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『ターミネーター ニュー・フェイト』を観た。

個人的には、期待値と鑑賞後の感覚が大体一致。単純に「面白かった」と思えた内容だったが、興行収益は想定よりかなり低い状況だそうで…。何がダメだったのか、と言えば、まあ思い当たる節はいくつかある。

まず、冒頭の家族説明→ターミネーター来訪→工場での戦闘→カーチェイス→サラ・コナー登場…の滑らかな連打。もう、ワクワクで涙が出るほどに完璧だった。ジョン亡くなりし後の指導者が女性。その彼女を、強化人間として守りに来るのも女性。その二人を手助けするサラ・コナーもまた女性。分かりやす過ぎるくらいに分かりやすいポリコレ配慮は、T2からの時代の流れ、変化を象徴的に知らしめていたとも思う(グレースがダニーに恋愛感情を…という匂わせもあった気もする)。

シュワルツェネッガーの存在感も健在。DVに苦しんでいる女性に寄り添い、しかし一方、性行為はないと話したり、ここにも多様性の表現が。そもそも、ターミネーターが20数年の時をかけ人間を学び、そして感情が変化した、というのも、ダイバーシティの究極の結実ではある。

チャレンジ度も高く面白いし、Rotten Tomatoesの評価も低くない。
のに、なぜあまり客が入らないのか?

それは、客が客を呼ぼうとする動機、人口に膾炙させたいと思うポイントの少なさに起因するのでは、と思う。

例えば対ご新規さんで言えば、これまでのシリーズ作である「3」「4」をナシとする前提だと、前作「T2」から22年も経っていて、そもそもがどういう映画だかをよく知らない、というのが一つ。そこを補完する強いPRがあったようにも思えない。

対常連で言えば二つあって、まず冒頭でジョン・コナーが死ぬわけだけど、そこをリセットしないと色々と舵を切り直せないという脚本的事情は理解すれど、じゃあこれまで命がけで守ってきた彼の命は何だったのか?というご破算感が重い、ということは少なからずある気がする。僕はまったく気にならなかったが、あれが故に批判している人も多い模様。

二番目は、これ、予告編で内容を観せ過ぎだったんじゃないか、ということ。サラ・コナーの存在、ジョンの存在(は伏せられていたが)、シュワルツェネッガーの存在について、全て箝口令が敷かれた上で、初見でそれぞれの登場を映画館で鑑賞できたとしたら、もう泣くどころじゃなく魂が揺さぶられていたんじゃないかと思う。「いやー、絶対観に行ったほうがいいよ!」と、シリーズを知っている人に確実に強く勧める起爆剤になったと思う。リンダ・ハミルトンとシュワルツェネッガーが出演する、ということ自体はプロモーション的に隠せないにしても、予告で映像としては観せないほうがよかったと思えてならない。

あと、ご新規常連を問わずだが、根本的に新型ターミネーターである、RAV9の魅力が薄い。CG表現としての、「これ見たことない」感、フラッグシップ感をもっと追求して欲しかったと思うし、無言でひたすら追ってくる以外のキャラ付けの工夫も欲しかった。冒頭の、あの善人のような笑顔にはゾクっとしたので、サイコパスみたいな切り口を入れて、暴力マシーンなのに知力で状況を打破するような展開があっても面白かったんじゃないか。

とかとかはありつつ、派手すぎるアクション、カッコ良すぎるサラ・コナーと、そうあって欲しいラスト。ファンムービーとしては十分過ぎるデキでした。

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