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詩集

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詩をまとめています。 恋愛詩多め。
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2023年12月の記事一覧

詩|花

いつか大きなお屋敷に住むのが夢なの。 屋敷の前には花園を作ってね、一年中たくさんの花に囲まれて。その中でお茶を飲んだり本を読んだり。 記念日には花言葉に気持ちをのせて花束を贈るの。 まあ、それらが叶わなくても一番の夢は、花嫁になることなんだけどね。きみの。

詩|宝石

ね、見て。綺麗な宝石でしょう。 ずっと前からこっそり集めていたの。 きみと会えない日はね、涙が溢れるの。 その涙はこぼれ落ちると宝石になって、 手元に残ってキラキラ輝くのよ。 不思議でしょう。 もう瓶いっぱいになったのよ。 だからもっと会いに来て。

詩|日ごと、

あの人に出会った瞬間 わたしの心に 小さなダイヤが生まれた ダイヤは日ごと大きくなり、 光輝き、 嬉しくなって大事にそれを育てた、 のに あの人が他の誰かと話す度 あの人が他の誰かと笑う度 ダイヤが黒く染まっていく 今じゃあもう光はない まるで燃え尽きた炭のようだった

詩|恋文

今から内緒話をするね わたし、あなたが好き 好きで好きで好きで あちこち痛いの ひとを好きになることが こんなに痛みをともなうなんて あなたと出会う前は 知らなかったの 痛いのはきらい でもたとえ痛みで のたうち回ったとしても わたし、あなたがすき

詩|夜の隙間

夜の隙間から 朝焼けが降りてくる前に その唇に 爪先立ちで届くといい

詩|光と闇

光が溶けている。 目が覚めて一番最初に目に入った天井を見て、そう思った。 真白な天井と黄色い陽光がまじり合って、きらきら輝いている。 ごく普通のアパートの一室とは思えない美しさだった。 あまりの光景に時間を忘れ、ずっと天井を見つめていた。 時間すらも溶けてしまっていた。 闇が溶けている。 注文していた遮光カーテンを付け終えた感想がそれだ。 一片の光もない。 部屋中全ての色が闇に溶かされてしまったかのようだ。 そういえば有名な作家が遮光カーテンを「ガンダルフに見える」と称

詩|きみの笑顔

曰く人見知りで 表情の乏しい 無口なきみが 最近は満面の笑みで わたしの話に声を出して笑って そのせいでずれてしまったマスクを 何度も何度も直すから 明日は何の話題で 笑ってもらおうかな、なんて 毎晩ベッドで考えている

詩|まばたき

もしかしたら、知らないうちに まばたきがシャッターで 脳がフィルムで 保存した記憶をいつでも自由に プリントできるようになっているかもしれないから わたしはまばたきのシャッターを切るの きみといるとき まばたきが多いのはそういうことだよ

詩|乖離

頑固なわたしは きみがいない日常に 絶対慣れてやるもんかって ずっと思っていたの けれどもうきみはいなくって どこを探してもいなくって いないことが普通になってしまって いつも通りの日常を過ごしている その乖離は 頑固なわたしにとって耐え難い どうしようもなく耐え難いの……

詩|分銅

不思議、ほんとうに…… きみの選んだ道を、理解して、納得していたはずなのに きみのいない日々が、ちゃんと日常になったはずなのに ごくたまに 例えば深夜に部屋の寒さと静けさを感じたときに 選んだ道の正しさを考えてしまうの なんとも言えない感情が沸き上がるの 心の中の柔らかい部分を とても大きな分銅でゆっくりと押しつぶされているような そんな感覚があるの 不思議ね、ほんとうに……

詩|色彩

また季節が変わるね 一昨日まで鮮やかだった街並みは 昨日の雨と今日の風で すっかり灰汁色になったみたい それでもわたしは好きよ 静かに降る白磁色の雨も ヒュウヒュウ鳴る墨色の風も そこに紛れ込むストーブの緋色のにおいも 低い鉛色の空は分厚い羽毛布団みたい 「きみはいつも不思議なことを言うね」 笑ったあの人の横顔は黄金色に見えた

詩|ヴァイオリン協奏曲ホ短調

何の気なしにつけたラジオから 懐かしいヴァイオリン協奏曲が流れてきて思わず手を止めた 儚く美しいその旋律は かつての恋のBGMでもあった 六年もの間心を注いだその恋は 叶わずに終わってしまった 流行りの曲しか知らなかったわたしが メンデルスゾーンを聴き その作曲家の生い立ちまで調べ 少しでも親しくなろうと頑張ったけれど だめだった あのひとの眼にわたしは映らなかった それでもいい あのひとに心を注いだ六年は 儚く美しい旋律とともに美しく昇華されて わたしの細胞に刻み込ま

詩|寄る辺ないパレード

夜に押しつぶされてしまいそうで 人が作った光を求めて外に出たけれど 私は寄る辺もなく 人混みに流されるままただ歩く 誰と話すでも、 視線を合わせるでもなく、 ただただ歩く 見知らぬ夜のパレードに 参加しているように