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Talk with me ~シンデレラタイム~

2021年10月16日と17日の2日間にわたって、ももいろクローバーZの百田夏菜子さんが、万を持してソロコンサートを開催しました。

もっとも、本人的にはぜんぜんやるつもりが無かったそうで、個人的には、20年後くらいにディナーショーという形で開催でもいいかな・・・と思っていたので、ソロコン開催が発表されたときはPC画面の前で

「まぁ~~~じぃ~~~~~!?!?!?!?!?」


っていう変な声が出ました。

でも、そんな夏菜子ちゃんったら、ソロコンのMCで「わたしにソロコン開催してほしいという声も、わたしがやりたいと思ったときにやってほしいという声もあったんだよね。知ってるよ」って話してくれました。

「知ってるよ」だって。

優しくてズルくて好き。ほんとそういうとこ。

そんなこんなでわたしは、諸々の事情をかいくぐって両日さいたまスーパーアリーナに行くことができました。
備忘もかねて、今後二度とないかもしれないし、あるかもしれない、百田夏菜子さんのソロコンサートの感想と考察を私なりに書いてみます。最初に断っておきますが、クソ長いです。ヒマな方だけお付き合いください。
(しかも、だいたいTwitterでのヨダレみたいなつぶやきの焼き直しなんですけどね。ハハハ)

■ステージセット

入場。白い円形のセンターステージがあるのみ。
舞台上に飾りは無い。
アリーナモードのSSAの両サイドに大きなスクリーンがあり、そこには演出用の映像が流れるようになっている。
開演前は円形のモニュメントが映し出されている。開演が近づくとそれが時計になって、時計の針が12時ぴったりになると、シンデレラタイムの始まりというわけだ。

時計の針の音に合わせて手拍子が鳴って、ステージが始まる。

■本編

<オープニング→白ドレス衣装>

01_魂のたべもの
02_D'の純情
03_キミノアト
04_太陽とえくぼ
05_愛・おぼえていますか(※マクロスの歌)
06_それぞれのミライ(※新曲完全版)

1曲目の魂のたべものでシンデレラの迷いや本音を垣間見た直後、2曲目のD'の純情で「会えてうれしいよ」「サンキューって叫びたいんだ」なんて言われたので、私はソロコン冒頭から一生この子のファンでいることを誓いました。いろいろあったもんね・・・ぼくたちが見えてるところなんてほんの一部だもんね・・・うう・・・と過剰に感情移入してしまうオタクの悪い癖、開始10分と経たずに発動(そして2時間以上キープ)

2曲ずつでMC。
夏菜子ちゃんって、トークイベント含めて今まであまり一人でステージに立つことが無かったんですよね。発声禁止なのでガヤも飛んでこなくて、沈黙に耐えられない夏菜子ちゃんは時々モジモジしたり、ヘイヘイ(バンマス宗本康兵さん)や竹上さん(サックス)に話振ったりしてましたけど、かわいいシンデレラですね。ずるいね。
夏菜子ちゃんが「お水飲んでいい?」って聞くとみんな小さく拍手するんですよ。これはきっとお水飲んでてもかわいいからですね。ずるいね。

しかし、夏菜子ちゃんって、途中途中のMCがたどたどしいのに、歌とダンスと表現と最後の挨拶で伝えたいこと全部ぶつけてくるの、超ずるいと思いませんか?
しかもそこには余白があるから、想像する余地と深みがある。語られていないところを考えるのが楽しい。
エヴァの監督である庵野秀明さんも言ってたけど、「最近は全部説明しちゃうエンタメコンテンツが多い」中で、ももクロも夏菜子ちゃんも決してそんな事はなくて、夏菜子ちゃんは特にそういう余白を残しがちなタイプだと思うので、それもあって彼女に奥ゆかしさを感じたり、もっと彼女のことが知りたい、って思わせたりするんでしょうね。なんか振り回されてる感じもあって、くやしいけど、そういうとこ好きです。

