金魚

夏の縁日から娘が持ちかえった金魚、さまー、みか。さまーはすぐに死んだ。秋になり、かなしみを新たな所有で埋めようと、買ってきた。りぼん。年が明けてすぐ、りぼんは、しきりに腹を見せて浮かんだ。いちど持ち直し、やがて、動かなく、はかなくなった。ぼくたちは、これが、ささやかではあるが、救いのない連鎖であることを、何となく合点した。水槽には一匹。みかはね、強い、きっと長生きして、鯉みたいに図太く大きくなる、テレビの横の水槽を見るたびに、皆がそう信じ込む気配。今日、日付が変わり、連勤を終えて帰宅すると、みかは力無く、水面に浮かんでいた。妻は無言でうなずいた。みかはそれでも、尻尾をひらひらさせ、まだ生きているのだ。まだ生きている。

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