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暇さえあれば彼はハーモニカを吹く。小学生の頃に買ってもらったらしく、かなり年季が入ったハーモニカだ。 いや、子どもの頃に音楽の授業で吹いたようなハーモニカではなく、穴が十個しかない、手のひらにすっぽり収まるサイズのもので、正式にはブルースハープと呼ぶらしい。銀色で、メーカー名の他に蔦のような模様が刻まれたそれは、惚れ惚れするくらい美しい。音楽史に詳しくないわたしはその楽器を、ただ単に「ハーモニカ」と呼んでいる。 そんな音楽史に詳しくないわたしでも、音は演奏者によって変