ちなみに、MCの中で夏菜子ちゃんは「お客さんとの距離のことも考えた結果、センターステージになった」というお話もしてくれていて、端から端まで手を振ってくれていました。今回のソロコンの内容も相まって、実はファンとの距離感を一番気にしているのは夏菜子ちゃんなのかもしれない、とも思ったりしました。

わたしは、ももクロが戦争をなくすことができたり、ノーベル平和賞を取る可能性はゼロではないと信じてやまない厄介なオタクなんですが、偶然にもソロコンの5曲目、『愛・おぼえていますか』の曲紹介では「歌で戦争をなくす」という話をしてくれました。
これを聞いたとき、2014年の国立競技場で目指すとしていた『みんなを笑顔にするという部分で天下を取りたい』は、今となってはあくまで手段で、根底にある目的(=自身の人生の時間を費やしてまで、彼女は何のためにアイドル活動をするのか)という人生の目的を、夏菜子ちゃんは、今回のソロコンのような、何もない白い無垢なステージのような世界で、人生の目的を探している途中なのでは、と想像しました。
正解は無いし、正しい方向に向かっているかもわからない。本人の心情を考えるだけでもつらいけど、迷ったときの道標になるのは、2014年の国立競技場ライブのときから変わらず、私達のサイリウムの光でありたいと思いました。

それぞれのミライ」は、バレイベ以来日の目を見てこなかった曲ですが、初披露のときは、歌詞起こしからわずか数日での披露となって、完成形ではなかったのことで、今回初めて完成した曲として歌ってくれました。この曲に関しては、別のブロックで歌った曲と組み合わせての感想を持ったので、またあとで。

ちなみに、「それぞれのミライ」の冒頭、あおむけになった夏菜子ちゃんの足先がモニターに映し出されるんですが、両日ともに脚の置き方が全く同じだったの地味にめちゃくちゃすごいなと思いました。あのあたりにもプロ意識が出てる気がします。

<衣装チェンジ→ロックスター衣装>

07_夢の浮世に咲いてみな
08_リバイバル
09_強がり(※戸田恵子さんの歌)
10_The Show

幕間の演出は、スクリーンに円形のモニュメントが映し出されながら、レーザーでの演出があるのみ。普通は幕間を埋める演出があったりするもんだけど、今回はその余白がなんかすごく良かった。
何より、演目に対する考える時間をコンサート中にもらった感じで、夏菜子ちゃんが仕事帰りに新幹線に乗ってる時の、トンネルの中の感じを表現したのかな、って想像しました。

このブロックは、ロックスター的な表現と葛藤が同時に表れているんだろうと想像しました。ロックスターなのに、ブロックの2曲目がリバイバル。直訳すると「昔の演目が再評価されること」なので、もしかすると過去にそういう思いもあったのかもしれない。

前のブロックの『それぞれのミライ』の完成版と、戸田恵子さんの『強がり』で夏菜子ちゃんのホンネを垣間見た気がして、僕達はシンデレラではない夏菜子ちゃんを大事にしなければならない、と強く感じました。こっちがそう思うことは、夏菜子ちゃんの本意ではないかもしれない、とも考えるけど、少なくとも理解してほしい、のかもしれない。本意は聞けないし、聞くだけ野暮だしセンスが無いので、想像するだけです。

このブロックの最後は「The Show」で締まります。
すごくいい歌なので歌詞を忘れた人はぜひ調べてほしいです。表だの裏だの、迷ったりくじけたり、いろいろあるけど、人生の流れに任せて、「バカヤロウ金返せ!」なんて言わずに、それも含めて人生はショーなんだから、楽しくやりましょう。とも。
ももクロは裏表がない、なんて言われて久しいですが、私の考えでは「裏表がない」という面が表です。裏ではそりゃあ人間なので、悔しかったり、嫌な気持ちになったりすることだってあるはずです。パブリックイメージ(夏菜子ちゃんが最近覚えた単語)を保持するのに疲れるときだって、絶対あります。でもそういうのも含めて(川上さんはプロレスと表現してますが)人生はShowなんだ、むしろアイドルはShowでいいんだ、という解釈が、夏菜子ちゃんのどこかにあったのかも。

