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書籍紹介②『トランス人生の生存者』

この本の価値は、実際の脱トランス達の生の声が沢山紹介されているという点にあります。

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これらのストーリーを読むと、性別に悩む人々に対して、不可逆的な外科手術を受けることを急がせるのではなく、心理的・感情的な幸福を得ることに焦点を当てた、より厳しいケア基準が必要であることがわかるでしょう。

生存者の体験談に光を当てることで、性別違和を抱える人々が不必要な手術から遠ざかるかもしれませんし、性別移行を経験し、元に戻りたいと思う人々にとっては、自分だけではないという安心感を得ることができるのでしょう。

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ホルモン治療や身体加工ばかりを急がせ、その後のトラブルに置き去りにされる当事者に助けの手を差し伸べたいという思いでウォルト・ヘイヤーさんが活動されていることがよく分かる内容になっています。


もしかしたら、残念ではありますが、ウォルトさんのような方の活動を必要とする日本人が今後出てくるのかも知れないとも感じます。

第一章は悩める人々からウォルト氏に送られたメール文や事例紹介になっており、32項目紹介されています。


言語障害を持つ小柄なスキニーボーイのビリーの話

幼少期の性的虐待が性別の混乱の根源となっているケースが多いとして、最初にビリーの話を取り上げています。

ビリーは言語障害があり、学校で周りからいつも揶揄われていました。
小柄なビリーは物理的に対抗することができず、また言語障害のため言葉で言い返すこともできず、自分の思いを内に秘めていました。
そんなビリーにとって女兄弟の服を着たりイヤリングをしたり化粧品で遊ぶことが、現実世界から逃避する手段となっていきます。

小学校高学年の時、水泳のコーチから性的虐待を受けるも、これがトラウマとなり周りに相談できずにいました。
そして、その心の傷を忘れるために身体に重度の負荷がかかるスポーツに夢中になりました。

彼の言葉では
心の痛みより体の痛みの方が大きくなるまで
スポーツをしたそうです。

そして性虐待を受けてからは、自身の”男性器”がとても嫌になったと言います。


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痛みやトラウマから逃れるためにトランスジェンダーになったのはビリーが最初の人物ではありません。
実際、ビリーのストーリーは、私自身(
ウォルト氏)のストーリーとさほど変わりません。
そして悲劇的なことに、この物語はトランスを試みた他の多くの人々によって繰り返されており、彼らは後悔しています。
幼少期の性的虐待の話は非常に多い

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ウォルト氏自身の経験談は過去のインタビューを是非ご覧頂きたいのですが、ビリーの様な事例には良くあることとして次の点をあげていることは非常に興味深いです。

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女性として認識し、性器の外科的切除を望む多くの男性と同様に、ビリーもやはり女性に惹かれていた。

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今アメリカでトランスジェンダーのリーダー的存在としてバイデン大統領面会や、大企業の広告も務めるディラン・マルバニー氏がいますが、彼は2022年2月2日自身のTikTokで女性にも興味があると発言した動画があり注目を集めています。



ビリーはセラピストに相談し、下半身の手術も受けBillyからBillie(ビリー女性名)になりますが、「せっかくの努力も、痛みも、出費も、すべて無駄であった」と振り返ります。

そして、教会に救いを求め、7年のトランス人生を経て、脱トランスを決意。二人の娘を持つ女性に出会い2011年に結婚。

「私は問題を抱えていますが、幸せで生産的な人生を送るか、問題に負けるかは私の選択です」と述べています。


著者ウォルト・ハイヤー氏インタビュー


続く

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