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第二章 役職者を輩出する仕組みをチームとして持っているか

前章では、リーダーとは対人影響力を発揮して成果を上げる人だと述べました。この気質は社会に出るまでに先天的に備わっているものでしょうか。

それとも、社会に出た後にも後天的に身につけられるものでしょうか。私の答えは後者です。

特定の赤ちゃんを見て、「あぁこの子は生まれながらのリーダーだ」なんて誰も思いませんよね。「対人影響力は後天的に身につけられる」このテーマをお伝えする上で、少し私の話をさせてください。

 私はバスケ部であった中学二年生の時に、新入部員の面倒を見たことがきっかけで、人の役に立つことで自己の承認欲求を満たせたという原体験から、教員を志すようになりました。

大学では国語の教員免許を取得したものの、中学はバスケ部、高校は体操部、大学はテニスサークルに所属し、節目節目で打ち込む対象を変えてきた経験から、公立の学校ではなく、様々な仕事がありそうな私学の学校法人を軸に就職活動をします。

結果として、今の学校法人に就職することになるのですが、入社の決め手は他の学校法人に比べて仕事の種類が多岐に渡っていたことでした。

つまり、「飽き性な自分でも続けていけそうだ」というのが本当の動機です。しかし、大きな不安を抱えていたことを今でも鮮明に覚えています。その不安の理由は、選考に進む前の説明会でも、入社式の場でも会社から語られていたことにありました。その内容は次の通りです。

「新入社員でも責任ある大きな仕事を任せるのでやりがいを得られる」

私はこの言葉を代表、また人事の方から聞く度に怯んでいました。「責任ある大きな仕事」という言葉に、自分に本当に務められるのだろうかと不安を抱いたのでした。

社会人になる上で覚悟を決めていない、そんな中途半端な人間が入社し、いきなり社会人の卵40人ほどのクラス担任になることで、案の定多くの失敗と挫折を経験しました。生徒には授業がつまらないと言われ、講師からは「人として信頼できない」と指摘をいただく毎日でした。

そんな毎日でしたが、私が初めに配属された専門学校現場では、2年目になる社員には等しく新入社員の教育係を任される風習がありました。いつまでも仕事ができず、確固たる自分の芯を見つけられていない私にも、新卒の女性社員が直属の後輩として配属されました。

そもそも自分の仕事だけで手一杯なところに後輩の面倒も見る、余裕がないのは後輩にも見破られていました。3年目になると、2年目の後輩が継続であったことに加え、1年目の男性社員も新たに配属されました。

1人だけでも余裕がなかったのに、2人の面倒を見る役割を担いました。3年目は教育係だけでなく、事業部内の内規として「チーフ」という役割も与えられました。

学校法人にとって、一つの学校はいち事業部になります。チーフとは、本来役職者である「主任」が検討すべき事業部内の課題や、各業務の予算について検討するなどして、「事業部を回す実務」を担当していきます。つまり、「主任」の業務を委譲していただいているという恰好です。

当時の私は後輩2人の前で、何とか3年目として仕事ができる姿を見せようと、会議の場でも見栄を張り、それでもうまくいかずに、何度も悔しい思いをすることにとても疲弊していました。

かろうじて気持ちを繋いでいたのは、「いつか花を咲かせよう」という言葉を拠り所として、すぐの結果ではなく、将来の自分に賭けていたことです。

転機になったのは4年目。2年目、3年目ではどんなことで後輩から信頼を失ったのか、真剣に考察し、同じ失敗はしないように次に挙げた基本を徹底することから始めました。

・後輩に話しかけられた時は必ず手を止め、目を見て話を聴く
・後輩と口頭で約束したことは、必ずメモした上で、約束より早く果たす
・どんなに忙しくても、楽しそうに仕事をする

さらに、それまでは自分が案件者の時以外は発言ができなかった職員会議において、諸先輩が30人ほど居並ぶ中で、学校全体のことを考えた発言ができるようになりました。

初めは緊張して、座っているのに足が震えていることが分かりましたが、回を重ねるごとに自然と発信する機会が増えていきました。この変化には自分でも驚きました。

働く上で覚悟がなかった人間が、自分の持つ意見を社歴も人生も上の先輩方の前で、「生徒のために」という大義の元、震えながら発信する日がくるとは想像していませんでした。

この経験から得られた真理は、「役職を得る前に、役割を果たすことが肝要」だということです。初めての配属先では、私はたまたま「チーフ」という役割でしたが、小単位のチームリーダーでも良いですし、プロジェクトの長でも構いません。役職に就く前に、役割を与えられる仕組みを持っているかどうかは、一度見直してみると良いかもしれません。

何より大切なのは、今は何でも見える化の時代です。全国の事業部の成果はもちろん、個人の成果も見える化がなされています。そのため、成果が自然と短期的なビジョンになり、若手は息苦しく焦る時代です。

私が若手の頃の事業部は、私に役割を与えて、なおかつ熟すまで勇気を持って待ってくれていたからこそ、開花することができ、「チーフ」の役割を全うすることで次は「主任」へと興味を持つことができました。

この章のまとめとしては、まずは今の事業部内で若手に任せられる役割は何があるか、そしてその役割を全うした先に何が待っているのか、全員が共通認識を持てる体制を整えてみてください。

次の章では、「会議での発信による事業部の風土づくり」をテーマに触れていきます。

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リーダ―育成・事業部再生コンサルタント

本間 正道
twitterID:@masamichihon

Email:playbook.consultant@gmail.com

著書『リーダーになりたがる部下が増える13の方法』


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