<衣装チェンジ→ピアノパート>

11_赤い幻夜
12_タキシード・ミラージュ
13_ひかり(※新曲)
14_白金の夜明け

いやあ、2ブロック目が終わったあとに竹上さんとへいへいがハケてバンドメンバーが居なくなった時、ゾクっとしましたね。これ絶対ピアノ始まるだろ、と確信して、おしっこちびりそうになりました。

赤い幻夜」「タキシード・ミラージュ」そして新曲「ひかり」。ピアノ、弾き切りました。とてもじゃないけど、ピアノを始めたばかりだとは思えない。別の方のツイートを見ると、どうやら譜面台には楽譜ではなく、メモのようなものが書いてあったと。
映画「すくってごらん」の撮影でピアノを始めてからしばらく時間が経っていて、ももいろ歌合戦で初披露のプレッシャーから涙を流した過去があるとはいえ、それでも限られた時間を使って、現地とLV含めて数万人の人の前でピアノを披露するなんて、私にはできない。
いったい、どんな努力の仕方をしたんだ。スラムダンクの桜木花道のシュート練習の努力量を、彼女は現実世界で一気に塗り替えて、私の価値観をも塗り替えてしまった。努力は形になるし、目に見えない自信にもなって自分自身に返ってくるのだ。
「人生は自分次第」と戯言を言いながら、努力しないことを選んでいるような薄っぺらい人たちの背中に、彼女の努力の実績をもってすれば余裕でドロップキックできるんだろうけど、彼女はきっと、自分の努力を道具にしても何も生み出さないことをわかっていて、ただ背中を見せているのみ。こういうところがかっこいいんですわ。

ちなみに、「タキシードミラージュ」の弾き語りで夏菜子ちゃんが「キス」をやたらとハッキリ発声するから、その度にビクッとしてました。私だけでしょうか。

ひかり」は何年も前に作詞した言葉にメロディが乗った曲で、東京と浜松の家とを新幹線に乗って行き来していた時代の心情を書いた曲。キラキラした世界に飛び込んでいっているけど、それと引き換えに失ったものもあるのかもしれない。それでも、東京にいるときは彼女はシンデレラ。寂しいけど綺麗な歌なので、早く配信してください。キングレコードさん。
ちなみに、「のぞみ」「ひかり」「こだま」の東海道新幹線がフルラインナップで歌詞に出てくるので、本気でJR東海のCMソング狙ったらいけるんじゃないかって思ってます。お医者様はいませんか、じゃないけど、ソロコンのお客さんの中にJR東海の社員さん、いませんでしたかね。

そして、「白金の夜明け」。私がももクロで一番好きな曲です。以前に宮本純乃介さんがインタビューで「ももクロの曲は、明日死にたいと思った人が、もうちょっと生きようと思えるような曲が多い」と話していて、その最たるものだと思います。まさかソロで歌ってくれるとは。おじさんのハンカチ、放っておくと苔とかキノコが生えそうなくらい涙で湿りましたよ。ちゃんと洗濯したけど。
曲の冒頭、ピアノ演奏からの突然の不協和音があり、そこからイントロと共に曲が始まりました。「白金の夜明け」の歌詞の中にある「地獄」は、『白くて何もないステージで、何もないけど、なんでもできる。しかし答えがない』ことに対する「地獄」が、冒頭のピアノの不協和音になったのかと思ったりしました。「それぞれのミライ」で「自分が進んでいる道が正しいって言ってほしい(意訳)」とも歌っていて、それに通ずるものが少なからずあるのかな、って。

