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秘すれば花


7月19日(金)


秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず

「風姿花伝」は能楽を大成した世阿弥の作ですが、その内容は父観阿弥がその子
世阿弥にその都度教え、諭したものを一続きの文章としてまとめたものです。

渡辺淳一の作品「秘すれば花」を読んで、今までその意味を誤解していた事に
気づきました。
「秘すれば花」という言葉はあからさまに何事も表に出さず、控えめにして
おく方が花の美しさは増すという意味に解釈していました。
例えば、薔薇やカトレアの様に華やかな花より、和室の床の間にひっそりと
咲く茶花の清々しさの方を、美しいと見る考え方とも繋がっています。

しかし、この言葉にはもう一つ裏があると作家は検証しています。
観阿弥はそうした表面的な綺麗ごとだけでなく「秘するもの」とは
隠す事によって価値が上がり効果も増してくるものだと言い切っている。

「秘すれば花」の真意が一つの手法であり、言い換えると思いがけない
感動を与えるためのテクニックとして秘しておく事が重要なのだと
言っています。

   秘せればこそ花になる、秘せねば花とはならぬ

当時の能役者は権力者の庇護の下にある限り安泰ではあるが、いつ庇護が
なくなり滅びていくかも知れない不安がつきまとっています。
だからこそ、「秘すれば花」はそこを生き抜く為の最大の戦略でも
ありました。

一つの言葉にこれほどの深い意味があることを教えられました。

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