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日本人と「日本病」について

 皆さんこんにちは!
 先日アルメニア、そしてジョージアに行き帰国しました。

 今回は、旅先で体調を壊してしまい、思ったようには取材活動ができませんでしたが、旧社会主義国に行き得るものは沢山ありました。

 帰国してすぐ、手にすることとなった本があるのですが、山の様に読まなければならない本の中から、最初に手にしたこの本が帰国したばかりの私に一番必要なものでした。
 
 なんという巡り合わせ。
 偶然にしては不思議すぎます。

山本七平全対話5 日本人と「日本病」について 学研


 私がそもそも今回アルメニアに行ったのは、プロテスタントの方々と世界最古のキリスト教国である同国を周り、キリスト教を学ぶことがその目的の一つでありました。

ホルヴィラップ修道院
アルメニアにキリスト教を布教した聖グレゴリウスが閉じ込められていた地下牢獄がある


 それは、グローバリズムの攻撃するところのものは何かを知るため、
 そしてグローバリズム全体主義から我が国を守ためには、全世界の同じく立ち上がっている方々と連帯する為に必要な学びだと思います。

 現地に住む宣教師の案内でアメリカから参加したプロテスタントの方々と一緒に回りました。

アルメニアでは黒人は珍しいらしく子供達が記念写真の行列を作っていた


 参加者の皆さんはとても親切な人々で、クリスチャンかどうか質問してきた際、日本の伝統宗教で祖先崇拝ですと述べる私に色々と熱心に教えてくれました。

 また、日本のことを聞かれたりもしたのですが、やはり八百万の神というのを説明するのは難しく、戸惑うこともありました。
 色々と内省したりすることが多く濃い経験となったのですが、外を知れば知る程、逆に自分の国のこと、文化、宗教観というのを改めて深掘りしたいと強く思いました。

 帰国後、この本を手にしたのは本当にタイミングが良く、皆さんともシェアしたいと思ったのです。
 山本七平氏と複数の対談相手の話の中で、歴史を振り返って日本人がどのように外国の文化、人々と接してきたのかが分かりやすく述べられています。
 以下に引用したいと思います。
 私の感想はあくまでも一個人でものですが、あまりにもこの本で述べられている日本人像と自分が一致していて、とても面白かったです。
 グローバリズムの流れから我が国を守る為に海外の人々と協力することが非常に重要となっている今、皆さんはどう考えますか?

① 岸田:日本人は自分の行動を規定している規範というか、原理というか、そういうものに対して無自覚である。そして意識していないがゆえに、太平洋戦争をその典型として、他民族と接したときにいろいろな摩擦が起こってくるわけですね。その問題を解決するためには、まず、自分たちを真に動かしているものを意識化すること、知ることであるということを、山本さんはあちこちで述べていらっしゃるわけです。

p10

②山本:仏教が来たといっても、都合のいいところしか取り入れてない。儒教にしても、さかんに唱えるわりに本格的儒教体制をつくる気はない。革命をやって、日本を解体して、ちゃんと科挙の試験をして士大夫(したいふ)を作るという気はないんですね。
 徳川時代の町人学者の行き方は、「断章取義」と言われています。章を断って義を取る、つまり原典の文脈をバラバラにして、自分に必要なものだけを取るんですね。

p12

 この部分を読んだ時に、はっと自分のことだと感じました笑
 聖書の教えを聞くと、なるほどとなるのですが、かといって祖先崇拝の感覚がある自分が、カトリックのマリア信仰を否定するプロテスタントの話を聞くと、子供を産む女性をありがたがってもいいんじゃないかなぁと思ったり、自分が生まれたのは父母がこの世に生んでくれたことが一番実感としても分かるのに、感謝の対象が全て唯一神というのは自分の生まれ育った文化とは違うなあと思ったりしました。
 ありがたいものはありがたいと思いたいのは日本人の心だなあと。

