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経験論と観念論、そして保守主義の超簡単解説

少し一般的なところから入りましょう。

■経験主義とは、

真理というものが本当にあるかどうかはさておき、そこへどう近づくかというアプローチの違いに「経験主義(経験論)」というのと「啓蒙主義(観念論)」というのがあるようです。

・経験論は「人間の能力には限界がある」という謙虚な前提で、真理に近づくには経験を1つ1つ蓄積するしかないと考える。従って、「経験」を忘れないように、無くさないように蓄積し、それが世代に亘って相続されていくことが最も重要と考える。イギリスとか日本はこれに近いように思います。但し、動きは遅く、「進歩」の優先順位は高くない。

・観念論は「人間には誰にも共通の『理性』が備わっている」と考え、「世界に何らかの根本法則があり、それは理性によって理解可能である」と考える。つまり「人間は優秀なんだ」という前提に立つ。大陸(ドイツ、フランス)と最近のアメリカはこれに近い感じでしょうか。そして「頭のいい切れ者」と呼ばれる人はこう考えることが多いかも。上から目線で「オレは知ってるんだぞ。だからお前たちを啓蒙してやる。俺のいうことを聞いていればいいんだ」みたいな人いますよね。「グレートリセット」なんてのも同類かもしれません。

・但し、そんな「理性」の存在も十分に証明されているとは言えなさそうだし、より重要なことは、経験は変わらないが観念はコロッと変わってしまうということ。成文憲法だけが国体(=国のコアとなる価値観とでもしておきましょう)である国は選挙の結果次第では大きな変革になる。経験の蓄積を無視した変革は暴挙・破壊につながる可能性が高い。最近のアメリカを見てるとよくわかります。

・頭の中で考えた理屈(観念)よりも実際の経験を重視するのが経験論とも言えるでしょう。

■経験主義の考え方ですが、

(1)最も重要なもの:
・経験主義で重要なのは経験の蓄積と継承(=相続)。昔の王・貴族は「経験の継承者」であった。(※その更に昔は呪術によって自然の運行をコントロールし、共同体を救える者だった)その経験とは「歴史、文化、道徳、価値観、宗教、慣習、法」などを含み、それらは決して思い付きではなく、歴史と伝統から時間をかけて何世代もの人々の目を通して形成された経験則です。

・積み重ねるものに値するか否かは、「それが共同体としての日本の繁栄につながるか否か」が重要な判断基準。別稿で書きたいと思いますが、「共同体の損得」と「個人の損得」はたいていコンフリクト(=摩擦)を起こします。例えば、自らの命を投げうって日本(という共同体)を救う行為が尊いと思われるわけです。

・日本が世界からうらやましがられるのは、皇紀2680年、応神天皇から数えても1800年という長い蓄積。日本が亡くならない限り最早誰も追い抜けない。イギリス王室といってもウィリアム征服王から数えたとしても高々1000年(^^;)。そして長く続いているのはそれだけで「善」と考える。それほど多くの人の目を通ってきたから。

(2)使命:
・今我々があるのは、これまでの先代の努力と意思による経験蓄積の結果であるので、先代の努力に感謝と敬意を表する必要がある。そして、これらをより良い形で子孫に引き継いでいくのが使命である。

・国民主権という場合は「現在生きている国民の意志」に限らない。これまでの先代の意志も尊重され、子孫へのつながりを意識する必要がある。それは蓄積・相続された経験・歴史を重視することであり、だから歴史は重要。

・個人が正しい経験を蓄積し、教育によって次世代に継承される。なので教育は重要とされる。更に子孫の繁栄という意味での出産や教育の担い手としての家族も重要視される。そして将来の国の行く末に重要な意味を持つかどうかが重要な判断基準になる。

(3)人と動物の違い
・動物と人間を区別するものは、これらの経験の蓄積・継承の有無。
・革命や革新が危険なのはあらゆるものを一気に変えてしまうという経験集積の破壊であり、そうなれば人間は動物に転落してしまう。

(4)自由
・「法(注:法律とは異なる)」とは常識と慣習から導かれる規範で歴史的事件や紛争解決の経験を積み上げられてきたもの。「法の支配」とは簡単に言えば、「法」に対する規範意識であり、これが重視される、つまり人々が規範意識を持っていることが重要。「自由」はこの「法の支配」が前提になっている。野放図な自由はやがて暴力と破壊につながっていく。(→フランス革命の暴虐とエドマンド・バーグが酷評したのがコレ)

(5)国家の成立過程
・まず一組の男女がいた(→夫婦)。
・そして子供を産んだ(→家族)。
・そして自ら生み出した田畑・家畜を子供に与えた(→相続)
・更に家族単位ではなく集団で生活するほうが生存確率が高いことを学ぶ。(→共同体)
・やがて相続財産を増やした者や呪術で共同体の利益を高めた者が「王」(→共同体リーダー)
⇒つまり国家は「契約」で突然始まったのではなく、ジワジワ成長し「相続」で続いているイメージ。

保守主義というのは、この経験論を政治に適用したものでしょう。ちなみに自然科学を啓蒙思想という人もいますが、出自はともかく、方法論としては経験論的(アリストテレス→ニュートン→アインシュタインみたいな)であるように思われます。ここ数年は狂ってる感がありますが。

やはり経験論が無難かもですね。