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拍手

休みの日に新宿を歩いていると、音楽や大道芸を披露している人たちを目にすることがあります。

先日は一人の男性がちょうど「マジックショー」を始めるところだったので、立ち止まって見てみました。
上を向いて1メートルくらいの長さの風船を口の中にもったいぶりながら押し込んでいきました。
「全部飲むんだろうな」の予想通り、全部を口の中に入れ終わると「はいっ!」と両手を広げました。
「別に不思議でもないし、驚きもしない」と思ったのは私だけではなかったようで、拍手をする人は一人もいませんでした。
すると、その男性、「あ、拍手がないようですが」と。
パラパラと拍手。

寄席などでもときどき「いつもはここで拍手がくるんだけどな」「拍手があると張り切ります」などと、拍手を求める芸人さんがいます。
でも、これってどうなんでしょう。
拍手をしないのは、演者に対して失礼なのでしょうか?

私が言うまでもないことですが、拍手は観る者、聴く者から自然に起こるもので、求められてするものではありませんね。
「素晴らしい」と思って拍手大喝采を浴びせることもあれば、拍手をするのを忘れてしまって、しばらく余韻に浸ってしまうほど素晴らしいこともあります。

以前、こんなことがありました。
ある落語会でのこと。
古今亭志ん朝さんの出囃子が鳴った途端に割れんばかりの拍手が起こったことがあります。
通常は、出囃子が鳴り、噺家さんの姿が見えてから拍手が鳴りますが、このときは三味線の前の太鼓が鳴った途端に。
私もワクワクして夢中で拍手をしていました。
そして、志ん朝さんの姿が見えたときには、すでに気持ちが最高潮に達し、さらにさらに強く手を叩いていました。
それほど皆が志ん朝さんを待っていたのでした。

拍手とはこういうものだと思います。