③山本:で、私は冗談に、日本文化は「サザエ」である、というんです。中は背骨なしでグニャグニャしてていいんです。外をきちんと閉じておき、必要に応じて蓋を少しあける。ヨーロッパ人は脊椎動物ですから、日本人には背骨(バックボーン)がない、という。たしかにそうでしょう。そのかわり貝がちゃんとある。(笑)外部を固めて何物も入れず、時折ちょっと口を開けて必要なものだけ取る。これをずっとやってきた。
 だから、自分はこうであるということが、外へ行くと言えなくなるんですよ。貝のように口をつぐむか、「相手の立場に立って」となっても「自分お立場に立って」がない。したがって、対決はしない。
中略
対決ということを誰もが反射的にいやがる。ところが、たとえばエルサレムなんていう所は、「相手の立場に立って」といえる場所がなくなるんですよ、三大宗教のどの立場に立っても、ほかの二つから文句が出るでしょう。

p14

 日本では、「型」というのは非常に重要です。形式、儀式から入っていくというのは小さい頃の習い事から始まり、習慣化していることだと思いますが、それも上記で述べられていることと通ずるものだと思います。

④山本:ユスフザイという人が、イスラム教徒には元来、人と人との間に契約がないということを紹介していますが、まったくその通りなんですね。なぜそんなことになるかというと、アラーがいるわけです。個人個人がアラート対峙してアラーとの間に契約を結んでいる。個人個人がアラーと対峙してアラーとの間に契約を結んでいる。これが学者がいう上下契約で、その契約内容が同じならば、結果において個人と個人との間に共通の規範をもつという関係が生ずる。これはユダヤ教とも同じ形です。ヨーロッパも根本に戻るとこの形なんです。
中略
 彼らの社会では、この神との契約に基づく自己規定のない人間というのは信用されないんです。神との契約がないんじゃ、何をするかわからない、これが彼らの精神構造の基本でしょう。

p17

 この部分を読んだ時に、アルメニア内移動の車中の会話を思い出しました。前提としてクリスチャンでも宗派が違えば色々なことが違うので、一概には言えないのですが、私が行動を共にした方々はプロテスタントでした。
そして、私が「今あなたが説明した○○はカトリックではどうなっているのですか?」という内容のことを質問しました。
当然私の頭の中では、プロテスタントもカトリックもキリスト教という頭で質問をしたのですが、そもそもの前提が崩される回答がきて驚いたのです。

 つまり、彼らからするとカトリックはクリスチャンと呼ばないと。
彼ら曰く、聖書にない儀式などを行っているその人々はそもそもクリスチャンではないということなのです。
 カトリックの方のお話も聞いてみたいところなのですが、これ程までに違うのかというのが私が受けた衝撃的印象です。

 クリスチャンではない人々のことをPagan(読みは"ペーガン")というそうなのですが、この訳語を調べてみるとこうあります。

Etymonline.com 英語語源辞典 より

 Paganは異教徒、多神教徒、無神論者という意味なのですが、ニュアンス的には怪しいやつという意味合いも入っているようです。
 と、こうくると、あの車の中での会話は、ある意味私を意味していた、、笑
 引用にある山本氏の話と合わせると、失笑したくなる気持ちになりました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

⑤ 温和なる国の困惑
 
 山本:潜入してきた宣教師のヨワン・パッティスタ・シローテことシドチを尋問しながら、白石は相手をも相当尊敬してるんですね、「彼もまた士ならずや」と言っている。このシドチが、自分をなぜこんな所に幽閉しておくのかと聞くわけです。自分は日本の法律を破るつもりはないー日本は法治国家のつもりですからねー教えを広めるだけである、教えを広めた結果、日本国の法律に違反する行為をする人間が出てきたら、あなた方は絶対の権力を持っているのだから、その時処罰をすればよかろう、というんですね。
 これに対して白石は、日本には法律がないのだと答えるんです。日本という国は「教えて治に至る」、だんだん教育していって、最終的に一つの秩序をつくっている国なのだから、教えるという根本にさわられるのは困るんだ、と。

p41

 宗派により教義が違うのでこの経験だけで一つの宗教を語ることはできません。今回の経験は、聖書や文献を読むだけではなく、その土地の文化、その人々のバックグラウンドも考慮して、日本人としてどのように異国の文化の人々と接したらいいのか深く考えさせられるものでした。

 今日紹介した書籍
 山本七平全対話5 日本人と「日本病」について 学研
 おすすめです!

 

 リンクは上記ですが、先日私がTwitterで紹介したこともあってか、学研のこの本は売り切れになってしまったようです。

 別の出版社からも出ているようなので、気になった方はそちらをチェックしてみてくださいね!

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