<アンコール>

15_イマジネーション
16_わかってるのに(※新曲)
17_渚のラララ

シンデレラタイムのアンコールです。
最後に「渚のラララ」を歌ってくれたんですが、ももクロに戻ってきてくれたのかなあ、という感覚になりました。

「D'の純情」では、ライブで「会えてうれしいよ」
「それぞれのミライ」では、抱え込んだ迷いから「正しいって言ってほしい」
「強がり」では、喜怒哀楽こもごも「笑ってないといられない」
「The Show」では、なにかひとつ達観して「人生というShow 楽しみましょう」
「白金の夜明け」では、Showを経たうえでやっぱり「夜明けに生まれ変わろう 正直な自分こそがプラチナ」

・・・という、夏菜子ちゃんの今までの心情の流れを踏まえて、
アンコールの「渚のラララ」を聴いて、彼女なりに帰結するところはやはりももクロなんだろうな、という想像をしました。本当にももクロのことが一番好きで、一番ももクロを頼りにしているのは、夏菜子ちゃんなんじゃないかな、とも。

「強がり」「それぞれのミライ」「The Show」を聴くと、私はどうしても、有安さんが抜ける時の夏菜子ちゃんの悲しい表情が最初に思い浮かんでしまうんですが、それも踏まえての「白金の夜明け」を経ての「渚のラララ」で、ももクロでい続けるという決断があったのかと思うと、彼女には、ありがとうを何回伝えても足りないくらいです。

終演

終演後、規制退場のアナウンスがあるときに、開演前と同じように白いオバケがフロアをうろうろして、去っていきました。

あとから気づいたんですが、実はあのオバケたちの中のひとりが、ドゥユワナダンスのカナコの魂、という設定なんじゃないかと思いました。
以前に幕張でやった舞台「ドゥユワナダンス」は、今回のソロコンの演出を担当する本広克行監督が務めていましたが、4人の高校生が不慮の事故で死んでしまったものの、輪廻転生を経てアイドルになっていくが、その時間は限られていて、また輪廻転生によって次の人生を歩んでいくというお話でした。
仮にそうであれば、オバケが開演前にセンターステージの中に入って、シンデレラタイムの時だけアイドルになるのも合点がいきます。
もっと言えば、開演前にスクリーンに描かれていた円形も、輪廻転生と読み取れるんじゃないかな、とも深読みしました。

おわりに

夏菜子ちゃんのシンデレラタイムは、The Showそのものであり、ソロコンのセットリストが、夏菜子ちゃんの「人生というShow」だという解釈を、私はしました。

他方、ソロコンのサブタイトルが「シンデレラタイム」である一方で、シンデレラではない夏菜子ちゃんが居ることに気づかされる内容でもあったのが興味深いと思いました。
歌と表現を通して夏菜子ちゃんが「Talk with me」として話してくれたのと同時に、夏菜子ちゃんもこのソロコンをつくるうえで自分自身と話していたんだろうな、とも。
終わった後に「夏菜子ちゃんが自分のことを話してくれた」感覚になったんだけど、それも含めてTalk with meなのかな、とも今では思います。

飾りのない白い無垢のステージに百田夏菜子という人を乗せたら、あんなにも凄いライブステージが出来てしまうことに、只々賛辞を贈らざるを得ません。

しかし、夏菜子ちゃんが主役のソロコンなはずなのに、最終的にぜんぶこっちがいろんなもんもらって帰っちゃうんですよね。夏菜子ちゃんかわいかったとか凄かったで終わんなくて、そんな夏菜子ちゃんを見て、自分はどうなんだ、という気持ちにさせてくれます。

いっぽうで、シンデレラタイムであっても、MCで困ったらバンドメンバーにニヤニヤしながら話振ったり、ピアノ間違えて素が出ちゃったり(私は気づかなかった)、飲み物こぼしたり、MC中にノドが鳴ったり、ピアノ弾き終えて「緊張しましたぁ〜」ってトボけながらニヤニヤしたりする人間らしさとか隙の見せ方が、可愛いし、ズルいんですよね。


夏菜子ちゃんが「シンデレラでいるのも悪くないわね」って思ってくれていたらうれしいし、ファンとしても、そう思い続けてもらえるようにありたいです。

次のシンデレラタイムは、4人のももクロとして。

ひとりでのシンデレラタイムは、また、いつか。