにはいかない。つまり作付けの段階から計画的にうちで売ってくれるぶんを育ててもらわなければいけない。雨の日も。風の日も。嵐の日も雪の日も、大寒波が来ても熱中症アラートが発令されたとしても。土を作って種を植えて、水と肥料をやって虫や獣が近づかないようにして。ひとつづつ収穫して包装して。朝採りの一番いいやつを笑顔で届けてくれる。いつも。ずっと。
 野菜を売るので、当然買ってくれる人からの応援も必要になってくる。この野菜市の野菜がいいと思ってくれて、わざわざ選んで野菜を買ってくれる。このつながりで成り立っていた。
 ただ野菜を売っているだけの私にもバックボーンがあるのと同じ様に、野菜を作ってくれる人にも買ってくれる人にも複雑なバックボーンがある。そのことを深く学んだ5年間だった。

ホームページ作り屋さんでしかない自分に広がりが出来た

 野菜を売ることを通じて、ホームページを作るだけでは出会えないいろんな人と繋がりができた。このつながりは、野菜市が終わることで断ち切れてしまうのだろうか。野菜市をやめるにあたって唯一で最大の不安はそこだ。百人に買ってもらって儲けを出そうという事業では無かったので、本当にお客さんひとりひとりが大事。ひとりしか来ない日でもそのひとりの方と喋れたことが意味があった。

とにかく料理が好きで、うちの野菜で作った料理をいつも教えてくれるご婦人。
いつも旦那さんと一緒にきてくれるご年配夫婦。
母と娘でやってきて母の後ろをちょこんと付いてくる大学生。
故郷がここだからということで相続した、今は無人の家のメンテナンスに定期的に立ち寄る東京のサラリーマン。
実家に行くときは必ずここの野菜をおみやげに買いに来てくれる若いカップル。
親切にしてくれたからというお礼で株の売買の秘訣が書かれた手作りの指南書をくれたおじいさん。
石けんを削って形作られたバラを、子供の分まで作ってもって来てくれた奥様。
結婚当初からのまな板を、ここなら綺麗に復活させてくれると思ってと不安そうに持ち込んで相談にきたり。
とよのん(町のマスコットキャラクター)のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめてくれた女の子。
ホームページのお礼にと代金といっしょに野菜の絵を描いてくれた日本画の先生。
こだわり野菜の仕入れで大変なはずのそぶりをみせず、ふらっと立ち寄る感じで来てくれるシェフ。
店番をボランティアで手伝ってくれたみんな。お母さんと一緒に店番してくれた子。
いつもパンのお金をにぎりしめて買いに来てくれる高校生男子。
仕事帰り、家の用事の合間、子育ての合間、たまたま、わざわざ、通りがかりで来てれて、調べて来てくれて、わたしたちに会いに来てくれて。いろんな事情でいろんな方が立ち寄ってくれた。ありがとう。ありがとう。

「妻に先立たれて。それから料理をつくるようになってね。いつも一人分。仕事から帰ってきて、ここに立ち寄って、一人で食べきれるだけの野菜を買って。野菜を洗って一人分の料理を作ってるとね。これくらいのこと、妻が生きてるうちにいくらでもしてあげればよかったなーって。思っちゃうんだよね。妻が生きてる間は一回も料理したことなかったからねえ。これくらい、いくらでもしてあげたのに。知ってたら。いくらでも。ははは、つまらない話しちゃったね」って話してくれた初老の男性。

 本当にかけがえのない時間をどうもありがとうございました。みなさんが来てくれてうれしかったです。わたしたちの野菜市で買ってくれてほんとうにありがとう。

つぎ何するかははっきりとはまだ決まってません。

 別にここから出て行くわけではないので、良くも悪くも次に何するかはあせって決める必要がなくてまだ決め切れていない。経済活動の歯車の一つである以上は、ゆっくりのんびりしているわけにもいかないので、何かしら出来るようになればいいんだけど、みんなが楽しくて意味を感じる事業が出来ればいいなあ。

\物語は次の章へ。今後の活動もSNSで発信していきます!/

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