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「陰の季節」への想い

 横山秀夫の小説は、事件ものは少なくどちらかと言えば警察内部の事件を扱っている事が多い。タイトルの「陰の季節」は、最初テレビドラマで知ったわけで、主役のニ渡(ふたわたり)真治役は上川隆也でした。後で知ったのですが、月曜名作劇場で二回放映された「陰の季節」のニ渡役は仲村トオルが演じていましたし、映画「64」ではその役をサブキャストで出演していました。

 人事担当エースの二渡警視は、定期人事異動の名簿作成作業に頭を悩ましてた。本部長決裁も下り名簿が印刷に回る直前にとんでもない事が起こった。三年前に退官した大物OBである尾坂部道夫の天下り先の任期が切れ、後任も決定しているポストに居座っている事である。筆頭課長の白田から、尾坂部の真意を探れと丸投げされたニ渡は、とにかく彼に会うために夜討ち朝駆けを行ったがけんもほろろの扱いでした。 しかし、同期の前島から尾坂部の末娘の結婚式が6月にあることを聞き、専務理事の肩書きのまま式に臨みたいのでごねているのだと妄想した。

 5年前に尾坂部恵がキヤンプ場で何者かにレイプされ、その時の結婚話は破談に
なったと同期の佐々木から聞き出した。やはりそんな事があったから、娘には幸せな結婚式を挙げて欲しい、父親が無職より専務理事であった方が婚家先に対して少しはいい思いができるのではないかと花嫁の父は考えたのかもしれませんね。

 尾坂部道夫は現役の頃、未決で残したOL殺害事件と娘を襲ったレイプ犯が同一人物だと思っていた。その犯人を取り逃し、四十年余りの刑事生活を終えてしまったが今だに犯人を探していた。

「犯人は現場に戻らない」

 現役の尾坂部道夫が、部下に言っていた台詞が犯人を追い詰める結果になった。
しかし、逮捕はしなかった、ようやく幸せをつかんだ娘を過去の悪夢に戻すわけにはいかない。とことん追い詰めて犯人を死に追いやろう。

 犯人は追い詰められ、もし自分が捕まったら妻や娘の結婚はどうなると考えると
毎晩眠れなかつたが、ついに睡眠薬中毒で死んでしまった。勝手だと思う。5年前に何人もの女性をレイプして殺しておいて、自分の妻や娘の事を心配するのはおかしいと思う、そんな人たちがいるんだったら普通の人なら初めからそんな事はしない。

 もし、尾坂部道夫が現役の警察官だったら犯人に手錠をかけていたかも知れません。私が、「陰の季節」への想いが深いのは実に簡単な事で怒られるかもしれませんが何故か ニ渡(ふたわたり)と言う名前が好きだったからです。

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