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【前座さんの所作】

私は定席寄席での前座さんの所作を見るのが好きです。

演目が終わるごとにサササッと舞台に出てきて、座布団を返し、曲がっていないように、また縫い目が客席と反対側になるように整え、前の演者が脱いだ羽織を持ってそでに下がる。

中には座布団の房を四方にまっすぐ伸ばす前座さんもいます。そんな前座さんには「良い真打になってね。急がなくていいから。」と心の中で応援したくなります。

他にも、

次の演者がお茶を飲む方なら、手拭いに包むようにして丁寧に持ってきて座布団の横の演者の手が届くところに静かに置く。手拭いをそっと懐にしまい、静かに下がる。

マイクのコードを舞台の板の目に沿ってたるみのないように整える。

席が見つからないお客さんに空いている席を教えて差しあげる。

片膝を立てて座り、場内が静まるのを待ってめくりをめくる、それを合図に出囃子が鳴る。

開場、開演、終演のときの太鼓を打つのも前座さんの仕事。特に終演時の「ハネ太鼓」は「今日も楽しかったな」という気持ちを一層引き立ててくれます。

いずれも、演者が気持ち良く演じられるよう、観客が気持ち良く寄席を楽しむことができるようにしてくれる、目立たない所作。

目立たないところでの気配り。日常生活でも心掛けたいことの一つです。