曇天に青の線描く蜥蜴かな
年表にあの夏の日を加えけり
石段に知恵の湯気たつ大暑かな
アイロンのよこ夕焼が映る瓶
晩鐘に鴉と蝉の返辞かな
豪雨去り静かに夏の月丸く
耳澄まし緑陰の声と語らう
雷鳴のあつき舞台を廻しけり
夏空の時を区切る水平線
梅雨明やカメラのまわる麹町
山鉾の彼方にのぞむ緑かな
雨の木に宵山の灯をさがしけり
川に向ける弓の響きや夏の暮
夏藤を仰げば雲に羅漢かな
笛の音を風に追いけり青葡萄
雨の字の滴りや広がっていく