【俳句鑑賞】嫁ケ島見えて昼寝の枕あり 蕪城

夏は昼寝の季節です

季語は昼寝。午睡とも。酷暑の折は疲労も激しく、昼寝が推奨されたそうです。職人たちの仕事場での昼寝を「三尺寝」と言うそうですが、これは大工など足場や材木の上の三尺に満たない狭い場所で寝るから、または日陰が三尺動く間だけ昼寝が許されたから、とも言われているそうです。

嫁ケ島が見えるところで昼寝という贅沢

嫁ヶ島(よめがしま)は、島根県松江市嫁島町の西約200mに位置する宍道湖唯一の島。約1200万年前に噴出した玄武岩の溶岩からできている無人島だとか。作者がたまたま行ったのでしょう。暑さ厳しい午後の昼さがり、風が気持ちよく吹いている縁側から嫁ケ島が見える。暑さで蜃気楼のように見えたのかもしれません。島だ、、、あ、眠い、、、あ、枕。という具合。なんとも贅沢な午睡だこと。

作者、木村 蕪城

昭和期の俳人 「夏炉」主宰。生年大正2(1913)年6月20日生まれ。平成16(2004)年3月3日没。鳥取県境港市出生。本名木村 茂(キムラ シゲル)。経歴昭和4年より虚子門に学ぶ。17年「夏炉」創刊編集、のち主宰。「ホトトギス」「夏草」「笛」同人。句集に「一位」「寒泉」「山容」「走り穂」などがある。(「コトバンク」より引用) 

境港出身というと、昨年お亡くなりになった、水木しげる先生と一緒ですね。といっても、水木先生とは10歳くらい離れているかもしれませんが。茂さんつながりなところも驚きました。(ちなみに、水木先生のご本名は武良茂さんで一文字ちがいだから余計に!!)

せかせかと生きる現代人には、揚句のような一句がたまにボディーブローのように響きます。目の前の風景を愛でる余裕さえ失っている日には、自分なんなのだろうーーーと思うこともあるかもしれません。昼寝が神様が人間にくれた甘い甘い誘惑とともに、人間性を回復できるお手軽な手段なのかもしれませんね。

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