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18,000円の海鮮丼

「等価交換」という言葉があります。

な~んて、難しい話をしようとしているわけではありません。

「価」値が「等」しいものを「交換」する。
物々交換の時代からそれが大きな経済原則でした。

かつての日本の「巨人、大鵬、卵焼き」の時代には一つのモノに対する価値が多くの人の中で均一でした。
洗濯機、冷蔵庫、テレビなどの値段はほとんど同じでしたし、価格が他と大幅に異なるものはなかったと思います。

しかし、今はどうでしょう?
同じモノに対する人々の「価値」が人によって様々です。

例えば、Apple Watch。
最新の機種だと34,800円から128,800円の3種類。
時刻を見ることができるのはもちろんですが、それ以外に心拍数や歩数を計れる、高所や水中でも使えるなど、私にはその必要性がよく分からない機能がたくさんついています。
とても128,000円払おうとは思いません。
いわゆる「スマートウォッチ」なら、Amazonで見てみると999円なんてのもあります。
iPhone対応とも書いてあります。
128,000円と999円の違いはなんでしょう?
私には分かりませんが、アップルのスマートウォッチに128,000円の価値を認める人たちが大勢いるわけです。

もっと極端な例。
トレーディングカードというものがあります。
「ポケモンカード」がその一つですね。
そのカードに付いている「戦力」や「機能」などを組み合わせて対戦ゲームをするもの(らしい)です。
自分を強くするために、人が持っているカードと自分が持っているものを交換(トレード)することもあるようです。
そういうカード類の専門店のサイトを見てみると、1枚で100万円近くするものがあります。

そのカードでも遊ぶのでしょうかね?
「レアカード」と呼ばれるもののようですが、そんなに高額で取引されても発売元が儲かるわけではなさそうなので、もっとたくさん印刷すればいいのに。
などと、無粋なことを考えてしまいます。

どんなに珍しいカードでも、ポケモンカードにまったく関心がない私には100円程度の価値…いや、そもそも買わない、です。

と、まあ、この辺は、「人それぞれだなぁ」と思えるのですが…

最近の外国人旅行客の増加に伴い、観光地は訪日客で賑わっているようです。
その中の一つ、築地。
市場はありませんが、新鮮な素材を売りにした飲食店が立ち並んでいます。
その食べ物の値段が高騰しているそうです。
例えば、
海鮮丼が18,000円。
ウニと牛肉の串刺しが1本6,000円。
とか。
海外ではこの値段でもこういうものは食べられないので、外国人にとっては「格安」なのだそうです。

和食については、国内外を問わず、高級にすることで一般の手の届かないところに持って行ってしまうことに疑問を感じていますが、それはともかくとして。

今のところ、このような店舗は一部だけのようですが、これが一般化してしまうと「人それぞれ」では済みません。
最近、首都圏のビジネスホテルは軒並み値上がりしていて、会社が認めている宿泊費の上限を超えてしまうため、インターネットカフェを利用しているという出張者の声も聞きました。
これも訪日客増加の影響だそうです。

「人それぞれ」ということ以前に、モノの価値は需要によって決まるものではあります。
しかし、その「価値」を共有できない人が多数いるとしたら、ましてやその「多数」がそれまでそのモノを日常的に利用していた私たちだとしたら、私たちはもう築地で海鮮丼を食べたり、出張や旅行でホテルに泊まったりすることができなくなってしまうのでしょうか?