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『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』

原作は遠い昔に読んだことがあった。ハサウェイの立ち位置はなんとなく覚えているが、全体的な物語やシャアの反乱以降の世界がどういう建付けだったかはあまり記憶にない。なのでそれほど観るつもりはなかったが、とにかくMSの戦闘シーンがカッコいいと評判なのと、文人さんが観たとポストされた映画は観ると勝手に決めているので、いそいそと映画館へ。

観る前に、「公開後3日間の興収が5億2000万突破」というニュースを目にし、え? という疑問が湧いた。歴代ガンダムシリーズ最高興収を狙えるということだが、一体、誰が観に行っているのか。往年のファンだけでこれほどの興収になるものなのか? プラモがバカ売れしているとも聞くし、その後の作品から入った若いファンも押し寄せているのか…?

そもそものぼんやりとした記憶では、映画版「逆襲のシャア」と、小説版「逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」では、微妙に内容が違っていた覚えがある。大きいのは、クェスを殺したのがチェーンではなくハサウェイであることと、アムロの内縁の妻? であるベルトーチカのお腹にアムロの子供がいて、なんか後半戦闘に干渉したっぽかったという2点。

一説によれば映画版の「ハサウェイ」は小説版「逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」を引き継いでいるとのことなので、映画版「逆襲のシャア」の系譜として鑑賞に来た人にとって、先の2点が醸す違いが混乱の種になるのではないか、とも思った。そんなぼんやりとした不安もあって、誰が観に行く映画なのか今一つピンとこなかったのです。

結論から言えば、そんな差が理解に影響するようなことはなかった。なぜなら、ほとんど前提情報が語られない構成になっていたからだ。相変わらず、重力に魂を縛られている連邦政府の高官は選民思想バリバリで、ハサウェイがそれらを粛清するテロ集団の統領、という敵対構造は分かる。でも、それ以外のことはほぼ説明がない。

加えて、ガンダムの魅力である、独特の台詞回しによる感覚的な会話は健在で、それゆえに、原作を読んでいても(ほぼ覚えていないが)なんのこっちゃ分からないまま物語(というかキャラクターの関係性)は進む。ハサウェイよ、オマエギギが好きなの? またそれで人生狂わすの? そういうの、カツだけにしてくれよ…。

ただ、MSの戦闘シーンは下馬評通りで、現在のテクノロジーを駆使したそれはメチャクチャカッコよかった。MS同士の近接戦闘もさることながら、不謹慎だがイスラエルとハマスのミサイルの打ち合いのようなシーンも得体のしれぬ高揚感があった。ただ、カッコよかったんだけど、とにかく暗い! ゲリラ戦は夜討ち朝駆けと相場は決まっているが、だとしてももっと明るい状況で魅せてよ!と強く思った。

作品が培ってきた長いストーリーの中で、手前を語らず終わりをスパっと断ち切る、という伐採された丸太のような物語を置くこと、そして、戦闘シーンがメチャクチャカッコいいというこの構造は、まさに『鬼滅の刃』のそれじゃないか。誰が観に行っているのかは鑑賞後の今もよく分からないが、観に行った人の満足度が高いことはよく分かる映画だった。

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