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鯨と龍と僕

朝5時半、お迎えの車に乗り込み西へ。
付き合って4ヶ月になるパートナーとゴールデンウィークの旅行だ。

僕とパートナーは仕事のお休みが合わない。
彼女は平日からお休みだと言うので、有給を取って少し早めのゴールデンウィークを楽しむことにした。

休憩もほぼ取らず、向かった先は【ナガシマスパーランド】
ジェットコースターが有名な遊園地らしい。
苦手な僕は目の前に迫ったそびえ立つジェットコースター達に恐怖するが、彼女は早く乗りたいと興奮している。

時間は9時過ぎ、開園まであと15分ぐらいだった気がする。ガラガラの駐車場、入り口付近に停車して開園と同時にチケットを買い目指すは『白鯨』

この日は風が強く『スチールドラゴン2000』は、やっていないようだ。外からやけに高さがあるアトラクションがあるなぁと思ったら、それがスチールドラゴンらしい。この高さは風でやられるよな…
いつでも使える優先的にスチールドラゴンに乗れるチケットを貰う。

彼女はいつもとは全く違う歩きのスピードで白鯨を目指している。アトラクションを全部制覇する勢い。
絶叫マシンは苦手な僕は少し遅れてついて行く。

平日の朝一番はすんなりと乗れる。
荷物をロッカーに入れて乗り込む白鯨。恐怖で何かを掴んでいないと耐えられない。

掛け声と共に動き出し、登っていく。前を見ると高くて怖いし、風景を見ている余裕もない。
頂上まで辿り着いた、あとは落ちるだけだと思いきや少しだけ平行に動く。しかしそのあと落ちていく白鯨。
僕の目は自然と閉じられ、声も出ない。
風圧と線路を走る音が聞こえる。隣で彼女は大爆笑している。

目が開けた方が怖くないと聞いていた僕は、勇気を出して目を開けるが、たびたび目が閉じられる。
ほんの少し慣れたのか叫べるようになる。
怖すぎると固まって動けなくなるのが僕らしい。

早く終われと念じながら、訳の分からない角度と速さで進んでいく。

そして気がついたら終わっていた。大爆笑しながら楽しそうな彼女と、身体がガチガチに固まって立ち上がるのもやっとな僕。

身支度を整えて少し休憩したい僕を見て、このまま行くぞ!と次のアトラクションへ急ぐ彼女。

マジかよ。

立て続けに嵐、アクロバットと絶叫系に乗ってもうギブアップしている僕を横目に、怖くなさそうな物をチョイスしてくれる彼女だが、怖さの基準値が違いすぎて、僕にとっては全てが絶叫系をチョイスされる。

お昼ご飯を挟み、逆バンジーの乗り物から降りた時、悪夢のような放送が。スチールドラゴンが動き出したという放送。

午後、風が止んでしまったからだ。

ダッシュで向かうも既に長蛇の列。
朝もらった優先券が使えるか聞くと、何と使えるとの事。

嫌だ。

長蛇の列に並んで時間を稼ぎたい僕と、一刻も早く乗りたい彼女。
しかし明日は僕の願いを叶えてくれる彼女の願いを今日は聞こうと僕はしょうがなく乗る。

優先券を使った僕らは90分待ちの列を横目にスチールドラゴンに乗り込む。

強張る身体、手から汗が止まらない。

登るスチールドラゴン、景色が綺麗だから横を向けと言う彼女を無視して下を向く僕。
一瞬外を見るとさっき乗った嵐より高い。
とにかく高い。観覧車より高い。

てっぺんまで登ったスチールドラゴンは少しのタメの後、真っ逆さまに落ちていく。

死んだ。と思ったのも束の間また上がる。そして落ちる。ぐるぐると回った後、スピードが落ちて平坦な所がある。
終わった?と思ったが、外から見た時のトンネルを通っていない事に気がつく。
そしてスピードを上げてトンネルに突っ込むスチールドラゴン。

いやだぁー!!!!と叫ぶ僕と大爆笑の彼女。

ようやく止まったスチールドラゴン。身体を硬直させて動けない僕と大爆笑の彼女。

なんとかかんとか、ナガシマスパーランドの4大絶叫マシンに乗った。これで終わったと思った僕を横目に早足で歩き出す彼女。

「どこいくの?」と問う僕に「白鯨!」と元気よく答える彼女。
マジかよ2周目突入かよ。

修学旅行の人達が帰り出して空きはじめるアトラクション達。
待ち時間0で乗れる白鯨。
気持ちを整える為にタバコを一本だけ吸わせてもらうが、彼女の早くしろオーラに負けて、気持ちを整える前に乗り場へ。

2度目なら耐えられるかと思ったが、耐えられる訳もなく、撃沈。
その勢いでスチールドラゴン2回目と言われたが、そこだけは勘弁してもらった。

彼女を乗せて登っていくスチールドラゴン2000


2回目のスチールドラゴンに満足した彼女とお土産屋さんを少し覗いて、何も買わずにナガシマスパーランドを後にした。

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